第5話 学園デビューのつもりですか?
本日、連投しています!
今日の授業はこれで終わり!授業後、学園で初めてできた友達であるリリアナに声をかけようと勢いよく席を立ったが、隣に座っているレオンハルト様にパッと腕を掴まれる。
「あの──レオンハルト様、ちょっと手を離してください。リリアナに話が・・・」
「彼女にいったいなんの話があるんだ?」
「学園ではじめてできた私のお友達なんですよ?お友達とは特になんでもなくても話すものでしょう?」
「ふーん、なら私も一緒に行こう。君の友達なら、私にも無関係ではない」
なぜに・・・?
「なんでもいいですけど、さっきみたいな変な態度を取らないでくださいね?いくら人見知りが激しいにしても、あれは少し失礼です」
「別に私は人見知りしているわけではないが」
じゃあなんで私のやっとできたお友達にあんな態度なのよ!?あと、せっかく話しかけてくれたキースリング様ともあれきりになってしまった。なんか申し訳なかったなあ・・・。
「リリアナ、さっきはごめんね。彼のせいでなんか変な空気になっちゃって。でも、本当はこの人、こんな人じゃないのよ?とっても優しくて、穏やかな人なの。ねっ、レオンハルト様!」
「ローザがそういうなら、そうなんだろうな?」
よくわからないが、今日はやたらと甘い笑顔を私に向けてくる。いったい、なんなんだろう?学園では、こういう謎キャラで通すことにしたのだろうか。
はっ、もしや「高校デビュー」ならぬ、「学園デビュー」のつもりだろうか?レオンハルト様なら、そんなことしなくても十分目立つし、モテるだろうに──。
「王太子殿下、ご挨拶申し上げます。リリアナ・シューアーでございます」
「私のローザの友達になってくださったそうですね」
私のローザって・・・。まあ、なんでもいいですけどね?
「私のほうがローザにお友達になっていただいたのですわ、殿下。それにしても、お2人は本当に仲がよろしいのですね。ローザったら、先ほども殿下がどれほど素晴らしい方であるか、ずっと熱弁なさっていたのですよ?」
「なに、ローザが?」
いや、ちょっとそこだけピックアップしないでほしい。話の流れってものがあるじゃないか。私はあくまで直前の嘘をごまかして、かつレオンハルト様の印象の修復&アップを狙うために言っただけで・・・。
しかしこれを聞いたレオンハルト様はすっかり上機嫌になってしまった。訂正するのも変だし、かといってこの状況は──。なんだこれ?悪役令嬢の悩みってこういうものだっけ・・・?
「ただ、ずっと殿下がローザと一緒ですと、恋バナなどの女子トークはちょっと難しいですわね。ね、ローザ、貴方だって、本当はもっと貴方の大好きな殿下のことを私と2人だけで話したかったんじゃなくて?」
へ?いや、そういうわけでは・・・あ!そうか、そういうことかっ!!リリアナ、グッジョブ!!
「そう、そうなんですの!レオンハルト様のかっこいいところや素敵なところをリリアナにもっと聞いてもらいたいわ!でもこんなふうにすぐそばにレオンハルト様ご本人がいらっしゃると、恥ずかしくって話せないかも・・・」
私のその言葉にレオンハルト様は明らかな疑いの眼差しを向けるが、渾身の演技で私がはにかんでみせると、レオンハルト様は困ったように微笑みながら言うのだった。
「・・・まあ、女性同士でこっそり話したいこともあるだろうな。そういうとき、男の私ではローザの話し相手をつとめられないのは事実だ。それは認めよう」
やった!!ほら、皆さん!今のちゃんと、言質を取ったよね!?
「ではさっそく今から──!」
「今日はだめだ」
「へっ!?どうしてですか!?」
「言っただろう、君は私との約束を破ったんだから、これからお仕置きだ」
いやいやいや、意味がわからない!えっ、この人、こんなに暴君だっけ!?
「・・・ローザ、今日は貴方、殿下の言う通りにしたほうがいいと思うわよ?また明日おしゃべりしましょうよ、ねっ?」
ちょっ・・・リリアナ!?そんなところで素晴らしい聞き分けの良さを発揮しないでよ!
「ありがとうシューアー嬢。それでは、私はこのまま婚約者を連れて失礼いたします」
「ごきげんよう殿下、ごきげんようローザ」
え、いやっ、おーーーい!?
私の手をしっかりと握ったまま、レオンハルト様は無言でずんずん進んでいく。いったいなんなの!?
レオンハルト様は本当にあの一方的な約束を破ったことで、私に怒ってるのだろうか?普段のレオンハルト様は、私がどんな馬鹿なことを言っても、どんなに失礼なことをしても全然怒らないのに・・・。
彼がようやく口を開いたのは、レオンハルト様専用にして、彼の命令で私たち2人を学園に毎日送り迎えしてくれている、王族用の豪奢な馬車に乗ってからだった。
最後までお読みくださりどうもありがとうございます!
リリアナは、ちゃんと空気の読める子です。
明日も17時にアップ予定です。