表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

流れ星

作者: 雨夜 妙峰

「あ、流れ星だ」


スタジオでの練習を終え、仲間と共に外へ出た直後のことだった。

一筋の光が暗闇を突き進み、そして消えた。そのまましばらく空を眺めるが、二筋目の現れる気配はなかった。


「えぇ......見えなかったぁ。どの辺?」

隣に立つサキが、惜しそうに問う。


「ちょうど真上だよ。本当に一瞬だった」

「すごいなお前、なんで見えたんだよってか、なんで外出た瞬間に空みたんだよ?」

後ろからついてきたカナタが、笑いながら言う。


俺たちは、趣味でジャズバンドを結成し、2年目になる。高校卒業時に軽音楽部だった俺と、カナタ、サキ。そして今もう片方の隣に立つマユミと結成した。

マユミは今もなお、空を仰ぎ続けている。


「いや、なんか夜なのに明るいなと思って」

都会の夜はやはり明るく空を見ても夜空なんて霞んで見えにくい。なら、なおさら何故あの光が見えたのだろう。

まさか、幻覚なんてことはないはずだ。


「ふーん、カナデって案外ロマンチスト?」

サキがからかうように言う。今の発言にロマンティックな要素があっただろうか?


「違うよ。ほらマユミ、行くぞ」

よくわからなかったので、適当に受け流す。会話をひと段落させ、次に行く予定だった居酒屋に足を運ぼうとした時だった。


マユミが呼びかけに応じず、空を見つめ続けている。


「どうした? マユミ、なにかあった?」

俺が問うとマユミは首を横に振る。


「同じ空を、みんなで見れるのが嬉しくて」


マユミはいつもこうだった。普段は基本無口で、口を開けばなんだか意味深なことを言う。高校の時からそうだったが、その発言が案外詩に使えたりしたので、特に何も言わなかったが、十分不思議な奴だ。


「どうしたの?急に」

若干心配気味にサキ。


「ロマンチストは俺じゃなくて、マユミだったな」

「はっはっは! 本当だな。さ行こうぜ。おぉ!? もう9時回ってんじゃねーか! 急ぐぞ」

カナタが豪快に笑い。そして駆けていった。あいつは本当に忙しい奴だ。


「あ、ちょっと待ってよぉ! 道! 道違う!」

サキも本当に賑やかな奴だ。それでいて、いつもメンバーをよく見ていてくれる。


「さ、俺たちも行こうぜ」

「......うん」

コクリと小さく頷いたマユミは、カナタと同じ方向に歩いて行く。

だから道違うって。


「おいおいみんな大丈夫か? これから酒飲むんだぞ? 楽器とか壊すなよ。ほら、マユミこっちだ」


本当に楽しい毎日を過ごしている。第一志望の大学に通い。バイトをして金を貯めて、大好きな音楽を続ける。それも個性的で愉快な仲間たちと。


最高の仲間たちと。

俺ほどの幸せ者はこの世に何人といないだろう。


こんな毎日が永遠に続くといいな。


そんな風に思うと、先程の流れ星は少し悲しい。強い輝きを放った後、すぐに消えてしまう。その輝きは永遠には続かず、とても儚い。

俺の幸せもそんな風になってしまうのだろうか?


「わりぃ間違えた!」

「ほらみんな私についてきて! 全くあんたたちは個性的すぎるのよ!」


あぁ、そんな心配もいらなそうだ。こんなにも楽しい毎日が、瞬間で消えて行くはずがない。消えさせない。

1分1秒無駄にせず、この幸せを楽しんでやろう。


「ほらー! カナデ、マユミ! 早く早く!」

「カナデ......行こ」

「あぁ!」

良ければ感想お願いします。今後の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ