表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/53

9-3

 帰りの新幹線で、一度は機嫌を直したはずの月夜の様子がどこかおかしかった。

 三人席の中央に座った彼女は、衿奈を無視して、窓際の中野とばかり話すのだ。

「何?何か怒ってるよね?」

 肩を掴み、強引に顔を向かせる。

「別に。そっちこそ仕返ししてるつもり?」

「え?仕返し?何言ってるのか、本気でわからないんだけど」

「嫉妬返しやろ。うち以外の女子と仲ええとこ見せつけて。昨日、上泉さんに声かけられたんもそうやけど――衿奈は愛想が悪いのが長所やのに、いつあんなに友達作ったんや」

 そんな長所、聞いたことない。

「人脈が大事だっていう指針と、真逆の反応なんじゃない?」

 あの程度の立ち話で、月夜の独占欲が発動することを知れたのは、今後の関係性において重要な発見かもしれないなどと、彼女の取説を更新していたときだった。

 通路をはさんで向こうにいた、北原が突然立ち上がった。携帯の画面を見ながら、珍しく興奮しているようで、目が潤んでいるようにすら見える。

「どうした、お嬢?」

 隣の細谷の声は届いていないようで、周囲の乗客の注目を集めながら、彼女は転げるように衿奈のそばに膝をついた。

「た、大変なことになった」

 それが、冗談などでないのは明らかだ。ただ、内容には、まるで思い当たることがない。

 誰かの家族が事故にあった、だろうか、という不安はあっという間に却下された。

「驚かないでほしんだけど――。うちの部の決勝進出が決まったんだ」

「ええっ」

 どうやら、札幌会場で2位になった学校の、携帯の不正利用が発覚したらしい。

 全体の七位だった倉女が、繰り上げで決勝にいけることになったのだという。

 隣に振り返るのと同時に、月夜が抱きついてきた。

「やったっ。もう一回、戦える。衿奈、最後当ててくれてホンマにありがとうなっ」

 結果論にはなるが――最後のレース、三連単を選んでいれば、この結果にはならなかった。

 親友が流す涙に感動するより、決勝進出を喜ぶより先に、頭に浮かんだのは、いつもと同じにすべきと指南した、占星術への畏怖の念だった。

 決勝で再会したとき、渋川に今後の高校生活を占ってもらうことにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ