表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨上がりの空へ  作者: トランクス
1st STORY
4/129

2 姉と妹ー2

「ただいまぁ」


 のんびり歩きながら親戚宅へと帰還する。去年の春に建てたばかりの新築へと。


「おかえり~」


 挨拶を飛ばすのと同時に中から1人の人物が登場。死んだような目つきをしたツインテールが廊下を歩いていた。


「お前、いるじゃねーかっ!」


「いるけど? だってここ私の家だし」


「さっき葵が電話かけただろ。どうして出なかったんだよ?」


「家に強盗が入ってきたから戦ってた」


「嘘つけ」


 年下なのに生意気な態度全開。彼女はヒラヒラと手を振りながらリビングへと消えてしまった。


「すみれちゃん、機嫌悪いのかなぁ」


「いつも通りだろ。普段からあんな感じじゃん、アイツ」


 スニーカーを脱いで中へと上がる。生意気な小娘を追いかける形で奥に移動した。


「あ~、疲れた」


 持っていた袋をキッチンに運ぶ。労働しましたよアピールする台詞を全力で吐き出しながら。


「あっ、私やるよ」


「いいって。俺やるから」


「でもゆうちゃんには後で料理作ってもらうし。片付けぐらいは私がやらないと…」


「んなのいちいち気にすんなっての。それより洗濯物取り込んでこいよ。夕方から雨降ってくるらしいぞ」


「いけない、忘れてた!」


 従姉からの親切心を拒否。同じ場所に2人で留まっていては効率が悪いので別の仕事に取りかかるよう促した。


「お前、1人で何やってたの?」


「横になってあんパン食べてた」


「え? ヒヨコになって残飯食べてた!?」


「死ね」


 片付けをしながら話しかける。ソファに寝転がってテレビを見ている妹の方に。


 春休み中とはいえ平日なので両親はいない。未成年3人だけで過ごしていた。


「なんだよ、暇してたのか。なら買い物に付き合ってくれたら良かったのに」


「やだよ、荷物重たいし。それにお姉ちゃんが黙って1人で出かけちゃったんだもん」


「友達の家に遊びに行かないの? せっかくの貴重な連休なのに」


「みんな旅行やら塾で忙しいってさ。だから1人で自由を満喫してた」


「お気楽な奴…」


 彼女は今年小学校を卒業して4月からは中学生になる。天然な姉と違い、かなり性悪な性格だった。


 平気で嘘をつくし暴言も連発。見た目がそれなりなので将来は男を貢がせる大人になるのではないかと勝手にイメージしていた。


祐人(ゆうと)~、暇ぁ。なんか面白い事やってぇ」


「葵に頼めよ。アイツの方がよっぽど見てて楽しいわ」


「今日はゲーム持ってきてないの?」


「あんな重たい物、毎回持って来られるか。しかも今日は買い物に付き合う約束でこっちに来たんだぞ」


「ちぇ~、つまんない。雅人(まさと)くんも出掛けちゃってるし遊ぶオモチャがないなぁ」


 ワガママ全開の文句が飛んでくる。家事を手伝う気ゼロの態度が。


「ちなみに晩飯なにが良い? リクエストあるなら今のうちに聞いとくけど」


「え? 言った物なら何でも作ってくれるの?」


「逆だよ。それ以外のメニューにする」


「うっわ、ウゼェ。こういう奴が女子に嫌われるんだよね」


「ん~、豆腐が余ってるから使っちゃいたいなぁ」


 自分はかなりの負けず嫌いだが、目の前にいる従妹も似たり寄ったり。会話すればすぐ喧嘩になるし、互いに謝ろうとしない。ドジな姉には無い要領の良さや腹黒さが全て生意気な妹の方へと流れ込んでいた。


「ふぅ、疲れた」


「ん?」


 片付けが終わったタイミングで階段の方から声が聞こえてくる。腕にたくさんの洗濯物を抱え込んでいる従姉の台詞が。


「葵は下着も外に干すタイプ?」


「うぅん、ちゃんと自分の分は自分の部屋に干してるよ」


「じゃあ、それ何」


「え?」


 衣類の山の一部を指差した。垂れ下がっている白いブラジャーを。


「えっ、どうして!?」


「気付かないうちに干しちゃったんじゃないの。それか他の服の隙間に挟まってたとか」


「そんなハズないよ。だって私、ちゃんと部屋のハンガーにかけたもん」


「なら誰かが外に移動させたんだな。葵の部屋に侵入した誰かが」


 2人して視線を横に移す。ソファに寝転がっている人物を睨んだ。


「……何かな」


「お前だろ、犯人」


「こ、根拠の無い言い掛かりは良くないよ。私がやった証拠なんてどこにも無いじゃないか」


「ほほう、なら今から素敵な話を聞かせてあげよう」


「はぁ?」


 容疑者がしらばっくれる。仕方ないので理屈で追い詰める事にした。


「恐らく犯行は葵の外出中に行われた。そしてその間、この家にいたのはお前ただ1人」


「そ、そうだけど…」


「もし不審者が侵入していたならこんな事態にはならない。強盗なら無視するし、下着ドロならそのまま持ち去ってしまうからだ」


「ふむ、確かに」


「つまり犯人はこの家の住人で、かつ葵が買い物に出掛けていた時に自宅にいた人物。お前だ、すみれ!」


 人差し指を伸ばしながら叫ぶ。サスペンスドラマの主人公にでもなった気分で。


「おぉ~、ゆうちゃん凄~い」


「ふっふっふ、推理漫画が大好きな俺からしたらチョロいもんよ」


「ちっ、バレちまったら仕方ない」


「ついに認めたな。犯行の動機は何だ?」


「天気が良かったからベランダに出しただけ。早く乾くかなぁと思って」


「でも真相は?」


「ただ単にお姉ちゃんをからかってみただけ」


「ちょっと、すみれちゃんっ!」


 追い詰められた犯人が素直に本心を自供。直後に逃亡を図ったので被害者との追いかけっこが始まってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング 面白いと思ったら投票してくれると嬉しいです( ノД`)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ