相談
学生相談室には主に三つ守らなければならない事がある。
一つ、相手の言う事を否定しない。
二つ、自分から意見を言わない。
三つ、ここでの事は第三者に話してはいけない(カウンセラーの先生への引き継ぎの場合を除く)。
学生相談員は相手の悩みを聞き、考えさせる手伝いをするのが仕事である。
学生相談員宮里亜美は気持ちを落ち着かせる為に先生から教わった事を心の中で復唱していた。数秒間の間に何度も何度も。
「どうしたの?」
金丸彩は亜美の動揺を楽しむように笑った。
(大丈夫、私はここでは悩みを聞くのが仕事。友達だとか関係なく、自分の仕事をするだけ。)
亜美はメモ用紙を手に取り、ゆっくり彩に相談内容を聞いた。彩は背もたれにゆっくりもたれると、言葉を発した。その一言に亜美は息を飲んだ。
「許せない人がいるんだよね。だから、そいつを消したいから相談に乗ってほしい。」
彩はそう言うと亜美を見つめた。亜美はその言葉を聞いて一気に身体の血がひいていくのがわかった。それは言葉の恐ろしさによるものだけではない。
亜美には心当たりがあった。
それは亜美がこの学生相談室に来たきっかけと繋がるある出来事と関係している。
過去の出来事は新たな事件を呼ぶ。果たして二人の運命は…