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縦ロールだし悪役令嬢に転生したと思うんですが、なぜか断罪されません!  作者: 夜明星良


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第8話 華麗に悪役令嬢、演じましょう!

 はあ。今日一日で、これまですっかり出来上がっていた私のなかのレオン像がかなり崩れてしまった。学園デビューとともに優しい過保護なお兄ちゃんキャラから、過保護さはそのままに、Sっ気強めな王太子様キャラへ華麗なる転身とは。これはレオンを相手にするヒロイン、大変そうだな・・・。


 ──ん?いや待て、これは実は正しい流れなのかもしれない!きっと、ゲームにせよ小説にせよ、ようやく本編が始まるのだ!それでやっとキャラクターの個性がはっきりしだした的な!?


 なんだー、そういうことかあ!原因がわかった途端、すごくすっきりした。そう、キャラがブレたのではなく、ようやくきちんと固定してきたのだ。レオンがS系男子だったのはかなり意外だけど・・・まあ、ドSってわりとヒーローに多いタイプだよね!私は嫌いじゃないな、ドSなレオン♪


「レオン、わかりました!これからは私も、もっと真剣に向き合います!」


「本当か!?」


「ええ!いよいよ、悪役令嬢ローザ・ミュンスターの本領発揮といきましょう!」


「へっ・・・?」


「私、うっかりしていたんです。ヒロインを探すことに必死で、悪役令嬢らしい振る舞いに欠けていましたわ!だからきっと、ストーリーがきちんとはじまらなかったんですよね!そうですね──まず手始めに、高慢ちきでわがままでめんどくさい婚約者になってみます!ねっ?すごく悪役っぽいでしょう!?」


「・・・はあ、やっぱり完全にズレてるんだよなぁ。でもいいよ、可愛い婚約者さん。好きにやってみなさい。そのほうが、いい虫除けになるかもしれないからね」


 ──翌日から、さっそく私は自分のイメージする悪役令嬢の演技を始めた。


「ほほほほっ!ごきげんよう、クラスメイトのみなさんっ!とってもよいお天気ですわね!」


 わざわざ持ってきた薄紫の美しいレースの扇子を片手に、ザ・悪役令嬢の微笑みを浮かべてみせる。私の渾身の演技をとくとご覧あれ!!


 が、レオンが後ろで吹き出す。ちょっと!こっちは真剣にやってるのに!!


「ごきげんよう、ローザ!──っていうか、今日は本当に『ごきげん』ね?」


「リリアナ、ごきげんよう!ほほほ、わたくしはいつでもごきげんですわ!だって、私はこんなに美しく生まれたんだし、こんなに素敵な婚約者もいるんですもの!」


「ぶはっ!!!」


 再び後ろで盛大に吹き出すレオンに、軽く肘鉄を喰らわす。


「・・・朝から夫婦漫才?」


「そういえば、今朝は朝から集会がございますわね!でもわたくし、もう疲れてしまったわ。ねえリリアナ、悪いんだけど、わたくしは今日はもう疲れたから朝の集会には参りませんこと、先生方にお伝えくださるかしら?」


 どうだ、見たかこの完璧なまでの高慢ちきわがまま令嬢感!!私なら、絶対ドン引きだ!後ろでお腹を抱えて笑っているレオンさえ度外視すれば、オープニングで悪役令嬢のキャラを印象づける、最高のカットが撮れたんじゃない!?


「私のお姫様はもうお疲れなのですね?では、私が集会場まで運んで差し上げましょう」


 は?


 っと思ったときにはもう、私はレオンにお姫様抱っこをされていた。


「なっ──!?レオンっ!やめてよ、降ろしてよっ!みんなの前で恥ずかしいじゃない!レオン!?」


 彼の腕の上で必死に暴れるが降ろしてもらえない!──っていうか、なに軽々と私を持ち上げてんの!?レオン、いつのまにこんなに身体が大きくなったのよ!?身長だって、長らく私とほとんど変わらないくらいだったくせに──!!


「も・・・もういいから!疲れたなんて嘘だからっ!集会もちゃんと行くから降ろしてよぉ!」


「だめですよお姫様、ご無理をなさっては。姫の大切なお身体に障ります。さあ、私と参りましょうね?」


「ちょっ・・・!?いやっ!もうっ──レオンのばかぁっ!!」


「あのふたり、おもしろすぎるでしょ・・・」


 私はそれから本当にレオンにお姫様抱っこされたまま、集会場まで連れて行かれたのだった。この一連の出来事および教室から集会場までの移動中の目撃者たちが、このあといったいどんな噂を流すのか・・・私は考えることを放棄した。


 集会のあと、もちろん今度は自分の足で教室まで戻ってきたわけだが──私は自分の渾身の演技が無駄になったことで、怒り心頭だ。レオンが話しかけてくるのも、もちろんずっとシカトである。


「ローザ、ほら、もう怒らないで」


 どの口が言うか!さっきので、私は一生分の恥をかいた気分だ。


「そろそろ口を聞いてくれないと、無理矢理キスするよ?」


 はあっ!?思わず抗議の声をあげようと口を開くと、ポンっと口に何かを放り込まれた。


 ・・・甘い。私の好きなすみれのキャンディだ。


「ほら、もうそれで機嫌を直してくれ」


 餌付けすれば私の機嫌が直ると思って・・・!


 ──まあ、まんまと怒りは薄れてきたけどさ。甘いものって恐ろしい・・・。


「もうひとつ、あります?」


「もちろん。君が好きだから、いつも持ち歩いてるよ」


「もうひとついただけるなら、今回は許して差し上げます」


 レオンが優しく微笑む。甘ーいキャンディにも負けない、甘い笑顔だ。まあ正直、レオンとずっと話せないのは、私も辛いからね。そのことはレオンには絶対言わないけど!


「ローザ、おかえりー。殿下も、お疲れ様でした」


「リリアナぁっ!さっきのことはもう全部忘れてね!もう金輪際、絶対思い出さないで!」


「ははははは(それは無理だわ)」

最後までお読みくださりどうもありがとうございます!


ローザ的にはカンペキな悪役令嬢を演じたつもりだったのですが・・・。


明日も18時にアップ予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「私は嫌いじゃないな、ドSなレオン♪」 吹き出しましたww 結婚後、そのうちバレるんでしょうねぇꉂ(ˊᗜˋ*) でもレオンってヤンデレとか執着とかを拗らせてこうなっただけで、ローザには基本…
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