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六芒星の襲撃  作者: 真言☆☆☆
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月は影から


「もし、そこの人、女難の相が現れてますぞよ。」

 移香斎が、鶴姫の家を出て、いつもの修行場である山に

向かっている途中、占い師に声をかけられた。

「見料は要りません。」って言われ、これはますます

面白いと思い、じっくり聞くことにした。

「 今日は、一年に一度あるかないかの厄日になります。」

「 ふむ、ふむ、それで、颯殿。」

「 えつ、旦那には、かないませんな~。」

 占い師は、心底、驚いた。

 移香斎は、この占い師が、この前の鈴鹿衆の颯の

変装であることに、とっくに気が付いていたのであった。

「 怪我の具合は、どうじゃ。」

「 お蔭様で、殆ど回復いたしました。

  拙者のことはともかく、移香斎様。

  自分で言うのも何ですが、拙者、忍びの世界では

 結構有名人でして、その拙者を打ち負かした相手を

 やっつけた相手はどこの誰じゃって、凄い評判に

 なっております。

  そいつを倒して、名を上げようっていう輩の話を、

 聞きました。蛇の道は、蛇ってやつですよ。

  同業者の暗黙の了解で、詳しいことは言えませんが、

 六つの星は昼間でも見えるってことだけ、言っておきます。

  かなり、危険ですから。ご用心下さい。」

 移香斎は、丁寧に礼を言って、山に向かった。


「助けて下さい、お侍様。」

 早速、峠で町娘が、破落戸ごろつき三人に

追われているのに、出くわした。

 町娘は移香斎の右腕にしがみ付いて来た。

 うら若き美しい娘であった。

 男なら誰しも、お友達になりたいと思うし、

守ってあげたいと思える娘であった。

「その娘を、渡しやがれ。」

「怪我をしたくなければ、とっとと失せろ。」

「どてっぱらに、風穴が開くぜ。」

 いかにも、悪党面でお決まりの台詞をはき、

長ドスを片手に三人が、移香斎を取り囲んだ。

 移香斎が、破落戸に集中したその瞬間、

鋭い殺気を感じた。

 弓矢がどこからか、破落戸すれすれに

移香斎めがけて、隼の如く、五本飛んで来た。

 右手には、町娘がしがみついている。

 かわしきれない。


「きゃあ~」

 町娘の悲鳴が上がった。

 弓矢は、五本とも、背中に突き刺さった。

 そう、町娘の背中に。

 そして、何故か、地に落ちた。

 移香斎は、咄嗟に町娘を盾にしたのであった。

「ひえええ~!」

 突然の惨劇に腰を抜かした破落戸どもは、

逃げ出した。

 弓矢を射た五人の気配も、去っていた。

「 てめえ、それでも、侍か!

 頭に刺さったら、どうするんだい。」

 背中をさすりながら、町娘は獅子の如く吠えた。

「 鎖帷子くさりかたびらを着こんでいるくノ一に、

 言われたくないな。」

 移香斎は、涼しげに答えた。

 並みの剣術家なら、ハリネズミになっていたであろう。

 恐ろしいほど見事な陽動作戦であった。

「 くそう~、見破られていたのか。

  この月影姉さんを怒らせて、生き延びた奴はいねえ。

  覚えていやがれ。」

 月影と名乗る忍びは、捨て台詞を残して去って行った。


 残りの五人は、どんな手で来るか。

 移香斎は、ワクワクしながら、山道を急いだ。

 

確かに、太陽は登っているものの、空には月が見えていた。





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