天のまゆ
天のまゆ
おじいさんが。
煙管を吸い。
ふー、
と。
長く。
煙を吐き出した。
ああいう形の、
雲が、
何本も、
並んでいる。
ひとつ。
俵型した雲が、
ぽつんと、
あるけれど。
真ん中が、
透けずに、
灰色を、
している。
ああいう雲は。
天の繭。
と。
おばあさんに、
教えてもらった。
ゆで卵みたいに。
中身が、
入っているんだよ。
だから、
透けない。
中にはね。
雨を降らせる、
竜の子供が。
入っているんだよ。
そのうち。
元気に。
頭と尻尾を、
突き出して。
繭は、
脱ぎ捨てずに。
腹巻きみたいに、
つけたまま。
初めは、
もたもたと。
上手く飛べずに。
行くんだけど。
竜の住まいは、
やっぱり、
天だからね。
大丈夫。
ぜったいに、
落ちたり、
しないんだよ。