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二学期の初日。
登校してすぐ、校舎の垂れ幕が目に入った。
「祝!決勝線予測部、インターハイ予選通過」
合わせて、中庭の掲示板には、詳細な経緯が記載された紙が張り出されていた。
放課後、四階への階段を上ったところで、エスプレッソを手にした大前妹に遭遇した。
「先輩、色々ありがとうございます。ちょっと、意外でした」
「別に普通のことよ。私個人の好き嫌いで物事は進められない。前にも言った通り、公平であることが重要なんだから」
生徒会室の前で別れたところで、中野が歩いてくるのが見えた。
「衿奈さんは、会長さんとも懇意にされているのですね。あの女と違って立派です」
仲直りしたはずなのに、意地を張って悪口を言う姿が、逆に愛くるしい。
「あら、何かおかしいですか?」
「あー……。いえ、この部に入ってから、個性的な人たちばかりと知り合いになってるなって」
部屋の前で立ち止まり、中を指さすと、彼女は口元を押さえて笑った。
「高校生は、子供から大人に変わる過渡期ですからね。人間性が形成される、良くも悪くも玉石混交の状態なんでしょう」
彼女もその中の一人のはずだが、衿奈とは経験した修羅場の数が違うからか、その言葉には説得力があった。
「玉石混交ですか。それって、新馬戦みたいですね」
「ああ、それは言い得て妙ですね。確かに、競争ばかりの人生は、競馬と似ているのかもしれません。であれば、老婆心ながら、月夜さんとの関係は、できるだけ大事にしたほうがいいでしょうね。何と言っても、将来、G1に出走することが確約されている人材なのですから」
そう言って彼女が笑ったとき、廊下の先に本人が姿を見せ、小走りに駆け寄ってきた。
将来のG1馬、か。
そんなよこしまな気持ちで相対したことは、一度もないと断言できる。
そして、きっとこれは意思の力でもある。
親友との関係に、打算を持ち込まない。
「どしたん?えらい真面目な顔してるけど」
「大丈夫。月夜の声だけは、いつも、ちゃんと聞こえてるから」
彼女は少しだけ不思議そうにしたあと、「決勝も頼むからな」と、いつもの笑顔を見せた。
ご高覧、ありがとうございました!
予選が終わったので、ここで一度区切りとさせていただきたく。
続編はまだ手をつけたばかりで、お見せできるようになるまで、今しばらくのお時間をいただければと思います。
――このお話がすごく人気になったら、異例の速さで完結できるかもしれません(笑)
なお、別サイトですが、ほかにも女子高生の青春物語を掲載しておりますので、一読いただければ幸いです。
https://novema.jp/book/n1757656




