冒険者ギルド
冒険者ギルドに入ると酒と肉のなんともいえない匂いが漂う
ローブで口元を覆い
受付に行く
吐きそうだ
隣を見ると懐かしそうに目を細めている
「冒険者の登録と初心者講習の申し込みを」
「登録と講習の申し込みですね
かしこまりました。まずは当ギルドについて説明させていただきます
誰でも登録できますが、登録料に銀貨1枚いただきます
ランクはS~Fまであり、
それぞれのレベルにあった依頼をこなされることをお勧めしております
推奨レベルは依頼書に依頼内容と共に書かれておりますのでご参考までに
他にご質問がありましたらその都度お声掛けくださいませ
冒険者登録、講習 2名さまの申し込みで銀貨2枚になります
ただいまサービス期間中につき講習はサービスさせていただいております」
「冒険者登録も講習も1名で」
「かしこまりました。そちらの銀髪の方で間違いありませんでしょうか?
こちらの水晶に手をかざしていただけますか?」
セレスが手をかざすと水晶が青く光り出した
「こちらの方は以前も登録されてらっしゃいますね
上書きさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「お願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください
はい、登録が完了いたしました。こちらがギルドカードになります
再発行には銀貨5枚かかりますので、紛失されませんようにお願い申し上げます。
講習は明日から1週間になります。予約表お渡ししますね」
渡されたカードと予約表を受け取る
「ご主人様は?」
「冒険者にならないから必要ないよ」
「おいおい奴隷に働かして自分は高みの見物ってかぁ?
ガキの癖に腐った根性してるじゃねぇか?金があれば偉いってのか?ああん?」
酒臭い息を吐きながら片手に酒瓶を持った男が近寄ってくる
でも、奴隷ってそういうものだよね
……酔っ払いの相手なんて面倒以外のなにものでもない
「セレス行くよ」
「ああっ!無視か、ふざけんなっ!」
タチの悪い酔っ払いだ
男が喚きながら殴りかかってくるのを見ていると
ガッ!
ガシャン!
地面に眼鏡が落ちた
血がポタリと滴る
セレスが私を庇った?なんで?
「!?」
「主人が傷つけば従属魔法が発動します。
貴方の苦しみは私の苦しみです」
(あんたが傷つけば従属魔法が発動するだろうが!)
殴られる痛みより従属魔法の苦しみのほうが辛いと…そういうこと…ね
従属魔法発動してやろうか
「奴隷を盾にするとは本当腐って…!?」
「美しい…」
「…抱かれたい」
「あなたの下僕になりたい…」
「…踏まれたい…」
……周りの様子がおかしい
「お、俺はなんということを!お許しください」
酒臭い男がセレスの足に取り縋る
…え?まさか魅了の効果…?
『奴隷セレスの魅了Levelが2になりました』
頭の中に声が聞こえる
多分、セレスにいも聞こえているんだろうけど
……Level2でこの効果って…?
今この冒険者ギルドにいる人間みんな平伏しそうなんだけど…
「ご主人様、この男いかがいたしましょう?」
(何なんだよこの状況は!?)
「お許しください、あなた様を傷つけるつもりなどなかったのです!
ただ、子どもの分際であなた様ほどの方を従えている小娘が憎かっただけで」
この親父、全然反省してないな
「ご主人様を傷つけるなど許されることではありません(俺のために)」
「はっはい、申し訳ありませんでした」
親父が瞳を潤ませながらセレスを見つめる
…何、この状況?
「ご主人様、この男どうなさいますか?」
(元はと言えばあんたのせいだろ?どうにかしてくれ!)
「お許しください、お許しくださるのなら俺なんでもします!」
「申し訳ありません!こいつは酒癖が悪いだけで悪い奴じゃないんです!
先月には子どもも産まれました!どうか、命だけは!」
「………………許します」
この状況で許す以外の選択肢があるなら教えて欲しい
「ご主人様は広い心で許されましたが、2度とこのような事がないように
…お願いしたいものですね」
「はっはい!これからはギルドの風紀を徹底させます!」
先ほど冒険者登録をした職員が瞳を潤ませて叫ぶ
「ありがとうございます。なんといっていいか!酒は断ちます
あなた様のお名前をは?」
親父は涙を流しながら盛り上がっている
セレスはさりげなく親父から身体を離しながら
「私の名など必要ないでしょう
私が許したのではありませんご主人様が許したのです
それをゆめゆめ忘れぬように」
(名前なんか末恐ろしくて名乗れるか!)
「ご主人様お名前を!」
親父が叫ぶ
あんたの主人じゃない!
「ご主人様の名前はサクラ様です。サクラ様に感謝しましょう」
セレスがにっこり笑って私を売った
顔は笑っているが目は全く笑っていない
ははは…ここを切り抜けたら覚えていろ!
「サクラ様万歳!」
「サクラ様!」
「サクラ様!!」
怖い、素早く落ちた眼鏡を拾うとセレスに掛ける
レンズにヒビが入っているが無いよりはマシだろう
急いで新しい眼鏡を!
「私達は先を急ぎますので……セレス」
「失礼します」
『新たな称号「サクラ教の教祖」を手に入れました』
『奴隷セレスが新たな称号「サクラ教の宣教師」を手に入れました』
教祖って……
頭に響く声に目眩を覚えながら冒険者ギルドを後にした