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31~42

31

 勘違いしないでほしい。

 骨が折れたら、9割の人は心も折れる。




32

 カニを殴ったら骨にヒビが入った。

 何を言っているか分からないかもしれないが、俺にも分からない。

 恐ろしいものの片鱗ってやつを味わったぜ……。


 グーがチョキに負けるなんて、何らかの不正が行われていることが考えられる。

 公式(オフィシャル)ルールだったら俺の勝ちだろ。ノーカン。ノーカン。

 これが地方(ローカル)ルールってやつか……。

 そもそも、最初はグーも守れないって、どういう教育を受けているんだ。


 親の顔が見てみたいぜ。




33

「はっはっはぁ!殴りかかって怪我してりゃあ、世話がないかに!」


 カニ野郎が得意げに笑う。

 殴られただけの分際で偉そうにしていることは気になるが、反論する気はとうに失せていた。

 骨に異常が出ているのだ。カニとおしゃべりする気分にはなれない。

 そういうのは「WM」(ウォーメイカー)とかの領分である。


「はっ!俺をここまで傷つけた奴はお前が初めてだぁ!」

「来いよ!俺をもっと楽しませて見せろ!」

「まだだろ!?お前はもっと来れるだろ!?」


 とか、頭おかしいことを言ってくれるはずだ。

 俺は無理。




34

 個人的にもう帰ってほしい怪人ランキング1位のカニ野郎は、何が楽しいのかハサミをチョキチョキしている。


「今更怖くなったかにか?ほ~ら、逃げないと切っちゃうかによ~」


 何か勘違いしちゃってるカニの発言に、下がりかけたテンションが一気に上がった。

 自慢じゃないが、俺は煽り耐性が低いのである。




35

「おっ?来ても無駄かに!」


 一瞬驚いたカニは、バカにしたように笑う。

 あのくそガニは両手のハサミで車を切断していた。

 なら少なくとも、あのハサミは車よりも固い物質でできているのだろう。

 体の方も似た物質ならば、打撃でダメージを与えるのは難しい。

 だがしかし、俺もバカではない。


 ───関節技だ。

 どんなに固い相手でも、関節技を食らえばいい感じに破壊されるしかない。漫画に描いてた。

 やっぱ漫画には真実が描いてあるぜ!勉強になるなぁ!


 勉強の成果を確認するために、カニには死んでもらう。いい奴だったよ。

 カニ鍋にはしない。

 よく考えたら、俺はカニアレルギーだった。




36

「シッ!」


 こちらの胴を払うように、カニはハサミを振るう。

 その攻撃を敵の動きから予測していた俺は、既に飛び上がっていた。

 曲げた両足を揃え、一気に伸ばす。

 カニの一撃が体の下を通過すると同時、俺の両足がカニの顔面に突き刺さった。

 倒れるカニと、重力によって落ちる俺。

 受け身を取ろうとして、気づいた。


 あっ、そっちヒビ入った方の手……。




37

 そもそもドロップキックは関節技ではない。

 ついカッとなってやった。後悔はしていない。





38

 はっ!俺をここまで傷つけた奴はお前が初めてだぁ!


「いや、お前が勝手に傷ついてるだけかに」


 冷静にツッコまれた。屈辱。

 一通り痛みでわちゃわちゃしたあと、俺たちは再び向かい合う。

 何やらカニは、俺の事を変な眼で見ている。

 変な眼というか、変なものを見るような眼だ。

 ヨウトンジョウノブタヲミルメダー。


 何故だ。




39

 おそらく、傷つくことを厭わず立ち向かってくる勇敢な俺を恐れているのだろう。

 そういうことにしておく。


 攻撃するたびに傷つくって、何か呪われた力っぽくてかっこよくね?

 厨二心をくすぐられる。


「この力は、本当は存在しちゃいけないんだ」

「くっ!呪いに俺の体が耐えられていない」

「それでも、この力で誰かを守れるのならば!」

「右手一本、お前の為にくれてやる!」


 みたいな。

 違うか。




40

「変なガキかに。こんなガキ切っちゃった方が世の中のためかに」


 カニの中で俺が変な人認定されてしまった。

 そんなバカな。

 そんなバハマ。


 蟹と人間をまぜまぜしたような頭のおかしい奴に、変な人認定されてしまうなんて。

 俺のプライド的に、許せない。

 カニに見下されるなんて許してはいけない。

 カニなんて、くそくらえだ。


 ……俺だって本当は、カニを食べてみたい(涙目)

 エビも食べてみたい(号泣)




41

 お前はっ、俺の罠にかかったんだよ……!


「はぁ?突然なにかに?」


 俺の目的は、時間稼ぎだ!

 お前が他の人を襲わないよう、俺に意識を向けさせたんだ。

 そのために、効かないと分かってても、お前に攻撃をした。


「そんな……、まさか……」


 俺はヒーローじゃないから、お前を倒すことはできない。

 それでも、誰かを守れるのならば!


「お前を、誤解していたかに……!」


 右手一本、お前にくれてやる!


「お前は、紛れもなく戦士かに!」




42

 もちろん、嘘だ。

 言ってみるもんだなぁ。

 








 

 

なかなか話が進まない。

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