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アイアンモンキー

ダンジョンに潜ると既にいくつかのパーティーがユーリさん救出の為に動いていた

ダンジョンは1人でなら素材採集の為に何度か潜ったことがある


「ハニーちゃんはお兄さんから離れないでね」


「ミコのそばにはティルトがいるのだ」


「わかった」


私たち『サクラ様と愉快な奴隷達』は『疾風のハヤテ』というパーティーと

行動共にすることになった

アイアンモンキーの群が出た以上、こちらも人数を揃えて対応する必要があるのだ

『疾風のハヤテ』のメンバーは剣士に格闘家、魔法使いが2人

うちは魔法騎士のアイザックと触手使いのティルト薬師の私のパーティーだ

アイザックと剣士がモンスターを薙ぎ払い

格闘家がそれでも近づいてきたモンスターを討ち取り

遠距離を使う敵にはティルトの触手と魔法使いが対応する

私はHPやMPが尽きかける度に手持ちの薬を提供した

地下19階までは何ともなくやってこれた


「ここからは気を引き締めろよ」


『疾風のハヤテ』の剣士が声をかける

地下20階に入ると雰囲気がガラリと変わった

いつもならこの辺のモンスターはそんなに厄介な奴はいない

……でも、今日は背筋がビリビリするような雰囲気に包まれていた


「アンデッドが上がってきてやがる」


アンデッド系のモンスターは地下30階以降にしか出ないはずだった

今日までは……


「誰か聖魔法か使えるやついるか?」


「お兄さん、使えるよ」


アイザックが答える


「なら、トドメはあんたに任せるぜ」


「まあ、任せなさいってね」


アイザックが剣士や格闘家と連携しながらアンデッド系のモンスターを倒してく

私といえば鑑定で分かった弱点を彼らに伝えて言っていた

やっとの思いで地下21階に入ろうとした時だ

先に出発していた救出隊と合流したのは


「よお、サクラ様また会ったな」


軽口を叩いてくるのは冒険ギルドであったオヤジだ


「この階は入り組んででいけねぇや

あと、少しだってのに!」


「この先、3km程先にアイアンモンキーの反応がたくさんあるよ」


私は鑑定で見えたことを伝える

アイアンモンキーを示すエネミー反応の中に1つだけ違う色の反応がある

あれは!!


「まだユーリさんは生きてる!弱々しいけど反応がある」


「ちょっと待って!ハニーちゃん、1人で飛び出すのは危険だよ」


飛び出そうとした私をアイザックが止める


「ハニーちゃんの願いを叶える為に俺たちがいるんだから

もっと頼ってよ、ね?」


パチンとウィンクを飛ばしながらいつもの調子でアイザックが言う


「そのニイちゃんの言う通りだぜサクラ様よぉ

お前さん、鑑定持ちだろう?なら、道案内してくれや

前に出なくていい、口で言ってくれ

お前さんがやられたら元も子もないからな

俺たちでユーリを助けようぜ!」


それからは罠のない最短距離を伝えていく、


「サクラの嬢ちゃん、アイアンモンキーの数は?」


「30以上」


ユーリさんの弱々しいけど光を取り囲むように

わらわらとアイアンモンキーが集まっている


「ッチ、厄介だな

だが、やるしなねぇな

行くぞ!野郎ども!」


「待って!アイアンモンキーは火に弱いみたい

魔法使いは火属性の魔法を中心に使って!」


「了解だ!サクラの嬢ちゃん!」


そう言ってオヤジ達はアイアンモンキーの群に飛び込んで行った

アイアンモンキーの皮膚は鉄のように硬い

でも、その分、魔法の特に火魔法に弱い


魔法使いが遠距離から火魔法を放つ

その中には疾風のハヤテの魔法使いもいた

私は物陰に隠れながらMP切れを起こす前の魔法使いにMP回復薬を渡していく


「ありがとうございますサクラ様」


サクラ様はやめて欲しい……のが正直なところだ


アイザックは剣に炎を纏わせアイアンモンキーを切り裂いていく

オヤジ達も魔法使いの援護を受けながらアイアンモンキーを倒していく

あと、もう少しで倒せる、そう思った時だ

そいつが現れたのは

アイアンモンキーの中からそいつは現れたのは

アイアンモンキーの中でも一際大きく異質な存在感を放っていた


アイアンモンキーキング 魔族 Level35

アイアンモンキーのキング

いつも花嫁を探している


花嫁ってユーリさんのことか……?


「そいつアイアンモンキーキング Level35

火魔法が一切効かない!効く魔法は……ない!?」


「Level35ってマジかよ!?」


救出隊に動揺が走る


「しゃらくせぇ!やるしかねえんだ!

今更怖気付くんじゃねぇぞ!」


オヤジが救出隊を鼓舞する


「やるしかないねぇ」


「ミコ、ティルトも行ってくるのだ!」


「お願い!」


ティルトが触手を召喚し、触手がアイアンモンキーを平らげていく

魔法使い達はオヤジ達の防御力や攻撃力を上げる魔法を使いサポートする

アイザックやオヤジはアイアンモンキーキングを斬りつけては吹き飛ばされている


「っちくしょう!硬えんだよこの野郎!」


「火魔法が効かないってのがまた堪えるね」


一進一退の攻防が続いた後、倒れたのは


「っしゃああ!みたかクソ猿!人間様の力をよ!!」


アイアンモンキーキングの方だった

アイアンモンキーキングの生体反応が消えたことを確認してアイザック達に近づく


「ハニーちゃん、もーお兄さんハッスルしちゃったよ

見ててくれた?」


相変わらずの調子で答えるアイザックの口に回復薬を突っ込む


「ゴハッ!ング!……相変わらずハニーちゃんの薬はマズイね」


良薬口に苦し

オヤジ達にも回復薬を配る

口々にマズイやら死ぬやら言っているが無視だ無視


それから、ユーリさんの反応があった場所まで行った

……そこには白い花嫁衣装を着せられたユーリさんが転がっていた

手足が全て変な方向に曲がっている


「はぁ…………ぁ…………」


微かに息がある

昔、錬金術師から購入したポーションで口元を湿らせてみる


「ん……ぁ…………」


よかった、飲む力は残っているみたいだ


ユーリさんにポーションを飲ませる


「おい、ユーリの状態は……こりゃ、ひでぇな」


私の持っているポーションではHPを回復するだけで

折られた手足を治すことは出来ない、出来るのは応急処置くらいだ


「おい、ユーリを外の医者まで運ぶぞ

よくやったなサクラの嬢ちゃん」


帰りもモンスターを剣士やアイザックが薙ぎ払い

オヤジ達はユーリさんを抱えてダンジョンを脱出した


「ユーリ!!」


ダンジョンの外にはミツキがいた

そばにはキキルがいる

キキルが弥生の店主に働きかけたんだろう


「……キ……ツキ」


ユーリさんがミツキの声に反応する


「ああ、俺はここにいるよユーリ!」


医者はダンジョンの外に待機してくれており

すぐにユーリさんを診てくれた


折られた手足は折られてから時間が経ち過ぎていて完全に元に戻ることはないが

命に別状はないとのことだった

でも、それは冒険者としての生命線は切られたといってもいい……


ユーリさんの見舞いに行った時

アイアンモンキーに受けた心の傷の深さは分からないが

ユーリさんは眠っていた

傍にはミツキが付き添っていた


「ありがとうサクラ」


「いい……ミツキには世話になったし……」


「いや、ユーリに代わって例を言わせてくれ

お前があの時、冒険者ギルドに行ってくれなければ

俺はもう2度とユーリと会えなかったんだ」


………………

………………


「あのさ、俺働くよ

ユーリの治療代も払わないといけないし

ユーリのこれからの生活資金もいる

ユーリが今まで支えてくれた分、今度は俺が支えないと」


「そう……」


「それでさ

キキルさんに言われたんだ

サクラの下で働かないかって」


ん?


「サクラがする蔭間で男大夫達の世話係をしないかって誘われた

俺としては願ってもみない話で……

……でも、こんなの都合が良すぎる気がするんだ

俺なんかが……サクラの奴隷でもないのに……でも……」


キキルのやつ……ダメだと言ったのに……

ミツキには恩がある……でもなぁ……


「……ツキ、ワガママ……ちゃ……よ」


「ユーリさん!」


「ユーリ!」


「……んね……しが……んした……」


涙を流すユーリさん


「ご主人様……」


「ハニーちゃん」


「ミコ……」


「主人殿……」


責めるような視線で見てくるな

これじゃ、私が悪者みたいじゃないか


「ミツキ、うちで働いて

キキル、それでいい?」


「もちろんだよ主人殿!

さあ、そうと決まれば色々準備しないとねぇ」


喜び勇んで出ていくキキル

今回もあいつの掌で転がされた感が否めない


「それでこそミコなのだ!」


ティルトが顔をすり寄せてくる

まあ、いいかと寄り添うミツキとユーリさんを見てその時はそう思ったのだが

その蔭間がまた一波乱の幕開けになることを私はまだ知る由もなかった

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