17 修正と習性ー3
「あぁーーっ、祐人!」
「げっ…」
駅付近の広場にやって来ると顔見知りの女と遭遇する。髪を両サイドで縛った従妹に。
「……待ち合わせ相手ってお前だったのかよ」
「どうして祐人が奈津紀ちゃんと一緒にいるのさ!」
「そ、それは…」
「もしかしてチョッカイ出してたの!? やっぱりこの子の事を狙ってたんだ」
「違う違う。カラオケ行ったらたまたま遭遇したんだって」
「はぁ?」
必死に言い訳を展開。嘘はついていないが信用される可能性自体が少なかった。
「……ん?」
「あぁーーっ!?」
そして続けざまに2つの絶叫がこだまする。片方は友人で、もう片方は従妹の声が。
「アンタ、前に公園で会った中学生!」
「祐人と一緒に私に会いにきた女。正確には彼女のフリをしてただけの偽恋人」
「偽っ…」
「どうしてこの女とも一緒にいるの? 前に振られたって言ってたじゃん」
「ちょ、ちょっと……アナタね!」
すみれが土乃の顔を指差しながら言葉を紡いだ。明らかにケンカを売っている暴言を。
「まさか二股!?」
「違う違う。別に変な事とかしてないし」
「なら3人で何やってたのさ。隠さずちゃんと話してみてよ」
「え~と…」
何もやましい点はない。それだけは固く誓える。けど今のこの状況だけはマズい。三者三様に納得のいく説明をしなくてはならなかった。
「アンタ、水瀬くんとどういう関係?」
「ん? 私?」
「前にネットで知り合った中学生って聞いたけど。本当なの?」
「はぁ? 何それ」
気の強い2人が会話を始める。芳しくない質疑応答を。
「私は祐人の親戚だよ。血の繋がった」
「え……親戚?」
「それよりどうしてそっちが奈津紀ちゃんといるわけ? 私の友達と」
「だって水瀬くんがこの子と兄妹だって言うから…」
「兄妹? 違う違う。全くの赤の他人だし」
互いに偽りのない情報を提供。直後に揃ってこちらを見てきた。
「……貴様、またあたしを謀ったな」
「いえ、妹の件については僕に非は無いというか…」
「謝るか埋められるか沈められるか好きなのを選べ」
「ごめんなさい、ごめんなさい! 許してくださいぃいぃぃっ!」
再び襟首を絞められる。窒息しそうな勢いで。
「な~んだ。また祐人がホラ吹いてただけなんだ」
「ごめんね。年下なのに大人気ない態度を取っちゃって」
「良いよ。私も早とちりした所があるし」
「じゃあ仲直りしよ」
「うん、握手握手」
数秒間前まで敵意剥き出しだった2人が譲歩を開始。互いに伸ばした手を強く握り締めた。
「うむうむ、良い話じゃないか」
目の前に広がる光景が輝かしくて感動的。まるでドラマや漫画のワンシーンを見ているようだった。
「ねぇ、アナタこれから暇?」
「ん? 奈津紀ちゃんと一緒にハンドメイドの展覧会を見に行く予定だけど」
「ならあたし達も同行していい? 費用諸々は全て水瀬くんが出してくれるから」
「はぁ!?」
争いが消えた状況に安堵していると妙な流れに変わっていく。友人が本人の意思を無視した提案を出してきた。
「え……入場料や商品を買うお金を?」
「もちろん。なんなら夜の食事代も出すし」
「やった! それなら良いよ。ね? 奈津紀ちゃん」
「へ? え、えっと…」
「いやいや、おかしいじゃん! おかしいじゃん!」
すぐさま会話に割り込んで妨害する。不利益を被る意見を。
「じゃあそういう事でしゅっぱ~つ」
「イェ~イ」
「嫌だ。嫌だよぉおぉぉっ!」
必死に反論するか聞く耳を持ってくれない。意気投合した従妹と友人がノリノリで歩き始めてしまった。
「くっそ…」
「だ、大丈夫ですか?」
「全然大丈夫じゃない」
「……なんかごめんなさい」
歯を食いしばっていると隣にいた人物が話しかけてくる。唯一、遠慮という言葉を知っている中学生が。
「うぐぐ…」
逃げ出したいがこれまでの調子づいた言動のせいで逆らう権利は無いに等しい。完全なる自業自得。
その後は従者の形で女性陣の後をついて回る事に。発生する料金全てに対して身銭を切る事になってしまった。




