陽蘭亭
「いらっしゃいませ、お客様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
陽蘭亭に入るとチャイナ服を着た女が話しかけてきた
「っく」
「お客様?」
息が苦しい
化粧の匂いが気持ち悪い
近寄ってきた店員を避けながら
「…男の店員を…」
それだけ伝えると女の店員は訝しげな顔をした後、奥から別の店員を連れてきた
今度はスキンヘッドのゴツメの男だ
「弥生の大夫 ミツキからの紹介で来た
奴隷を探している。男の奴隷だ」
ミツキから預かった紹介状を渡す
「弥生って蔭間のか?…あんた女だよな
ってーとあんたが噂の破廉恥女か?」
「知るか」
「どんなアバズレかと思っていたがこんなチンチクリンとはな
なあ、あんた男が欲しいなら俺なんてどうだい?
気持ちよくしてやるぜ」
あほらしい
信用できる店ときいたがこんなものかと踵を返して店を出ようとすると
「ぐあああああああ!」
スキンヘッドが突然苦しみ出した
先程案内した女の店員も蹲りもがいている
「申し訳ございませんねぇ、少し目を話すとすぐこれだ
こいつらを奥へ、躾が必要なようだ」
黒髪の涼しげな顔の男が顔を出すと
スキンヘッドも女も這い蹲り口々に「お許しください」と言ったが
男は気にした風もなく
「お客様の前に見苦しいものをおいとかないでおくれ
本当に申し訳ありません。本日はサービスさせていただきますので」
男の指示に黒服の男が2人出て来たかと思うとスキンヘッドと女を抱えて奥へ消えていった
「あれは…?」
「従属魔法でございます。奴隷の分際で主人の客に害をなした
許せるものではありません。ですがあの奴隷共の主人は私
奴隷のしでかしたことは私の不手際です。本当に申し訳ありません
私はこの陽蘭亭の主人 キキルと申します」
「サクラ…それより奴隷を探している。男の奴隷だ」
「かしこまりました。では、こちらへ」
2階へと上がっていく化粧の匂いが鼻に付くが
愛玩奴隷は化粧していることも多いと聞く
こみ上げる吐き気を抑えながらキキルについていく
「本日はのご予算などお決まりでしょうか?」
「白金貨3枚」
この世界ではお金の価値も違う
魔族やエルフなどごとに違うが人族は
鉄銭が日本円で1円
銅銭が10円
銀銭が100円
銀貨が1000円
金貨が1万円
白金貨が10万円となっている
その上もあるが庶民は大抵白金貨ぐらいまでしか持たない
「白金貨3枚となると、この区間の奴隷になります。」
檻というには不思議な空間だった
弥生に似ている和室に似た部屋に5、6人の男がくつろいだ状態で座っている
キキルが部屋に入ると男達は一様に立ち上がり頭を下げる
「顔をお上げ。お客様だ。しっかり見てもらいなさい」
男達は一様に顔を上げた
赤、青、黒、緑、金、銀
様々な髪の男達がいた
その中で銀髪の男の容姿は群を抜いて整っていた
「この奴隷は?」
どうせ毎日顔を見るなら綺麗に越したことはない
が、これだけ容姿が整って白金貨3枚というのは怪しい
「この奴隷でございますか。
この奴隷は愛玩奴隷でありながら、愛玩奴隷としては不十分なのです」
意味がわからん
「この者は去勢されております。故に生殖機能がございません。
愛でる分には申し分ございませんが、女性にはオススメしかねます
性格的には従順で温厚なので女性の方にもオススメできるのですが…」
この顔なら男でも女でも放っておかないだろう
「近くで見ても?」
「はい、1029お客様がお前をご所望だ」
近くで見ると破壊力が凄まじかった
顔は容姿端麗、儚げに美人といったところだ
一見儚げに見えながら筋肉もついており
瞳は臆すことなく私を見ている
青い瞳は見る角度によって色を変えるようでずっとみていたい気分にさせる
ずっと見ていたい気にさせる?
おかしい、私は布団を買いに来ただけだ
なのに何故この男をずっと見ていたいなどと思った?
「店主、騙したな」
これは魅了だ
魅了は魔族の一部が使う呪術のひとつだ
「アッハッハ、申し訳ございません
少しお客様を試させていただいておりました
この者は魔族との合いの子になります
今まで何人ものお客様が魅了にかかって飼いたいと申されましたか…
いやはや、お客様は素晴らしい」
「帰る、世話になった」
「お待ちください。あなた様こそこの奴隷を買うにふさわしいお方です。
白金貨3枚とのお話でしたが2枚で構いません。」
「1枚」
「1枚は少々。白金貨1枚と金貨50枚でいかがでしょう?」
「白金貨1枚と金貨25枚」
「………わかりました。白金貨1枚と金貨25枚で取引成立です」