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雨上がりの空へ  作者: トランクス
1st STORY
3/129

2 姉と妹ー1

「なぁ、まだ買うのかよ」


「え~と…」


 食材が並ぶ棚の横をカートを押しながら進む。目の前を歩く女の子に従って。


「何を買いに来たの? 今日の晩飯?」


「それプラス日用品。お母さんに頼まれちゃって」


「メモとか無いのかよ。買ってきてほしい物リストとか」


「あるよ。お母さんが書いておいてくれたもんね」


「ならそれ見れば良いじゃん」


「ん~、でも家に忘れてきちゃった」


「……おい」


 提案に対して返ってきたのは呆れてしまうような発言。声の発信者は同い年の従姉だった。


「ならとりあえず食材だけ買って帰ろうぜ。日用品はまた明日で良いだろ」


「でも明日に延ばすとまた忘れちゃいそうだし。なるべくなら今日中に買ってしまいたいんだけど…」


「いやいや、買う物が分からないならどうしようも出来ないじゃん」


「う~、すみれちゃんに電話したらメモ持ってきてくれるかなぁ」


 彼女が口元に手を当てて唸り始める。眉間にもシワを寄せながら。


「アイツに連絡すんの?」


「うん。今はおうちにいると思うし」


「連絡つくなら書いてある内容を電話かメールで教えてもらった方が早いじゃん」


「あ、そっか」


 要領の悪い従姉に横から助言を出した。その言葉通り彼女はバッグから取り出した電子機器で通話。しかしスマホと自宅に二度かけたがどちらも繋がらなかった。


「ダメ、出ないや」


「ならとりあえず帰ろう。んでまた明日来んべ」


「だね、そうしよう。ゆうちゃん、また明日も付き合ってくれる?」


「……その呼び方そろそろやめてくれないか。本当に恥ずかしい」


 買い物を済ませると2人で店を出る。自分が2袋、彼女が1袋を携えながら歩いた。


(あおい)さぁ、もうちょっとしっかりしてくれよ。いくらなんでもドジすぎるって」


「ごめんごめん。自分ではしっかりしてるつもりなんだけど」


「この前だって会計の時にお金足りなかったじゃん。ポイントが貯まってたからなんとか支払えたけども」


「ア、アレは私が悪いんじゃなくて、お母さんが色々と買う物を付け足してきたのが原因であって…」


「そうだとしても普通は買う物の合計金額くらい計算するだろ? 予算オーバーしたら困るじゃん」


「う~…」


 彼女は学校の成績は良いのにあまり賢くはない。約束はキッチリ守るが約束の内容を忘れてしまったり。


 歩き方も喋り方もトロいし、思考の回転も遅め。リモコンを手に持っていながらリモコンを探してしまうタイプだった。


「ゆうちゃんは今日どうするの。うちで晩御飯食べてくの?」


「ん~、どうしよっかな。母ちゃんがスーパーのパート、何時に終わるか次第なんだけど」


「おばさんに聞いてみなよ。それで遅くなるんだったらうちで食べていこ」


「食べていこって作るの俺じゃん」


「あはははは…」


 彼女の家族は全員料理が苦手。父親も母親も春から中学生になる妹さえも。だからお世話になる時は大抵自分が作っていた。


「もうすぐ春休みも終わりだねぇ」


「……そだな」


 この連休が明ければ再び学校に通う事になる。ただし二度目の最下級生として。


「ゆうちゃんはまた1年生からスタートだったよね」


「言うな。意識しないようにしてたのに」


「授業サボリすぎるからそうなるんだよ。真面目に出席してたらそんな事にはならないのに」


「分かってるよ、それぐらい…」


 怠慢で学校に行かなかったのは自己責任だろう。ただクラスメートを助けて停学になった処分だけは納得がいかなかった。


「そういえば昨日ガラス割っちゃったとか言ってたけど何があったの?」


「え~と、実は…」


 前日の出来事を簡潔に話す。芳しくないトラブルの内容を。


 昨日、あれからすぐに女の子の母親が帰宅。割れている窓ガラスに驚きはしていたが、事情を説明するとすぐに理解してくれた。


 気さくな人で、怒るどころか片付けした行為を誉めてくれる始末。更には弁償の提案まで拒み、お茶までご馳走してくれたのだ。


「へぇ、優しい人で良かったね」


「まぁな。娘の方も大人しい子で本当に助かったよ」


「でも人の家のガラスを割るのは良くないよね?」


「うむ。弁償しなくて良いとは言われたけどお金はちゃんと返そうとは思ってるよ」


「おぉ~、それは偉い」


 バイトでもして償う事を決意。ガラス代ぐらいならすぐに賄えるハズだから。

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