表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/53

9-2

 式が終わる頃には、月夜は元気を取り戻し、周囲の男子を掴まえては、頼まれてもいないのに、生徒手帳にサインしていた。

 やがて会場の扉がすべて開け放たれる。部屋の気圧が下がった頃、衿奈の元に、敷島がやってきた。

「サッカー、行くと?」

「いやー……今日はやめとくよ。また、来年、ね」

「それはちょっと残念、ばい」

 去って行く姿が少しだけ寂しげに見えた。その背中に鋭い視線を送りながら、篠塚が近づいてきた。

「渡瀬ちゃん、もしかしてお姫様と話してた?いつ、知り合ったの?」

「二日目の最終レースのとき、少し話しただけです。予選突破、おめでとうございました」

「ありがとね。そっちは惜しかったね。決勝は東京だけど、そのときどっかで会わない?連絡先、交換しよ」

 彼女が姿を消すと、今度はMVPの盾を手にした渋川が貴婦人のように姿を見せた。

「優勝と個人賞、おめでとう」

「ごめんね。女としてだけじゃなくて、競馬でも勝っちゃって。でも、あなたも少しは可愛いから、気を落とすことないわよ」

 その言葉を嫌味として感じなかったのは、心の成長というよりは、挫折を共有できる仲間がいることへの安心感からだと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ