多様性
多様性は素晴らしい。誰も彼も違うこの世の中で、それを許容するこの思想が私は好きだ。本来多様性とはあらゆる個人の考え方や見た目、行動を寛容に受け入れ、それを認める思想のはずだから。
しかし問題もあることは事実である。というのも、こういう証明不可能な、一見正しく見える概念はそれを高らかに主張するだけでどんなクズでもまるで聖人のように見えさせる麻薬のような作用があるからだ。それは環境問題や、男女差別、地球温暖化も同じようなものであろう。
実際世の中には本気でそういう概念に取り組まず、それで金儲けをしたり、名誉を得たりしている連中がいることも事実。そして本気で取り組んでいるものを利用してさらし自分の懐を温めたりするのである。私はそういうヒトが許せない。この素晴らしい概念を貶していることに他ならないから。
そこで私は考えた。本当に多様性を理解し、それを大切にしているかを見分ける方法を。そして閃いた。私のように多様性を理解してくれるなら、きっと望む答えを出してくれるだろうと。
だからこそ、私は今とある集会に参加している。大学の講演で開かれたものであったが、先程からつらつらと多様性の重要さを語っている人間が舞台の上にいる。彼女が本当に多様性を大事にしているのならば、私は彼女に賛同し、活動にも協力的になるだろう。
そして彼女が誰かに利用されないように手助けできるかもしれない。
とうとうその時となる。
「では、皆さん。これより質問タイムとさせていただきます。何か皆様方の中で意見ある方は手を上げてください」
司会の女性が周りを見渡してそう言った。
私はすぐさま手を上げる。それと共にマイクを渡された。私は立ち上がって、冷静な口調で言う。
「私はあなたの意見に大反対です。正直多様性なんかどうでもいいですし、そんなことを言ってどれほどのヒトが理解してくれるでしょうか?私もあなたも、ここにいる誰も誰か嫌いな人はいるはず。それを失くすなんてできません。もしそんなことが出来るなら戦争はなくなっているでしょう。というかそんな多様性がなんだと言って、くだらない。なんでこんなところでそんな無意味なことをしてるんですか?それにあまりにも意見が分かれすぎては意見がまとまらずに議論も纏まりません。多様性は限定されるべきです。違いますか?」
辺りは沈黙する。あまりにも予想外な私の言葉に誰もがぽかんとしてしまったのだ。ここに集まるのは多様性を信じている信奉者が多い。しかしそれはただの表面的な側面でしかない。
それを証明するように暫くすると周りからブーイングと悪態が飛んできた。司会の人からもそのようなことを言わないように嗜めてくる。最早会場は批判と糾弾の嵐だ。
やはり、こんなものか。
しかしそこで予想外なことが起きる。
「私はあなたの意見に大賛成です」
それを言ったのは今まで多様性について語っていあ女性であった。私はこの人は本物だと確信した。




