タートルネック考
タートルネックの防寒性に惹かれつつも、首元の過剰な敏感さに悶絶した忘れがたい冬の失敗談を、ユーモアを交えてお届けします。
お洒落や防寒の定番として誰もが重宝する『徳利』ことタートルネックですが、どうしても身体が受け入れられない苦悩と、そこから得た教訓を綴ったエッセイです。思春期の少し甘酸っぱくも痒い思い出を、どうぞ気楽にお楽しみください。
世に言うタートルネックは皆様もご存知でありましょう。そう。ファッション用語のタートルネックです。昔に言ったところの『徳利』に御座います。
筒状の襟で首元を覆うことから、一般的に保温性が高いというのが一番の特徴で、冬には重宝するアイテムにございます。
今回は、そんなタートルネックに思いを馳せてみましょう。では、まずタートルネックに関するわたしの思い出からお話いたしましょうか。
中学生の頃の出来事であります。真冬のとてつもなく寒い時期━━。比較的薄着で過ごすわたしは、友人からの助言として、制服の上着の下にタートルネックのニットを着ると暖かく過ごせるという情報を手に入れたのです。
そして、早速貰ったタートルネックを着てみたのですが……。
しばらくしてわたしはなんと、ひとりの挙動不審者になり下がるのでした。
「なんだなんだどうした?そのタコ踊りみたいな動きは?変態チックだぞ」
という声が飛んで参ります。わたしは誹謗中傷みたいな暴言を吐かれるのでやむなく正直に理由を話すしかなくなったのです。
わたしは色気づいてしまっていたのです。正直に言います。
『首元が感じるから着て……いられない。こ……、これ、無理……かも……』
実際、敏感にニットの繊維の素材感が首筋を刺激して居ても立っても居られないのでした。
クラスの男子たちはもはやドン引きです。こういう敏感な身体の感覚がわからないのでありましょう。
ところが、そのタートルネックをわたしは子供の頃から苦手にしていたのです。ファスナーをあげることで首まで覆うスポーツタイプのスウェットもまた苦手でした。マヂ、あれを着られるのはどうしてだ?と他の生徒をみながら怖気づいてしまっていたのです。
首元のむず痒さに耐えかねたわたしは、放課後を待たずに制服の第一ボタンを全開にし、もらいもののタートルネックをトイレで脱ぎ捨てることで、ようやく平穏な人間としての尊厳を取り戻しました。
クラスメイトからはしばらくの間「タコ踊りの怪人」として生温かい目で見られ続けたものの、寒さへの耐性と引き換えに手に入れた自由な首元は、何物にも代えがたい開放感をもたらしてくれたのです。
世間でお洒落や防寒の定番とされる優れものであっても、己の身体が拒絶するならば無理に受け入れる必要などありません。世の中の流行り廃りに惑わされず、自分にとって心地よい選択をすることこそが、一番の防寒であり自分への優しさなのだと身を以て知った甘酸っぱくも痒い冬の思い出であります
【了】
エッセイをお読みいただき、ありがとうございます。寒さ対策として手を出したタートルネックに敗北し、首元の自由を選んだあの冬の苦い……いや、痒い思い出は、今でも首元が寒い季節になると鮮明に思い出されます。皆様も周囲の流行や定番にとらわれず、ご自身の体が一番快適だと感じるスタイルで、どうか暖かく心地よい冬をお過ごしください。




