高級オークに転生した
オークに転生した。
オークといっても、悪魔のようなものとされたり豚のようなものとされたり色々あるが、俺が転生した異世界では比較的人間に近い動物とされている。まあ確かに豚に似ているといえば似ている。身長は人間の二分の一程で、鋭い爪を持っているのが特徴だ。
死んでしまった人間の俺は、神様の導きによって魔法の存在する異世界に転生することになった。しかもチート魔法付きで。
生まれながらの勝ち組。前世ではあまりうまくいかなかった俺だが、今度こそチートを武器に人生を謳歌する……はずだったのに。
『あ、しくじった。すまんがこのままオークとして生きてくれ』
完全に神様のミス。俺をオークに転生させたことに気付いた神様は、天からそう言い残して逃げてしまった。なんてこった。
俺が転生したオークは、群れの中の一匹。親オークからはソーテと名付けられた。まあ、悪くないかな。
ちなみに、俺が授かったチート魔法の内の一つに『完全翻訳』というものがあるので、この世界の人間やオークを含むあらゆる動物の言葉がわかる。わかるだけでなく、その気になれば喋ることも出来る。オークとはいえチート魔法が使えるのはせめてもの救いだ。
長く伸びた鋭い爪を見ながら途方に暮れつつ群れで成長した俺だが、ある日不幸なことに群れからはぐれてしまう。
しかも更に不幸は重なり、群れを探している最中に、人間と遭遇してしまった。
向こうは俺を害獣だと思って捕まえようとするかもしれない。いや、最悪銃をぶっ放す可能性も……。
ドォン‼
本当に撃ってきやがった。幸い奴らとの距離はかなり離れていたため俺には銃弾は当たらなかったが、当たっていたら死んでいた。
逃げ出す俺を見て、奴らは騒ぎながら追ってくる。
「遂に見つけたぞ!! こいつを狩るチャンスは生まれてはじめてだ‼」
「逃がすか!! ごく稀にしか手に入らない高級肉だ!!」
信じられない言葉を吐きながら引き金を引き続ける人間共。
冗談だろ!? 俺が高級肉?
まあ確かに俺は魔法付きのレアオークだけど、そもそもこの世界の人間はオークを食べるのか? っていうか、これから命を狙われながらこの世界を生き抜くなんて……。
そうだ!! 魔法を使えばいいんだ!!
俺が頭の中で唱える呪文。それは神から授かりし魔法の一つ、『絶対防御』。
正直効かなかった場合が怖いので、魔力で強化した足で逃げながら同時に『絶対防御』を使う。魔法の同時併用も俺のチートたる所以である。
「なんて速さだ!!」
「いくら世界レベルのレア物だからって、あんな速いなんて聞いてないぞ!!」
後方から狼狽える声が聞こえる。へっ、やってやったぜ。
奴らを撒いた後、この俺ソーテは群れを発見して合流する。
無事に帰還できたことに安堵した俺だったが、ここで予想外のことが起こる。群れの仲間達は俺を見て驚き、そしてなんと俺を攻撃し始めたのだ。
俺は仲間達に慌てて訴える。俺は高級オークであり魔法を使えること、俺が高級オークということは仲間達も高級オークの筈なので人間達から狙われるということ、俺が魔法で仲間達を守れるということ。しかし、仲間は聞く耳を持たない。
俺は諦めて群れから離脱する。歩き続けて疲れたところで休憩すると、すぐ傍の川に映る自分の姿に驚愕した。
なんと俺の体が金色に輝いていたのである。ゴールデンオークだ。まさか魔法を使ったから? いやいや、俺は生まれて自我が芽生えてからすぐに魔法を使っていたのでそれはない。
頭を悩ませる俺だが、不意に誰かに呼び止められた。
「ねえ、ちょっといい?」
振り向くと、そこには金色に輝く可愛らしいオークの女の子がいた。