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異世界に居ようが僕は生きる  作者: 塗りたくる飲む焼きそばフラペチーノ
6/6

第6話 食事後の運動はキツイって

「それでは皆さん、いただきましょう。」

クラス委員長の掛け声とともに、クラス一同の朝食が始まる。いつもの一日の始まりだ。

さて、今日も起こされたときに殴られ顎が痛いのだが、元気に食事しよう。

そう言い、卓上のパンを取って手慣れた様子でサンドウィッチを作り、齧りつく。

うん、いつものやつだね。うまい。

クラス一同が異世界に召喚されてから二週間ほど過ぎ、一同もここでの日々に慣れてきていた。広間で朝ごはんのサンドウィッチを食べ、午前中に座学でこの世界、この国、そしてこれから戦わなければいけないものについて学び、豪勢な昼食を取り、午後は戦闘訓練や体力づくり。夕食は質素に食べて、風呂に入って就寝する。これら一連の流れをループし、適応していった。生唯もその一人で、初めは死にかけていた筋肉痛も今では慣れてしまった。

さて、今日挟むのは何にしようかな…

そう考えながら卓上に目を巡らし、今日の素材を見つけ、挟んだ。そして一呼吸おいてすぐさま齧り付いた。

うん、不味いわけがない。サンドウィッチの組み合わせはほぼ無限大だからなあ。飽きようもない。

そうして黙々と食べ続けていると、横から優絆が話しかけてきた。

「相変わらずの食べっぷりだね、本当。」

「まあね。食は大事だから。生きがいとも言えるよね。」

「あなた今日も私に殴られたこと懲りてないのかな?もう一発いっとく?」

「スミマセンデシタ…」

萎縮して謝る生唯に、優絆が続けて尋ねた。

「そういえば、今日は何するか知ってる?」

「知ってるには知ってる。」

「知ってるなら教えてよ!文脈判断してって。」

「だが断る。」

「ナニッ!」

「この山田生唯の最も好きなことのひとつは、自分に施されると思ってるやつに『No』と断ってやる事だ…」

そう言ってやると、優絆は近くにあった延し棒を手に取って

「茶番はいいから教えて。これで半殺しにするよ?」

と生唯を脅した。そこですかさず生唯は

「スミマセンデシタ…」

と謝罪した。

「分ればいいんだよ、分ればね。さっさと教えて?」

「ハイ…確カ、愈々実戦訓練デ或ル場所ニ行クラシイデス。」

「へぇ、実戦ねぇ。ちょっとワクワクしてきちゃった。」

コノ人、怖イ。

生唯はそう思いつつも食事を終え、広間を後にした。







一同はリュックを背負って森の中を進んでいた

「よーし、全員ついてきてるな。ここに拠点を置いて暫し休憩するぞ。」

シュヴェートがそう号令をかけた。それに伴い、クラス一同は休憩を始めた。中には溜め息を吐く者や周囲の景色に見惚れ談笑する者もちらほら見られる。その喧騒の中、木陰に佇み休む生唯が居た。

いやー、まじで疲れた。まさか座学スキップで朝ごはんの後に急に出かけるとは思わないじゃん。お陰でお腹の変なところが痛いよ〜。動いてないのに痛いよぉ〜。

心中でそう嘆き悲しんでいるところに、弾んだ足取りで優絆が現れた。

「お、どうしたの?随分お疲れなようで。」

憎らしげな声で話しかけてくる優絆に少しいらっときた生唯は無言で近くのどんぐりを投げつけた。細長いどんぐりはきちんと回転し、安定した軌道で脛に先端が当たった。しかし攻撃はそれで止まらず、秒間三発のレベルで打ち出す。

「痛っ、痛いって。謝るから。」

優絆の発言を聞いた生唯は、

「本当だな?本当なんだな?」

と問いただした。

「ごめんって!」

「いいだろう、許してやる。」

「なんでそんなに疲れてるかだけ聞いていい?」

「座学があると踏んで食べすぎた。」

「馬鹿じゃん。」

優絆の率直な感想に少しムカつきながらも、図星にクリーンヒットしすぎて何も言えない生唯。すると再びシュヴェートからの号令がかかった。

「ほら、バテてないでさっさと立つ!」

そう言って、優絆は生唯を引き摺って集合場所へと向かった。







広場に勇者全員が集まった頃、シュヴェートが大声で話し始めた。

「では、早速実戦訓練の説明をする。まずは俺の後ろの洞穴を見てみろ。」

そう言いながら少し身を翻し、後ろの洞穴が見えるようにした。その洞穴は少し薄暗く、微妙に嫌な感じがする。一同が一通りそちらを眺めたのを見て、シュヴェートが再び話し始めた。

「見てもらった通り、何か薄気味悪い洞穴だが、それはここに人ならざるモノが巣くっているからだ。」

その発言を聞き、クラス一同はざわつき始めた。

「おぉ……やっと魔物の登場か!」

「ゴブリンかな……?」

どうやらクラスメイトの多くはまだ見ぬ化物に少し興奮しているようだが、生唯やその他何名かは少しの懸念があった。

「おい、まだ話の途中だぞ。心して聞くんだ。さっきも言った通り、ここには妖魔が出る。ここのように妖魔が出る場所を伏魔殿プルガトリウムといい、危険度で種類が分けられている。ここは最近見つかった小さな伏魔殿で、名前も特についていない。今日はここに潜って妖魔との実戦をしていく。」

おお、本当にダンジョンなのか。いやー、怪我したくない。どんな妖魔がいるのかわからんが、ちょっと怖いな。

そう少し怖気づく生唯。しかし、クラスの大半は初めての冒険に心を踊らせているようだ。

「おい、そんなに興奮するな。一応訓練とはいえ、怪我をする可能性は大いにある。皆よく俺の話を聞いておくんだ。」

騒がしくなっていた一同を、再びシュヴェートが静止する。

「今回の訓練の内容は、お前達勇者を三人の班に分け、それぞれこの伏魔殿に潜ってもらう。そして中の妖魔を倒しつつ地図を作り、最終的には伏魔殿に隠された物を取ってきてここまで戻ってきてもらう。そんな感じだ。なにか質問はあるか?」

シュヴェートはそう問い掛けた。すると、すかさず委員長が手を挙げた。

「なんだ?言ってみろ。」

「ありがとうございます。では質問です。妖魔ってどんな見た目なんでしょうか。確か授業では魔族の眷属の様な扱いをされていましたが、具体的な姿形は教わっていないので。ぜひ教えていただけるとありがたいです。」

確かに、まだどんなやつか聞いてなかったね。出来れば怖くないけど殺すのが惜しくならないような驚ろ驚ろしい化け物だといいんだけど。

生唯が内心でそう思っていると、シュヴェートが答えた。

「ああ、すまんすまん。忘れていた。ここで確認されているやつは妖魔の中でも特に弱いコボルトと呼ばれるやつだ。姿は二足歩行の獣みたいで、豚と犬を混ぜた醜悪な見た目だ。単体ではお前らと天と地の差だが、集団で襲ってきたり罠を設置したりして油断出来ない。道中は呉々も気を抜かずに、訓練通りに対処すること。」

「ありがとうございます。」

ナルホド。ゴブリンみたいだね。まあ人型なだけ戦闘訓練の成果は出せそう。ただ躊躇するかもしれんなぁ。

「他にはないか?」

シュヴェートは辺りを見渡しながらそう言うが、特に手は上がらなかった。そのことを確認し、

「特にないなら、これで説明を終わる。では早速班分けだ。」

と言い、班分けの書かれた紙を前に張り出した。

さて、誰と一緒になるかしらねぇ。

そうして紙を見に行く生唯であった。







「さてと、それじゃあよろしく!」

そう元気に班員に言うのは、もちろん生唯ではなく優絆である。また、それに答えるように「こちらこそ、よろしく。」

とクラスの委員長、渡辺理慈わたなべさちかが挨拶した。それに続け、生唯も愛想よく

「よろしくお願いします。」

と返答した。

正味優絆と一緒なのはありがたいけど委員長とはほぼ交流がないし、何ならクラスの中でも怖い部類に当たる人だからなあ。怖いねぇ。

内心でのちょっとした恐怖を悟られないよう、話を進めるために地図を持って話し始めた。

「じゃあ、僕がマッピング係をするんで、補助とか任せてくださいね。戦闘に関しては後衛になるんで、優絆と委員長は前衛をお願いします。」

そう他人行儀に振る舞うと、優絆がそっと生唯に近づいて耳打ちしてきた。

『ちょっと、なんでそんな見ず知らずの人に対応するみたいに振舞ってるの?すんごく不自然だけど。』

『だって、仕方ないでしょうに。僕はコミュ障なんだから。特に面と向かって話をするのが苦手なんだよ。』

『でも、いいんちょが不審がっちゃうよ。』

『まあ、僕なんかをそんなに気にしないでしょ。』

二人で耳打ちしあっているとすかさず理慈が、

「あの、そう二人だけで話されても困ります。私に関して何かあったなら面と向かって言ってください。」

『ほら、そう言ってるよ。』

『真面目だぁ、怖い……』

そう目配せで会話しながらも、すぐに目線を直して

「ほら、生唯がちょっとシャイだから文句言ってたの。ごめんね、いいんちょ。さ、いこ!」

とフォローを入れる優絆。

流石やねぇ。やっぱ陽キャだ。

優絆に感心しつつ、荷物を背負う生唯。そして疾っくに準備万端な二人を先頭にいよいよ伏魔殿へと侵入した。







伏魔殿の内部はジメッとした嫌な空気が漂い、壁面には苔や地衣類がそこかしこに生えている。中にはコウモリのような黒い影も見え、内部の雰囲気をより一層薄気味悪くしている。

生唯らの班は優絆を先頭に洞穴の深奥を目指して進んでいた。

「あ、分かれ道だ!」

支給されたランタンを手に、前を進む優絆が声を出した。洞穴内ということも有り、優絆の大きい声が反響して響く。

「ちょっと静かに。敵に気づかれるかもしれません。」

そう小声で優絆に伝える理慈。優絆はというと少しシュンとして、再び前を向いた。

流石、委員長なだけあって真面目だね。さて、分岐か。

そう思いつつ、手元の紙に目を落とす。紙にはこれまで歩いてきた経路が自動で反映されるが、詳しい道の形状や様態は書かれない。生唯の仕事は各場所にメモを残し、道の様態を詳しく記すことである。

「どっちに行く?」

優絆が尋ねた。

「右かな。」

そう答えたのは生唯。

まあ、ク〇ピカ理論で言うと右だよね。

すると、理慈が言った。

「そうですね、私も右がいいと思います。確か人間は無意識的に左を選ぶので、知能ある妖魔もそれを知っているかもしれませんし。」

おっと、委員長もク〇ピカ理論を……

「おお、さすがいいんちょ!じゃあ、右に行こうか。」

そうして、一同は右の道へと進んで行く。数分ほど進むと、弱い光が差し込む曲がり角へとたどり着いた。

「少し静かに、明かりが見えます。もしかしたら妖魔がいるかも知れません。」

理慈はそう呟くように伝え、皆が警戒態勢に入る。そして前衛の優絆がこっそりと曲がり角の先を眺めた。

「前方に二匹、焚き火を囲んでる。その奥に一匹、高台にいるね。武器は特に持ってなさそうだよ。」

「では、前方の二体を私と優絆さんが、奥の一体を生唯さんがお願いします。」

遣り取りを終え、すぐさま臨戦態勢に移った優絆と理慈。生唯はというと、支給された魔導式歩兵銃に弾丸を装填し、胸に抱えて待機していた。

うわ〜、初攻撃が難易度の高い曲がり角なのか。厳しいね。

胸裏ではヘタれつつも、自分が討てなければ危険だということを理解しているので気を引き締めた生唯。

「では、まず生唯さんができるだけ密かに奥の一体を討伐してください。そしたら、私達が一気に突撃して残りを討ちます。こんな感じで行きましょう。」

理慈によって作戦が決まり、早速隠密行動を始める生唯。これまでの修練で火力を使わずにMPを消費して風魔術で撃ち出し的に当てるところまでは漕ぎ着けているが、実戦ということも有り今一照準が合わない。今一度深呼吸をし、優絆らに合図を送る。乃ち、引き金を引いた。風魔術によって射出しているので銃声は少し抑えられているが、それでも尚鋭く風を切る音がなる。弾丸は見張りの妖魔の右目上を穿ち他のそれが狼狽えた。それと同時に右に優絆、左に理慈が駆け出して手持ちの武器を的確に妖魔の頭蓋へと攻撃を繰り出し、それらを殲滅した。

おおー。奇襲とはいえ、何にも臆することなく的確な攻撃、しかも一撃で仕留められるものかねぇ。わりぃ、やっぱつえぇわ。

二人の強さに感心していた生唯だったが、ふと違和感を覚えた。だが、特に気にすることなく二人の元へ近づいて話しかけた。

「お疲れ。問題はない?」

すると、理慈は豊満な胸を撫で下ろし、

「お二人とも、怪我はないようですね。では、耳だけ持っていきましょう。」

と呼びかけ手に採取用ナイフを持って死骸へと視線を向けた。

まじか、あれ採取するの?確かに討伐したら一部をいで来いとは言われたけど…

と考えている生唯とは対照的に、優絆は一寸のためらいもなくナイフを切り進める。

流石、生物選択者だ。

生唯は優絆の胆力に感心しつつも、辛うじて耳を削ぎ落として鞄の中の布袋に入れた。理慈の方を見ると、どうやらうまく削げずに困っているようで優絆が手伝っているのが見えた。

よし、意外と行けたな。これで慣れれば次からも行けるだろう。

ササッとこの空間の地図も書き終えた生唯は、一段落ついたであろう二人に

「そっちも終わったみたいだし、そろそろ行こうか。」

と呼びかけ、再び一同は優絆を先頭に伏魔殿の奥を目指して進んでいった。


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