はじめの一歩
契約完了が終わり
店主は言葉通りサービスと言って銀縁の眼鏡を銀髪毛布に渡した
これ掛けておけば問題なかったんじゃ…と思わないこともなかったが
買ったものは仕様がないと諦めに似た気持ちで店を後にする
もう2度と来ることはないとこの時は思っていたのだが
この店主とも長い付き合いになることを今の私には知る由もなかった
そこそこの宿に入ると2人分の代金を支払う
2人分の代金と聞いて銀髪毛布はどこか諦めたように目を伏せた
部屋に入ってベットに腰掛けると銀髪毛布は何故か目の前に立ち
私の頭に手を添え顔を近づけて来た
…なにやってんだコイツ…と冷めた気持ちで従属魔法を発動させる
苦しみ出した銀髪毛布を冷めた目で見ながら落ち着くまで待つ
「なんっだよ!ッツ!
あんたも俺の身体が目的だったんだろ?」
さっきまではとは違い一人称が「俺」に変わっている
「そう、あんたが必要
でも、それは布団として、それ以上でも以下でもないわ」
「なんだよ布団って!」
奴隷として口の聞き方がなっていないような気がする
もう一回従属魔法を発動させようとすると何かを感じ取ったのか
「…布団とはどういうことですか?」
「そのまんまよ
私、抱きしめられないと眠れないの
あんたの呪いと一緒。自分ではどうしようもない」
「そんな呪い!…聞いたことないですが」
「私もないわよ
でも、実際にあるんだからどうしようもない」
こんなふざけた呪い誰よりも冗談じゃないと思っているのは私よ
「私はあんたに性的なものを求めない
あんたも私に求めないで、ただ夜抱きしめてくれればある程度の自由も保証する
従属魔法もむやみに発動させない約束するわ」
「本当にそれだけでいいんですね」
「ええ、契約成立ね」
「じゃあ、早速よろしく銀髪毛布くん」
陽蘭亭で結構時間を使ったせいか辺りは薄暗くなって来ていた
「俺ですかソレ
俺の名前は……」
奴隷は奴隷に落ちた時に名前を捨てると聞く
だから主人が名前をつけるらしいけど
「奴隷になる前の名前は?」
親が奴隷だった場合、名前のない子もいるというけれど
口の聞き方といい仕草といい生まれた時から奴隷だったとは思えない
「……セレス」
「じゃあ、セレス今日からよろしく」
「は?」
「はい、おやすみなさい」
明日からまた稼がないと