1~11
どうしてこうなった。
1
朝から天気が良くてむかついた。
当たり前だが、世界は俺の心情を表現してくれたりはしない。
2
学校に向かう途中、ポイ捨てされた空き缶を見つけた。
ヒーローがどれだけいても、悪が消えることはない。
どうでもいいけど。
3
教室に入る前に、手を洗う。
全部飲み切る前にポイ捨てするって、どういうことだ。忍耐力もないのか。
そんなんだから、最近の若者はとか言われたりするんだ。
……最近、そういう言葉をあまり聞かないけど。
つまり、最近の若者は立派なのか?
4
教室に入ると、茶髪にピアスの馬鹿野郎が俺の机に座っていた。
……これだから最近の若者は!
今がタイミングかと思ったが、違ったかもしれない。お前も若者だろって言われたら、反論することができない。なら、多分間違っているのだろう。
無念。
とりあえず、ピアスを千切ろう。
5
机に座らないでくれと話しかけたら、頷いたピアス君が机の上に立ち上がった。
なんでやねん。
数秒見つめ合ったあと、ピアス君はスクワットを始めた。
俺は、その光景をただ見ていることしかできなかった。
6
なんてことは無く、普通に頼めばピアス君はどいてくれた。
世の中の大半は、無駄なことをしなければうまく回る。
髪が茶色いからって、無駄に恐れたり軽蔑したりしなければどうにでもなる。
俺の近くから離れていったピアス君とその仲間たちは、標的を定めてそっちに向かった。
7
鈴木君はメガネをかけた線の細い少年で、気の弱い性格を生業としている。
そのオドオドした感じがピアス君にとっては好ましいらしく、よく絡みに行っている様子が見られる。
一方、鈴木君はピアス君があまり好きではないらしい。
片思いか。
8
ピアス君が鈴木君からノートを奪っていた。
おそらく2限目の英語の課題を写そうとでもしているのだろう。
あの程度の宿題なら自力で解けばいいものを、わざわざ鈴木君のを写そうとする理由はなんだ。
……そんなに鈴木君の私物が欲しかったのか!
どうするんだろう、授業中に匂いを嗅いだりするのだろうか。
やだ、卑猥。
9
鈴木君はノートがそんなに大事なのか、返して欲しそうにしている。
別に宿題くらい写させてやればいいと思うのだが、鈴木君にとってはそうではないのかもしれない。
あるいは、匂いを嗅がれるのが嫌なのだろうか。
……俺でも嫌だな、それは。
オドオドする鈴木君が好きなピアス君は、その様を満足げに眺めると、口を開いた。
「心配しなくても、写し終わったらちゃんと捨てといてやるよ」
何故だ。
10
写し終わったノートを捨てることの理由を考えてみたが、イマイチしっくりくる理由が思い浮かばない。
ノート「解せぬ」
鈴木君「解せぬ」
俺「解せぬ」
ピアス君「解せぬ」
ピアス君も分かんないのかよ……。
ピアス「解せぬ」
ピアス君のピアスも分かんないのか!?
ピアス君のピアスって何だ!?(錯乱)
11
分からないことは素直に聞くタイプの俺は、隣の席の女の子に聞いてみた。
「えっ、さ、さぁ……」
隣の席の女の子にも分からないらしい。
なんて使えないのだろう。
というか、この子の名前は何だ?
鈴木さんかな?(適当)
こんな感じで続くと思います。