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雨上がりの空へ  作者: トランクス
1st STORY
63/129

17 修正と習性ー2

「なんかごめんね。あたしの方から水瀬くんを誘ったのに奢ってもらっちゃって」


「いやいや、誰が奢りだって言ったんだよ。まとめて払っただけだから半額分よこせや」


「ちぇっ……ケチ」


 振り向き様に友人に向かって右手を差し出す。金銭を要求するサインを。


「……ったく、これぐらい俺が払うわぐらい言いなさいよ」


「可愛い子なら喜んで」


「やった、ありがとう! じゃあ奢りって事でよろしく~」


「ちょ……お願いします。該当してないんでお金払ってください!」


「どういう意味だ、こらあっ!!」


「ピギャーーッ! グゴゴッ、ガボボッ!?」


 往来の場に断末魔が反響。頭から足まで全身の至る所に攻撃が飛んできた。


「いつつ…」


「奈津紀ちゃんはこれからどうするの?」


「え? わ、私ですか」


「うん。一緒に出てきちゃったけど」


 友人が態度を翻して話しかける。フリータイムで入っていたのに共に退室してしまった中学生に。


「え~と……夕方から予定があります」


「そうなんだ。ならあたし達とどこかに行かない?」


「へ? え?」


 2人が会話を開始。数分前に知り合ったばかりなのに友人は異様に馴れ馴れしかった。


「大丈夫、変な場所に連れて行ったりしないから。それにお兄ちゃんも妹とどっか行きたいって思ってるハズだし」


「空が赤く見える」


「だから、ね? せっかくの家族なんだもん。バラバラとか淋しすぎるわよ」


「で、でも友達との約束が…」


 嫌がる反応をスルーして無理やり誘っている。嘘の情報を明らかに信じながら。


 ただ誘われている側も夕方までは暇と判明。3人で行動する流れになった。


「奈津紀ちゃんはお腹空いてない?」


「えっと、少しだけ…」


「ならどっか行こうか。何が食べたい? ハンバーグ? パスタ? それともスイパラの方が良いかな」


「スイパラ……ですか」


「あれ? もしかして甘いのとか好きなタイプ?」


「ま、まぁ割と…」


 休日なので辺りは人が多い。どこを歩いても誰かとぶつかりそうな混雑具合だった。


「ならあたしの知ってるバイキングのお店に行こっか?」


「え?」


「そこならケーキとかフルーツとかデザート系がたくさん置いてあるわよ」


「デザート…」


「しかもここからなら歩いて行けるし」


「へぇ」


 同行者達が次の目的地を決める話し合いを始める。即席の会議を。


「なら俺、先に帰っていい?」


「殺すぞ」


「どうして!?」


 隙をみて意見を挟んだが取りつく島もなく一蹴。脅迫の台詞を浴びせられてしまった。


「ほい、到着」


「じゃあ僕はそろそろ帰りますね」


「待て、コラ」


「ぎゃっ!?」


 しばらく歩くとビルの中にあるファンシーな店に辿り着く。踵を返そうとしたが首根っこを掴まれてしまった。


「ここまで来て何逃げ出そうとしてんのよ。男だったら覚悟を決めなさいよね」


「男だからこそ帰りたいんだって。周り見てみろよ。女ばっかじゃねーか」


「別にあたしや妹ちゃんがいるから良いじゃない。1人じゃないんだから恥ずかしがる事ないでしょ?」


「そうか、そういえばお前も男だったな。だったら恥ずかしくないや」


「……あぁ?」


「ピギャーーッ! グゴゴッ、ガボボッ!?」


 全身に強烈な拳が炸裂する。視認する事が困難な素早い攻撃が。


「あ、あの…」


「ん?」


「私、あんまりお金持ってないんですけど…」


 乱闘を繰り広げていると偽妹が割り込んできた。金銭面についての問題を口にして。


「2時間1400円か…」


 彼女の言葉に反応して店先に設置されたメニュー表に目線を移す。可愛いイラストが描かれたボードに。そこには学生の食事代としては躊躇ってしまうような金額が記されていた。


「あぁ、お金の事を心配してるのね。大丈夫、大丈夫」


「え?」


「ここの分の費用はこの人が出してくれるから。優しい優しいお兄ちゃんが妹の分まで払ってくれるから安心して」


「はあぁ?」


 すぐさま友人が解決案を示す。ただし他力本願という酷い内容の意見を。


「ふざけんな、コラ! なに勝手に決めてんだ!」


「だってそれしか方法ないじゃない。わざわざここまで来て引き返させるのも可哀想だし」


「ならお前が出せよ。誘った張本人として」


「貴様、それでも兄貴かぁっ!!」


「いててててっ、やめろ!」


 首元に強烈な圧が発生。襟首を掴まれて引き寄せられてしまった。


「あたしの言う事なら何でも聞くっつったろうが!」


「言ってねーよ!」


「いつも素っ気ない態度だけどさ、たまには女の子に優しくしようとか思わないわけ!?」


「可愛い子ならよろこん…」


「シュッ!」


「ピギャーーッ! グゴゴッ、ガボボッ!?」


 続けて目潰しを喰らう。非人道的な攻撃を。


「はぁ……また金が消えていく」


「ご、ごめんなさい。私なんかのせいで」


「もう良いよ。いつまでも文句言ってても仕方ないし」


「……すみません」


「いつかその体で返してもらうから宜しく」


「えぇ!?」


 拷問に屈した事でしぶしぶながら2人分の料金を支払う事に。券売機でチケットを買った後は可愛らしい制服を着た店員に案内された。


「いやぁ、すぐ入れて良かった。このお店来るの久しぶりだからワクワクするわ」


「私は初めてです。雑誌なんかで紹介されてたから前々から来たいとは思っていたんですが」


「あ、そうなんだ。あっちにチョコフォンデュとかあるわよ。好きな物つけて食べて良いんだって」


「わあぁ、それは楽しみですね」


 女子2人が楽しそうに会話を弾ませている。和気藹々とした雰囲気で。


「むぅ…」


 視線をキョロキョロさせながら周りの様子を観察。客は9割りが女性だった。店が店だから当然だろう。今のクラスでも嫌という程に味わっている場違い感が漂っていた。


「じゃあ早速取りに行こ。2時間しかないから喋ってるのもったいないし」


「そうですね。行きましょうか」


「ほら、水瀬くんも早く」


「……はい」


 行動を促されたので席を立つ。プライドや感情を捨て去りながら。


「あっちがケーキで、あっちがパスタ系」


「お姉さん、詳しいですね」


「まぁね、何度か来た事あるし。甘い物が食べ放題とか天国じゃん」


「あはは! それ分かります」


 スイーツコーナーは人で溢れて大盛況。テンションが高いのか人見知りが激しい偽妹も口数が多かった。


「はい、お皿」


「サンキュー」


 土乃から白い皿を手渡される。料理を乗せる為の食器を。


「水瀬くんは甘い物とか好き?」


「普通。好きでも嫌いでもないって感じ」


「へぇ、やっぱり男子ってそんなもんなのかな」


「けど甘えさせてくれる女の子は好き。おっぱいプリンとか置いてないのかな」


「最低だ。なんだ、コイツ」


 料理の前には数名の女性が存在。そのほとんどが同世代か少し年上と思われる若い人達だった。


「これ美味そう」


 カルボナーラソースがかけられたパスタを皿に盛る。隣にあったボロネーゼも。


 やはり胃の中に入れるなら甘い物より普通の食べ物が良い。唐揚げやタコ焼きなんかも回収していった。


「お待たせ」


「ちょっと、何それ。スイーツが1個もないじゃない」


「腹減ってたんだから仕方ないだろ」


「それじゃスイパラに来た意味ないじゃん。どうしてわざわざこのお店に来たわけ?」


「お前が連れて来たんだろうがっ!!」


 テーブルに戻ってきた途端に口論を始める。一足先に戻っていた友人と。


「お待たせしました」


「お帰り……って、え?」


 しばらくすると偽妹も帰還。だが彼女に視線を移した瞬間、意識が手元に釘付けになった。


「ちょっ……何、その量!」


「え? ダ、ダメでしたか?」


「それ本当に食べれるの? いくら何でも多すぎない?」


 皿の上には全種類制覇したのではないかと思われるスイーツが存在。大量のプチシュークリームやマカロンが。


「別に残したら罰金とかってシステムは無いけどさ。それは取りすぎだと思うわよ」


「だ、大丈夫です。私、甘い物大好きですから」


「前にもスイーツバイキングとか行った事あるの?」


「はい、家族で何度か。お父さんやお母さんに食べ過ぎと毎回怒られてしまいますが」


「え? アナタ達の両親って離婚して別々に暮らしてるハズじゃ…」


 会話中に友人の視線がこちらに移動。疑いの眼差しで見てきた。


「いや、親父が生まれ変わった後に向こうも再婚したんだ」


「は?」


「覚醒遺伝で突然変異した親父の子孫と」


「何を言っているんだ…」


「つまり要約するとそれぞれに義理の親がいるってわけ」


「ふ~ん……複雑な家庭」


 嘘設定に追加情報を加えていく。自身でも把握出来ていない言い訳を。


「いただきま~す」


 3人揃った後は手を合わせて合掌。それぞれが持ってきたデザートに手をつけた。


「ん~、美味しい。やっぱりカロリー消費後は甘い物に限るわよね」


「でも食べ過ぎると太るぜ?」


「……そういう正論をこういうお店で言わないでよ。テンション下がる」


「体重いくつ?」


「教えると思ってんのか?」


「知能指数いくつ?」


「知らん」


 友人と睨み合う。手や口も動かしながら。


「ふぅ、美味しかった」


「え?」


 ふと隣の人物が完食を匂わす言葉を発信。視線を移すと皿が空っぽになっていた。


「も、もう食べ終わったの!?」


「え……あ、はい」


「食べるの早くね? 俺、まだ半分ぐらい残ってるんだけど」


 まるでどこかに捨てたのではないかと疑ってしまう程のスピード。もしくは時間を止めていたか。


 彼女は空の皿を持つと再び戦場へ突撃。そして先程を上回る量のデザートを積んで帰還した。


「またいっぱい持ってきた!」


「ご、ごめんなさいぃ」


「本当に食べきれるの? 食べ放題だからって欲張らなくても良いのよ?」


「大丈夫です。まだまだ余裕ですから」


「何者なの、この子…」


 2人して呆気にとられる。文字通り開いた口が塞がらない状態で。


「あ~、美味しかった」


 それから時間ギリギリまでバイキングを堪能。元を充分に回収した後は外へと出てきた。


「どうだった? ここのお店」


「凄く良かったです。また是非来たいです」


「そう。それは良かった」


 女性陣2人が感想で盛り上がっている。数時間前とは打って変わって流暢な口調で。


「あっ、そういえば夕方に用事あるって言ってなかったっけ?」


「は、はい。友達と待ち合わせしてるので駅に向かわないといけません」


「そうなんだ。あたし達はどうする、水瀬くん?」


「ベットで横になりたい。汗かいたからシャワーも浴びたい」


「え? そ、そんないきなりホテルに誘われても…」


「おい、淫乱か」


 3人で大通りの歩道を進行。満腹になった事で眠気に襲われてしまった。

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