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第7話 「お仕置きの中身は君に選ばせてあげる」

「はあ。わかりました。レオンでいいです。──それでさっきの話ですけど、今日は本当にどうしちゃったんですか?呼び方もですが、私がちょっと先に教室移動しただけでお仕置きだとか仰るし」


「そうそう、そのことだけど──」


 ・・・?


「お仕置きの中身をローザ自身に選ばせてあげようと思って」


「お仕置きを・・・選ぶ?──って!それ以前に、私はお仕置きをされる理由がないと思うんですけど!」


「1秒のお仕置きと、30秒のお仕置きと、1分のお仕置き、どれがいい?」


 何この人、今日は本当に聞く耳を持たないな!?めんどくさっ・・・だがこうなると、もはや潔くお仕置きを受けたほうが早い気もする。


 ならもちろん、短いほうがいいでしょ!!短い分、ほかより内容が多少ヘビーかもしれないけど、1秒なんてほんの一瞬だしね!──それにしても、お仕置きを内容じゃなくて時間で選ばせるって斬新だな・・・。


「わかりましたよっ!お仕置きを受けてあげましょう!ただし1秒で!」


「本当に?後悔しない?」


「ええ!」


 後悔もなにも、たった1秒でいったい何ができるというのだ。私の予想では、たぶんデコピンじゃないかなーと思っている。痛いのは嫌いだけど、デコピンならいくら相手が男性でも我慢できる程度の痛みだろう。


「じゃあ、目を瞑って?」


 ほーら!やっぱり、デコピンだ!


「ええ、いいですよ!来るなら来いっ!私のおでこは硬いんです!」


 ぎゅっと目を瞑る。でも目を瞑ると、いつ弾かれるかわからなくってドキドキするな・・・。


 ──少し沈黙が続く。なんでここで溜めるんだ、心臓に悪いじゃないか。そう思ったとき、閉じている瞼に影が落ち、レオンがぐっと近づいたのがわかった。そろそろくるぞ!覚悟・・・!あ、そういえばこの世界にデコピン文化あったっけ・・・?


 ──と、不意に唇にやわらかいものが触れ、驚いて目を開ける。そこには、目を閉じて私にキスしているレオンがいた。


 !?!?!?


 ふっと唇が離れるが、目を開いたレオンとばっちり目が合う。そして驚愕している私を見つめながら、彼はにっこりと、とろけるように微笑んだ。


「レ・・・レ・・・レオン!今のはっ・・・いったい──!?」


「お仕置き。まあ、私にとってはご褒美だけど」


「なっ・・・何を!?なんてことするんですか!私の・・・私のファーストキス・・・!」


「知ってる。そして、私のファーストキスでもある」


 あまりの衝撃に、それ以上ことばが出ない。


「だが、遅かれ早かれ君のファーストキスの相手は私になったわけだし、これからもお互いが唯一のキスの相手だ。そうだろう?なら、早いうちに慣れておいた方がいいかなと思ってね。──まあ私としては、すでに遅すぎるぐらいだと思ってる」


「!?」


「なんだその顔?まさかとは思うが、君は私以外の相手とキスする予定でもあったのかな?」


 こちらが思わずヒヤリとするような不敵な笑みを浮かべて、レオンは言う。


「そ──そういうことを言ってるのではなくて!本当に今日はどうしちゃったんですか!?まさか誰か別人と入れ替わってるのでは!?そうだわ!『入れ替わりモノ』はこの世界にもある人気ジャンルのひとつだし、もしやこのレオンは、レオンの身体に憑依した別人格で、本当のレオンの人格はどこかまた別の──!」


「馬鹿なことは言わないでくれ・・・ただの妄想だとしても、私以外が君にキスするなんて考えたくもない。それがたとえ、乗っ取られた私自身の身体だとしてもね」


「はっ!?いやでも、じゃあどうしてこんな──!」


「今までと少しやり方を変えてみる必要性があることに気づいたんだよ。これまでのやり方では、超がつくほど鈍感なある人物に私の想いが一生伝わらないような気がしてきたんでね。まあ、ちょっと焦りが出てきたわけだ、クソみたいな学園生活も始まってしまったし──」


 ??結局、彼は何が言いたいの?ただ、ひとつわかったのは、私が全部を知った気でいたレオンには、まだ私の知らない一面があったようだということ。そしてその一面というのは、どうもずいぶんとややこしい性質のようである。


「あ、そうだ。君にもうひとつ覚えておいてほしいことなのだが、男に目を瞑ってと言われたら、絶対に素直に目を瞑ったりしたらだめだからな?本当に、君がそんなだから、私が代わりにいつも警戒していないといけないんだよ?」


 いえ、ね?私だって、普通に殿方から突然「目を瞑って」、とか言われたら、はあっ?何言ってんだコイツ!ってなりますからね!?こんな特殊な状況下で、しかも相手がレオンだから騙されただけで・・・!


「あー、どうせ君は今、今回はレオンに言われたから騙されたのであって、ほかの男に言われたらちゃんと警戒したのに!って思っただろう?」


 はっ──!どうしてそれを!?レオンっていつのまに読心術を習得したの──!?


「でもね、それが一番の間違いなんだ。君が本当に警戒すべきなのは、他でもない私なんだよ?」


「・・・?どうしてですか?」


「まずは君に、その理由に気づいてもらえるよう、頑張るつもりだ」


 ・・・。今日のレオンは本っ当に意味不明だ。と、ここでひとつ気になっていたことを聞いてみる。


「ねえレオン、さっきのお仕置きって、私がほかのを選んでたら何するつもりだったの・・・?」


「んー、まあ君なら間違いなく1秒を選ぶと思ってたけど、30秒ならハグ、1分なら・・・膝枕かな」


 ずいぶん適当だな・・・。だがなんにしても、お仕置きにキスはないだろう!?


「では、次回からは長いほうのお仕置きを選びます」


 私がため息混じりにそういうと、レオンは笑いながら言った。


「君はまたお仕置きを受ける前提なの?今度はどんな悪さをするつもり?それにね、長い方がキスじゃないって保証はないんだよ?」


「・・・」

最後までお読みくださりどうもありがとうございます!


学園生活開始による焦りから、少しずつドSな本性が出てきたレオンハルトです。


明日も18時にアップ予定です。

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