運命の出会い
その子は驚く俺にこう言った。
「あなたも私と同じで「祝福」されちゃったんでしょ?」
「えっ?」
祝福? チート魔法のこと? それとも高級肉になっちゃったこと?
言われたことを理解できずに混乱する俺に彼女は続ける。
「私はスティーミ。私も最近体が金色になっちゃって群れを追われたの。家族は皆違うのに、私だけ祝福されちゃって。ただでさえ祝福されたオークは高級肉として人間から狙われる上に、一人ぼっちで追放されるなんて、もう絶望だよね」
「えっ、じゃあ、自分が高級肉だからって家族もそうとは限らないの?」
俺の問いに彼女、スティーミは頷く。
「うん。あなたは祝福されたオークについて群れにいる間に教わらなかったみたいね。突然変異みたいにして生まれちゃうから、本当に珍しいの。成長するまでは体の色も変わらないし」
そういうことだったのか。まさか厄介の種だから追い出されたなんて。
「昔は仲間達からも本当に祝福されてたんだけど、人間達が祝福されたオークの肉を好むってことがわかってからは、祝福されることは絶望的なことだとされてるの……」
スティーミは悲しそうだ。それも当然だろう。生き抜くことは非常に困難だといっていい。
「いつ捕まったり殺されちゃうかわからないけど、でも、仲間がいる方が少しでも安心だから、せめてやられちゃうまで一緒にいようよ」
悲しい話だし可哀想だが、確かにそうかもしれない。いや、他人事じゃないんだった。
しかし、そこまで聞くと、あることが気になったのでそれをスティーミに言ってみる。
「あの、スティーミは魔法って使えるの?」
俺の質問に、彼女は怪訝そうな顔をする。
「魔法? 人間が使うやつ? オークには普通使えないでしょ?」
他の世界は知らないが、この世界のオークは魔法が使えない。人間ならば、修行を積んだ一部の者だけが使える。それがこの世界での魔法だ。
そこで俺はいくつか魔法をスティーミに見せることにした。
「ちょっと見ててね」
集中力を高めようと深呼吸する俺を見て、スティーミはきょとんとしている。
まずは『火炎放射』だ。その後に『雪降らし』、『植物操作』、『瞬間移動』といった具合に続ける。
もっと続けようかなとも思ったが、いくらチートといえど魔力の消費はあるので、この辺でやめておいた。
「どうなってるの……?」
ほとんど言葉が出ない様子のスティーミ。それもそうだろう。神様にこの力を与えられた俺は相当イレギュラーな存在なのだ。
俺は全てを正直に話す。俺が元々別世界の人間であること、転生のこと、チート魔法のこと。
流石に驚くスティーミだったが、彼女は信じてくれた。俺が言ったことも、俺自身のことも。俺が元人間で、今の祝福されたオーク達にとっての敵だったことを知っても、前世のことだから関係ないと笑ってくれた。
「信じてくれてありがとう。俺の名はソーテ。これからよろしく」
「うん、よろしくね、ソーテ。ところでこれから行くところなんだけど、ピオーグアイランドって知ってる?」
「ピオーグアイランド?」
当然、知らない。
「そこはね、オーク達の楽園と呼ばれる島で、たくさんのオークが平和に暮らしているの。私達と同じ祝福されたオークもいて、そのオーク達の力で外敵の侵入を阻んでいるのよ。だからそこへ行こうと思うんだけど、どう?」
不思議な話だが、行ってみる価値はある。俺は少し考えると笑って頷いた。
「うん、わかった。一緒に行こう」
こうして俺達は夢の島ピオーグアイランドを目指して旅に出た