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7-3

 午後は、本馬場やパドック、馬房にスタジアムなどの見学ツアーが行われた。

 新潟は日本で一番長い直線コースがあるらしい。スタートからゴールまで、途方もない距離を歩かされ、うんざりする中、男子たちは全力疾走をし、あるいはゴール板のところで写真撮影をしたりしていた。

 月夜は、あのあとも、ずっと誰かしら、見知らぬ生徒と話していたが、気のせいでなければ、午前中より笑顔が減った気がする。

 北原の言葉を伝える機会をうかがっていたが、それは叶わず、ツアーの最後に、馬主席なるエリアに入ったときだった。

 何度か来た場所だと、月夜は、おそらくは、わざと明るく振る舞ったのだと思うが、どこかで、「親の七光りだろ。自分は何もしてないじゃないか」と、冷ややかに批判する声が聞こえた。

 その言葉が、本人に届いてしまったのかどうか。

 確認をためらっているうちに、夕食の時間になる。

 昼と同じ会場で、だが、今度は部員が全員ばらばらにされ、他校の生徒ばかりの席に座らされた。

 衿奈のテーブルは全員男子だ。自ら声をかける勇気など当然なく、それは相手も同じだったようで、ひと言の会話もないまま、時間はゆっくりと過ぎる。

 細谷の声だけが遠くに聞こえる中、昼間以上にマナーに気を使っていたせいで、月夜を気にかける余裕などなかった。

 食事が終わっても、すぐに席を立つことが許されない。

「この機会にぜひ交流を深めて下さい」

 無茶を言うなと、漫才師なら、きっと即座に立ち上がった場面だ。

 天気の話題だけでさらに三十分近く、苦行のすえに、ようやく解放され、部屋に戻ったのは夜の八時を回っていた。

 ベッドに倒れ込んで間もなく、部屋の出入りが禁止になるというメッセージが流れ、ドアのロックが閉まる音がして、土曜日の枠順がモニターに映し出された。

 もっとも、見ても何もわからない。

 バスタブに湯を張り、長めの入浴のあと、再びモニターを見ると、担当者の欄に名前が追加されていた。

 衿奈は一つ目と三つ目のレース。完全に想定の範囲内だ。

 準備することは何もなく、こんな早い時間から眠れるかな、などと思いながらベッドに横になったが、緊張で前夜が睡眠不足だったせいだろう、そのまま眠ってしまった。

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