契約完了
です」
「それでは契約はこちらで」
さらに奥の間に通される
本当に大丈夫なのだろうか
魔族と人族の合いの子なんて厄介ごとしか運んできそうにない
やっぱり今からでも別の奴隷にすべきか
そんなことを考えていると銀髪布団と目があった
「貴方は私の光、私の持てる全てでお仕えしましょう」
銀髪布団は私の手を取るとあの魔性の瞳を煌めかせそう言った
…もうネタはあがってるんだよ
「ムダ、私にはもう魅了は効かない」
もともと魅了などの状態異常は効きにくい体質なのに今回は油断した
「ええ、ですが私はこれだけが取り柄ですので」
そう言って自虐的に笑った銀髪布団の顔は今までで一番綺麗だった
…なんで困るんだ?…コイツなら選り取り見取りだろう…?
弥生に売られればすぐに大夫まで上り詰めそうなもんなのに
「ちょ、お客様困ります」
「お客様、主人は商談中でございますれば」
背後が騒がしいと振り返ればガマガエルを人間にしたような人族の男がいた
「キキル殿どういうことかね
1029は私が買うと言っておいただろう!
それを蔭間になんぞ通う阿婆擦れに渡すなどどういうことだ!」
「おやぁ?これはこれはボンズレー様
どうかなさりましたか?」
「どうもこうもない!さっさと1029を渡せ!
金ならある1000白金貨持ってきた!これで文句ないだろう!!」
ドン!と
ガマガエルが白金貨の入った袋を置いた
「申し訳ございません
1029は先ほど売約済みとなりました。
またのご来店お待ちしております
ボンズレー様がお帰りのようだ」
まるで嵐のように唾を撒き散らしながら黒服に取り押さえられて
ガマガエルは帰って行った
「それでは契約に移りましょう!」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「えーっと、実はですね
この1029の魅了の力にあてられた者が
こうして毎日のように陽蘭亭にやってくるので困っていたのですよ
そこに現れた1029の魅了の力にも負けないお客様に
是非とも1029を買っていただきたくてですね……」
「私もご主人様に買っていただきたいです」
(ガマガエルは嫌だ!!)
何か余計なものまで聞こえた気がしたが……
結局白金貨1枚まで値引きさせ契約に同意した
契約を結ぶにあたって従属魔法について説明を受ける
「従属魔法というのは主人のと奴隷の間に結ばれる呪いのようなものといえば
伝わりやすいですかね。奴隷の魂の一部を主人が所有することで従属魔法は成立します
従属魔法魔法があるから奴隷と主人という関係が成り立つと行っても過言ではないでしょうね
従属魔法にも位がありましてね。重いものだと思考なども奪えますよ
軽いものだと思考 行動は自由で主人を害した時のみ呪いが発動するといったものもあります。先程、表でお見せしてしまったのも従属魔法になります
あれでも軽い方なんですがね、商品に傷をつけるのは私の美学に反することですので
そこでお客様はいかがいたしますか?」
「一番重いので」
そう答えると銀髪毛布がギョッとした目でこちらを見たが
私だって慈善事業じゃない、優しい主人が欲しければ別の人間を探せばいいだけだ
ガマガエルとか
「はぁ、構いませんが
そうするとお客様が思考など一から指示してやらねばなりませんよ
思考を支配するということは人間ではなく人形を買うと考えていただいた方がよろしいかと」
それは面倒そう
人形が買いたいのではないのだ
自分のことは自分でしてもらわないと困る
「命令に絶対服従、これ絶対
私に危害を加えないこと
むやみに検索しないこと
魅了の呪いを使わないことが私の条件」
「上の3つは従属魔法でなんとかなりますが
最後の魅了の呪いはあれは1029が無意識に行なっているもの
コントロールする力を身につけない限り私共ではどうしようもございません」
あの呪いと共に暮らせと?
「いえいえ呪いを抑えるアイテムでしたら私共で取り扱っておりますので
今回はサービスさせていただきます」
「それでは従属魔法を結ばせていただきますね」
キキルが懐から小さな杖を出して振ると地面に魔法陣が現れた
「1029は魔法陣中央に立ちなさい
お客様、誠に申し訳ございませんが血を一滴ばかりいただいても?」
頷きナイフで薄く指先を切ると血の雫が
「血を魔法陣に」
魔法陣に血が落ちた瞬間、魔法陣が輝き出し銀髪毛布の体に吸い込まれて行った
「うっあっ」
蹲る銀髪毛布と対照的にやりきった笑顔で店主はこう言った
「はい、これで契約完了です」
こうして私は奴隷を得たのである