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流れ星  作者: 遠藤 敦子
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 ある日、いつものように教室に入ると、クラスメイトたちが蜘蛛の子を散らすように僕を避けていく。僕の顔を見るなり、ヒソヒソと何か話している者もいた。

「ストーカーするような奴に教員になる資格はない」

「性犯罪者」

「女の敵」

「まじで最低」

といった心無い言葉を投げかけられた。そんなとき、同じ文芸部の藤沢結奈(ふじさわゆうな)が言いにくそうに

「ねえ聖那(せな)、しま子ちゃんにストーカーしてるって本当? しま子ちゃんがそう言ってたんだけど。聖那にレイプされそうになったって」

と僕に言ってきたのだ。「ストーカー? え、どういうこと? レイプとか俺はそんなことしてない、絶対に」と確認してみるも、結奈は「私もしま子ちゃんから聞いた程度だから詳しいことはわからないや、ごめん」とはぐらかす。

 噂に惑わされたのか、今まで仲良くしてくれていた友人も僕を避けるようになった。LINEで「ストーカー性犯罪者」「女の敵は消えろ」「レイプ魔」などと誹謗中傷のメッセージが送られてくる。僕がしま子ちゃんをストーカーしているという噂は学年中に瞬く間に広まり、学校にはもはや僕の居場所はなくなった。

 ストレスでご飯が食べられなくなり、学校も休みがちになる。しま子ちゃんや他の部員と顔を合わせたくなくて、息抜きだった文芸部も逃げるように辞めてしまった。死にたいと思うようになり、Twitterで自殺願望を持つ人を探したこともある。修学旅行にも行けなかった。幸せだった僕の日常は、あっという間にめちゃくちゃになってしまったのだ。


 僕はもうしま子ちゃんが何を考えているのかわからなかった。LINEで「もし俺が無意識のうちにストーカーと思わせるようなことをしていたらごめん。もうしま子ちゃんには関わらないようにするから」と送ると、しま子ちゃんから会って話がしたいと返事が来る。僕は何かされそうな気がして身の危険を感じた。バックに男が複数人いて「しま子にストーカーしたんだってなぁ?」と暴行されること、示談金や慰謝料と称して恐喝されること、しま子ちゃんにストーカーしたことをネタにゆすられることなど、思いつく限りでは僕の命や金銭の危機しか想像ができない。

 しま子ちゃんから一方的に待ち合わせの日時と場所を指定されたけれど、僕は学校を休んでいたこともあり、その場所には行かなかった。すると、しま子ちゃんから「先輩ひどい。ずっと待ってるって言ってたじゃないですか」「なんで来てくれなかったんですか」とLINEが来る。僕はそれには返信しなかった。

 翌日、僕は重い身体を引きずって学校に行く。周りからは「うわ、ストーカー野郎だ」「女に振られてストーカーするとか女々しい奴だ」と聞こえよがしに言われた。ペンやノートなどの私物がなくなっている。体操服も盗まれていた。

 耐えきれなくなり、僕は放課後にしま子ちゃんのことといじめのことを担任の井手(いで)先生に相談する。しま子ちゃんから来た執拗なLINEも見せた。僕がスマホを使って井手先生にしま子ちゃんからのLINEを見せたとき、ちょうど「高校卒業しても他の女と恋愛させませんからね?」とLINEが来る。それも井手先生に見てもらった。


 「なるほど、男女トラブルからのいじめとストーカーか……。今まで辛かったな。このままだと坂巻の体調とか精神状態も心配だし、俺からも巣山と他の部員とクラスの何人かに話は聞いてみるよ。もちろん文芸部の木下(きのした)先生、2年の先生たちとも連携とって対応するから」

井手先生がそう言ってくれて心強かった。僕は僕で警察の生活安全課に相談する予定であることも伝えておく。

 周りのクラスメイトの態度が変わっても、同じ文芸部で隣のクラスの羽住真希(はすみまき)だけは違った。学校ではしま子ちゃんや僕のクラスメイトの目もあって、みんなの前で話しかけてくることはない。が、学校で2人きりになったタイミングやLINEで「坂巻くんがストーカーもレイプもしてないのは私は知ってるよ」「私は坂巻くんの味方」と励ましてくれる。学校を休みがちだった僕がたまに学校に来ることができていたのは、真希のおかげでもあった。


 井手先生が迅速に対応してくださったこともあり、しま子ちゃんから以前ほどの執拗なLINEや電話は来なくなった。クラスメイトの態度は相変わらず変わっていないものの、しま子ちゃんが大人しくなったこともあってか、僕はときどき学校に通うことができるようになってきている。が、このとき僕は油断していたのだった。

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