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ベン・トーの『大猪』

 ベン・トーと言うモノをご存知であろうか?

 現在、アニメ、小説、漫画で人気の、アサウラさん原作のライトノベルだ。僕はそのうちの小説とアニメを見ている。

 そして、僕はお小遣いの入ってくる月初めの10日間くらいは、温まった財布の中身を本や食べ物に浪費することがよくある。あぁ、ただし僕は太ってないぞ?

 と、そんなことは置いておき、僕は今週もごくごく普通に本を買いに来ていた。そして、本を買ったときに、小銭が余る。そして、いつもその小銭で、パンを買っていく。好物は、カスタードメロンパン。そして、いつものごとくカゴを持たずに68円の安売りパンコーナーへと向かう。

 そこで、俺はベン・トーの作中で出てきた『大猪』を見た。


 小太りな体。あまり高いとは思えない………むしろ、低い目に分類されるほどの身長。丸い顔。68円安売りパンの大量に入ったカゴ(タンク)。パンを高速で奪取していく太い腕。商品棚のど真ん中に陣取り続ける図太い精神。

 どれをとっても、ベン・トー作中に出てきた『大猪』だ。でも、弁当売り場で、半額弁当漁ってるほうが、絵的にはパーフェクトなんだけどな………。

 周りの人も、大猪の存在を知ってか、近づきにくそうにしている。

 っと、こんな気にしてる暇無いな……。僕にはスルースキルがある。少しくらい気まずくても、図々しく行ける。そう思いつつ、大好物のカスタードメロンパンを探す。大猪のカゴの中にすでにいくつも入っていたが、無い訳はないだろうと、そう思って。そして、最後の一つを見つけた。

 それに向かって手を伸ばした、その時――――――、

 目の前に伸びる太い腕。なんだ、僕が取ろうとしているのに……。そう思いながら、その腕をたどっていくと……大猪が、こちらを睨んでいた。『何か文句でもあるの?』とでも言いたげな目だ。その目を見た瞬間、僕は恐怖した。根源的な恐怖。強者を前にした弱者。狩る者と、狩られるモノ。『やられる』そう思った。

 しかし、大猪は何もしない僕に対して、興味が失せたように目をそらした。そして、そのまま僕の目の前で大猪は、好物のカスタードメロンパンを持っていった。さらに、おまけと言わんばかりに、数個のパンをほりこんでいった。それに対して、無力な僕は、歯を食いしばることしかできなかった。

 ベン・トーの大猪を見て、『こんな奴いるわけない』と思っていた僕が馬鹿だった。確かに、ほんの少し前まで、僕の目の前にいた。確かに、そこで、『大猪』たる由縁を見せつけていた。



 その日から、大猪には会えていない。

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