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意味が分かると○○な話  作者: 破月
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かわいい動物

 あれは家族で田舎に引っ越してきてすぐのことでした。あの出来事は決して忘れることができません。


 田舎に来た理由はなんてことありません。育ち盛りの子供たちが自然の中で伸び伸びと成長していってほしいと思ったからです。私には子供が二人いて、画家の夫と私で四人家族です。自慢ではないけれど、とても賑やかで楽しい家族です。


 その田舎は都会とは違って、空気も澄んでおり、田んぼが広がる場所でした。その田舎町の真ん中には大きめの河が流れていて、その水もキラキラしていました。都会育ちの私には最初はとても新鮮で素晴らしいものに思ったものです。特に稲が綺麗に並んでいる田んぼの近くに家を建てて暮らすのは、私の憧れでもありました。そして私達が買った家は田んぼや河にも近い盆地でした。自然が近くで幸せです。最初は子供たちのために来ましたが、気づけば昔の私の夢も叶っていました。


 けれど少し寂しいと感じたのは、農家さんがどんどん高齢になっていて人手が足りないことです。今では管理しきれない土地もあるらしく、このような綺麗な光景が無くなると思うと胸が痛みました。


 それとこの辺りではため池が沢山あって、特に大きいものはダムと呼ばれているのだそうです。都会育ちだからでしょうか。ダムってもっと大きいイメージがあったので、ただの池がダムというのは変な感じでした。なんでも田んぼに水を引くためであったり、大雨の時に洪水対策として使われているのだそうです。


 そんなこんなでそろそろ夏が来る季節になりました。稲穂は元気に育ち、それに負けないくらいに子供たちもすくすく育っていきました。そしてこの日は休日で家族みんなでピクニックに出かけたのです。けれど流石に夏の日差しはきついので、朝早くから出かけることにしました。でも張り切り過ぎて太陽も昇ったばかりだったのは、後で苦笑してしまいました。


 そしてその時にちょっと不思議なことがあったのです。


「ママ~!見て見て!向こうにね、カピバラさんがいたの!」


 シートの上で食事をしていたら愛娘がそんなことを言いました。しかしここは日本です。カピバラなんかいるはずがありません。


「猫でも見たんじゃないの?」


 私はそう聞いたのですが、私の可愛い長男が言うのです。


「本当だよ!」気持ちよさそうに池で泳いでたの!」


「本当なの?」


「本当だよ!」


 私は夫と目を見合わせてしまいました。確かに近くにはため池があるのですが、流石にそんなものはいないと思ったのです。しかし動物園から逃げてきた可能性もあります。それに動物園にも行かずにカピバラを見れるのならラッキーだと思い、私達も見てみることにしました。


 私達は驚きました。本当にいたのです。けれどカピバラにしては少し小さい気がして、もしかしたら子供なのかもと思いました。


「かわいい!」


 しかし私達が近づくとすぐに逃げてしまって流石に触れることは叶いませんでした。まあ、でかい人間がいきなり近づいてきたら怖いですよね。かわいい動物だし、私達は彼らにストレスを与えないように離れることにしました。


 私はこのことを後悔しています。それから台風が来た時に、私は外せない仕事で隣町にいたから助かりましたが、私の家族は奴らのせいで死んでしまったのです。

 次回は解説。

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