表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨上がりの空へ  作者: トランクス
1st STORY
84/129

21 笑顔と似顔絵ー1

「う~む…」


 平日の朝、自宅の椅子に座って唸る。端が焦げた食パンを頬張りながら。


「今年の夏は暑くなるのか…」


 ニュース番組を見て独り言を連発。テレビ画面には日本地図をバックに解説している気象予報士が映っていた。


「祐人! アンタ、のんびりしてないでさっさと食べなさい。また遅刻するわよ?」


「うへ~い」


「貴様も動画見てないで早く食わんか!」


「ぐわっ!?」


 すぐ隣にいた母親が怒鳴り散らしてくる。眉間にシワを寄せて。


 更には端末を弄っていた父親の頭をスリッパで殴打。激しい音がリビング中に響き渡った。


「……っつぅ~。叩く事ないのに」


「自業自得」


「データが消えたらどうするんだ」


「ところで何の動画見てたの?」


「ん? 看護師さんのエロいヤツ」


「もう1回入院して来た方が良いんじゃね?」


 ここ数日は3人で食事をとる機会が多い。ずっと不在だった一家の大黒柱が退院したので。


「ふぅ…」


 朝食を食べ終えた後は自室に戻って貴重品の有無をチェック。鞄を携えて玄関に移動した。


「行ってきま~す」


「授業、サボるんじゃないわよ」


「ケンカは?」


「ダメに決まってんだろうが」


 テレビを見ている母親に挨拶して飛び出す。強力な太陽光線が降り注いでいる外へと。


「ひょ~、眩しい」


 頭上を見上げると空が青々しい。運動でもしたくなるかのような晴れ晴れとした景色が視界いっぱいに広がっていた。


「ダイエットかな…」


 そのまま地上を見下ろすとジョギングしている人物を発見する。頭頂部がやや薄くなった中年男性を。


「……っと、こんな事してる場合じゃなかった」


 観察したいが時間にあまり余裕がない。転ばないように気を付けて階段を駆け下りた。



「お~い」


「あ…」


 手を振りながら声をかける。交差点に佇んでいた女子生徒に向かって。


「ま、待たせたな……悪い」


「いえ、私もさっき来たばかりですから」


「そうか。実は俺も今来たばかりなんだ」


「えぇ…」


 立ち止まり膝に手を突いて深呼吸。軽く走ったつもりだったが想像以上に体力を消耗してしまった。


「大丈夫ですか?」


「平気。ただちょっと途中でオッサンと競争になっちゃってよ」


「競争?」


「あぁ、疲れたぁ…」


 愛莉が下から顔を覗き込んでくる。不思議そうな表情で。


 団地を出た瞬間にマラソンをしていた中年男性とばったり遭遇。互いに目が合いライバル意識に着火。そして何故かそのままかけっこ対決が始まってしまった。


「なんていうか……大変でしたね」


「俺が勝手に走り出しただけなんだけどね。そしたらオッサンが突然後ろから追い抜いて来てさ」


「それで競争に?」


「うん。で、信号が点滅する横断歩道を全力疾走したら背後から『もうダメだぁ!』って聞こえてきてよ」


「は、はぁ…」


「振り向いたらオッサンが地面に膝を突いて泣き崩れてた」


 今から考えたら悪い事をしてしまった気がする。相手はうちの父親よりも一回りぐらい年上の男性。ジョギングにかけるプライドを深く傷付けてしまったかもしれない。


「んじゃ、ボチボチ行くか」


「はい!」


 乱れた息を整えた後は並んで歩き始めた。人や車の往来が激しい住宅街を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング 面白いと思ったら投票してくれると嬉しいです( ノД`)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ