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9-1

 二日間の予定の最後は閉会式で、会場は、いつものバンケットルームだ。

 上位二校が秋の決勝に進むことが告げられ、続けて、三会場のすべての順位が発表された。倉女は、三番手の中ではもっとも得点が高く、総合で七位という結果だった。

 最後に、個人賞として、最多の点数を獲得した人間に、記念品が授与されることになる。

「間違いなく、新千歳の天才だろ。確か四つとも三連単で当ててだぞ」

 だが、名前を呼ばれたのは、別の人間だった。

「参加した四度すべてで、三連複を的中し、合計54,490点を獲得した、習志野工業高校の渋川さん、どうぞこちらへ」

 彼女はアカデミー賞で主演女優賞を取ったかのように壇上へと上がる。司会から予想方法を聞かれ、自信満々に占星術ですと答え、会場を騒然とさせた。

 そんな強運の持ち主の提言に従っても、予選突破の壁は厚かった。

 表彰される姿を悔しく思うまではなかったが、ただ、決勝に進み、篠塚や敷島たちと再会できる立場は、素直にうらやましい。

「あんな子に負けたんかー」

 隣で、髪を掴んで悔しがる月夜を見て、ふと、ある不安が胸に宿った。

「ね、ちょっといいかな」

 彼女の手を取り、人のいない後方へと移動した。

「どしたん?そんな真剣な顔して」

「月夜は、将来、お父さんのオーナー業を継ぎたいんだよね」

「そうやけど、それが何?」

 衿奈が倉女へ入学したことも、この場にいることも、彼女の強い求心力の結果だ。それなのに、本人は目標を達成できず、つまりは、恩返しができなかったことになる。

 そんな小さな心の負担が、口を勝手に動かしていた。

「思ったんだけど――馬と喋れるより、血統の知識とか、誕生日占いのほうが、馬産、だっけ、それの役に立つんじゃないのかなって」

 それが、別の意味に受け取られたと知ったのは、その直後の相手の反応を見たあとだ。

 月夜は衿奈のブレザーの内側に手を入れ、強く抱き寄せたかと思うと、耳元に口を寄せた。

 二人の体がぴたりと密着する。

「それって、間違いなく嫉妬やんな」

「え。いや、そういうんじゃなくて――」

「ええって。今のひと言で、この二日の負けが全部吹き飛んだわ」

 そう言って、頬ずりされた。

 参ったな。

 そう言われては、否定できないじゃないか。

 彼女は二人の体温が同じになるまで、その状態を維持していたが、やがてゆっくりと体を離す。

「確かに、血統とかの知識は有益やけど。好きな人と一緒にいられるほうが、もっと大事やろ」

 面と向かってそう言われ、過去に経験がないほど顔が熱くなった。

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