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第6話 「君に近づく虫は、私がぜーんぶ駆除してあげるよ」

「・・・ローザ、私がなんで怒っているかわかる?」


「──私が約束を守らなかったから、と仰るのでしょう?貴方を待たずに、教室を勝手に出たと。でも、私はそもそも約束をしたつもりはありません。はっきりと必要ないと言ったではないですか!」


「そんなこと関係ない。実際、こんな短時間でもう君に鬱陶しい虫が近づいてきて、本当に危なかった」


「は?虫なんて、一匹もいませんでしたが?」


 何をいってるんだこの人は。あんな清潔な学園内に虫なんているわけないだろうに。それとも、王宮育ちで羽虫の一匹も許せないような超潔癖人間になってしまったのか?──いや、ちがうか、そもそもこの人、子どもの頃は普通に虫捕まえて遊んでたし・・・あ、だったらもしかして?


「──私のためですか?」


「・・・」


「はあ。確かに私は死ぬほど虫が苦手ですが、だからって王太子殿下ともあろうお方が、つきっきりで私のために虫よけ対策してくださらなくて結構ですわ!本当に危険な虫からは守っていただけるとありたがたいですが──」


 ちなみに毒がある系はもちろん、気持ち悪い系も全部無理だからね!そういうのは毒がなくてもメンタルに大ダメージで、失神の危険がある。そう言う意味で、やはり毒ありと同様に「危険な虫」なのだ。


「ローザ、君は『虫』という語をどういう意味で使っているのかな?」


「は?どういう意味、と申しますと?」


「──まあいいよ、どちらでも同じことだから。ただ、君に言っておくが、虫に危険も安全もないからね?とにかく君に近づく虫は、私がぜーんぶ駆除してあげる」


「全部はダメです!私、蝶々は大好きですもの!」


「──見た目が美しければ近づいてもいいと、君はそう言うのか?」


「妙な言い方しないでください」


 なんなんだ、この人。蝶々を好きなだけで人を面食いみたいに。でも、そうだな・・・同じ蝶でも、ほとんど蛾みたいな気持ち悪いのもいる。ああいうのは絶対に近づいてきてほしくない。そう考えると、「美しければ〜」ってレオンの言ったことは、あながち間違いじゃないのかな。


「ねえ、私が虫だったらやはり蝶かな?」


 は・・・?なに言ってるんだ、この人?その質問、する意味ある?──うん、よくわからない。でもまあ、知りたいというのなら答えてあげるか。ノリがいいなあ、私。


「まあ、あえて虫に例えるなら蝶でしょうね」


「どんな蝶?」


 なんか今日のレオンハルト様、めちゃくちゃめんどくさいな?


「そりゃあもう、世界で一番美しく高貴な蝶でしょうね!」


 もうやけくそだ、これで満足か?


「へえ、よくわかってるじゃないか。ねえローザ、私はね、一番美しく高貴な薔薇の花には一番美しく高貴な蝶以外、相応しくないと思うんだ。君もそう思わない?」


 ──???


「だから──ほかの虫は全て駆除してしまわないと。それが例え、蝶々でもね」


「レオンハルト様、どこかで頭打ちました?」


「私は至って正常だ」


「正常じゃない人に限って、自分は正常だって言うんですよ?」


 これは、頭のネジが1、2本ほど飛んじゃったのかな?


「ところで、君の新しいお友達のことだが」


 ──おおっ?もしや、リリアナに興味を持ったのだろうか・・・!?他人に興味を持たないレオンハルト様だ、これはめちゃくちゃ珍しいことではないか!まさかの脈あり──!?


「リリアナですか!?彼女、とってもいい方でしょ!さっぱりした性格で、顔立ちも綺麗だしっ!」


「そのことだがローザ、君は彼女のことをリリアナと呼んでいるようだね?」


「へっ?ええ、そうですよ?リリアナ・シューアーですから、そのままリリアナと」


「で、私のことはなんと呼んでるっけ?」


「誰がですか?」


「君が」


「・・・?レオンハルト様?」


「──そう、おかしいよね?彼女と君はほとんど今日出会ったばかりだ。それに対して、私は君と人生の大半をともにしてきた。それなのに、彼女のことは呼び捨てにして、私のことは様づけだ。だからこれからは、私のこともただレオンハルトと呼んでほしい。──『様』抜きで」


 はっ!?何を言い出すかと思えば!


「レオンハルト様、貴方はこの国の王太子殿下でいらっしゃいますわ。いくら気心が知れている仲といっても、『親しき仲にも礼儀あり』と申しますでしょ?」


「ほかでもない、王太子である私がいいといってるんだから、いいじゃないか」


「そうは参りません」


 そりゃあそうでしょ!?いくら婚約者だからといって、一国の王太子を呼び捨てになんてできない!流石に畏れ多いわ!この人はまったく、今度はなにを言い出すかと思えば・・・


「ほお、君はずいぶん礼節を重んじるんだね?いいだろう、ではこの国の王太子としてローザ・ミュンスター公爵令嬢に命じる。今後、私のことはレオンハルト──いや、『レオン』と呼ぶように!」


「はあっ!?」


 もう一度言おう、はあっ!?しかもいきなり愛称かよ!?あ──だめだめ!たとえ頭の中とはいえ、公爵令嬢ともあろうものがなんと品のない言葉遣いを・・・。私は公爵令嬢、私は公爵令嬢・・・。


「王太子命令だ。わかったね?」


 いや、わかるかっ!!


「レオンハルト様っ!なんで急にそんな勝手なことを仰るんですか!?それに貴方、今日変ですよ?なんだか違う人みたい・・・」


「・・・」


「レオンハルト様?」


「・・・」


 はっ?無視!?


「ちょっと!なんで無視するんですかっ!」


「・・・」


 ツーンと窓の方を向いているレオンハルト様。え、意味がわからない。なぜ急に無視なんて・・・あ、まさか!?


「・・・レオン」


「なんだい、私のローザ?」


 満面の笑みでこちらを向いた、レオンハルト様改め『レオン』。


「──権力を振りかざすのはどうかと思いますよ?」


「なんとでも言えばいい」


 ・・・この人、こんなに子どもっぽい性格だったっけ!?

最後までお読みくださりどうもありがとうございます!


ローザは基本、言葉の裏は読めません。

そのうえ、思い込みが激しいので手に負えません。


※修正 明日から仕事の関係で18時投稿になります>_<

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[良い点] 「子どもの頃は普通に虫捕まえて遊んでた」 イメージしてしまったのが田舎の夏休みの小学生男子だったので意外…!と思いましたがww 冷静になればそうでもないですね。向学心が強いレオンなら自分で…
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