12~21
12
気が付いたらピアス君が誰かと言い争っている。
女子とだ。
……女子と口喧嘩するなんて、ピアス君はリア充なのだろうか。
いや、そんなことはない(反語)
13
向田さんは、このクラスの委員長だ。
正義感が強く、勝気そうに吊り上がった目とポニーテールが特徴の女の子である。
女子からは慕われているが、男子からは「ちょっと怖い」と思われている。逆にそこがいいという男子もいるが。
前回のバレンタインにはとてもたくさんのチョコレートを貰っていた。下校の時に大きな紙袋を持っていたのを覚えている。
ちなみに、魔法少女ではない。
14
「宿題くらい自分でやりなさいよ!」
「鈴木が見せてくれるって言ってんだから、いいじゃねえか」
「嫌がってるようにしか見えないけど?」
「気のせいじゃねーの?」
なー鈴木?と言いながらピアス君は鈴木君の首に腕を回す。
「お前、また女にかばってもらうのか?」
ピアス君は、とても小さな声で囁いた。
15
「向田さん、何でもないから」
「でも、」
「大丈夫だから」
鈴木君は言うが、大丈夫かどうか聞かれてないのに大丈夫と答える時点で、大丈夫じゃない。
ダイジョーブ博士くらい大丈夫じゃない。
まずい、このままでは野球能力が上昇してしまう!
16
「ほら、鈴木もこう言ってんだし、関係ない奴は引っ込んでろよ」
ピアス君は得意げに話す。一方向田さんは悔しそうに唇を歪めた。
鈴木君はうつむいていて、その表情を窺い知ることはできない。
ピアス君が嫌なくせに、向田さんの方を遠ざけようとするのは何故だろう。
……向田さんの方がピアス君よりも嫌なのか!
さすが向田さんです!
17
「なにやってんの?」
その時、声が世界に響いた。
嘘だ。
無駄に大げさな表現をしてしまった。
その少年は、いたって普通にしゃべりかけた。
そう。
ヒーローは遅れてやってくる。
18
吉田君は茶髪の男だ。
ピアス君とキャラがかぶった。
もっと個性というものを大切にするべきではないだろうか。安易に髪を茶色に染めないでほしい。
背が高く、足は長い。しかし、顔は小さめである。
最近ピアスを開けるかどうかで迷っているとかどうとか。
やめてほしい。
ちなみに、魔法少女ではない。
19
「おもしろい話?俺もまぜてよ」
吉田君が来ると、ピアス君たちはつまらなそうに舌打ちした後に去っていった。
やはり若者には忍耐力が足りない。あるいはコミュニケーション能力が。
俺なんか、さっきからイマイチ要領を得ない返事ばかりの鈴木さん(仮)と、ずっと話を続けているというのに。
つまらない相手と楽しくおしゃべりをする努力をするべき。
20
「え、えっと……」 「う、う~ん」
「……ちょっと、わからないかも」
「……ん~」 「そ、そうかもね」
以上、隣の席の女の子の発言である。
なんだこれ、つまんな。
21
「あれ、行っちゃった」
「……ありがとう、助かったわ」
「ん、何のこと?」
「はいはい、別にとぼけなくてもいいのに」
どこか誇らしげにそう言うと、向田さんは鈴木君に向き直る。
「鈴木君も、嫌なら嫌ってはっきり言わなきゃだめよ?」
「うん……」
その後、向田さんと吉田君は自分の席へと戻っていった。
鈴木君は、その間ずっと、俯いていた。