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第3話 教室の送り迎えは不要です!

「レオンハルト様、ほらもう起きないと!まもなく次の授業ですよ?」


「うーん、もうそんな時間?じゃ、そろそろ行こうか」


「あ、次は男女別授業なのですから、ちゃんとおひとりで受けに行ってくださいね!」


「──そうだったな・・・ああ、憂鬱だ」


 そう行って渋々起き上がったレオンハルト様だが、教室移動を始めても、なぜかずっと私についてくる。


「レオンハルト様も教室こっちでしたっけ?」


「いいや?逆、かな」


「えっ!では、なぜこちらにいらっしゃるんですか?」


「なぜって、君を教室まで送り届けるためだ。君が一人でいて、何かあったら困るじゃないか」


 ──またはじまった!


「そんなことなさる必要ありません!学園は特別な保護魔法のおかげで、とっても安全なのですよ!?よーくご存知ではないですか、王太子殿下である貴方にさえ護衛が必要ない場所だというのに」


「危険なのはなにも、外から侵入してくるものばかりではない。いやむしろ、もっと危険なのは中にいる奴らだ」


「学園生のなかに、そういう危険な刺客が紛れ込んでいるとでも?殿下、いくらなんでも警戒心が強すぎますわよ?確かに王族は他の人たちよりも危険が多いのでしょうが、少なくとも私は王族ではないわけですし──」


「これだから放っておけないんだ。君にはそういう危機感がまるでない。だから私はいつも不安だ。それにお言葉だが、君もすぐに王族の一員になるんだよ?早くその自覚をもってくれないとね。さ、教室に着いた。この授業が終わったら、私が迎えに行くまでちゃんとこの教室で待っているんだよ?」


「なっ!?レオンハルト様は過保護すぎです!授業が終わったら自分で次の授業に移動しますから、貴方もまっすぐ次の教室に移動してくださいっ!そうしたら、そこでちゃんとまたすぐにお会いできるじゃないですか」


「ここにいるんだよ?もし勝手に動いていたら──お仕置きだからね?」


「は?お仕置きって──ちょっと!レオンハルト様っ!?」


 意味がわからない!王族すらも安心して通える最高のセキュリティ対策が施されているこの学園で、なぜ教室の送り迎えが必要なの!?まして、王族であるレオンハルト様ご自身ならまだしも、公爵令嬢の私を王太子であるレオンハルト様が送り迎える意味って!?


 呆れながら教室に入ると、視線が自分に集まっていることに気づく。──気まずい。私が王太子殿下と婚約関係であることは、学園の誰もが知っていること。そのため、私たちが一緒に行動すると、どうしても目立ってしまうのだ。それなのにいま廊下で思いっきり彼の名前を叫んでしまったから、ここまで彼と一緒に来たことがバレてしまった。


「ごきげんよう、ローザ様」


 声のしたほうに顔を向ける。そこにはすでに知った顔があった。


「ごきげんよう、リリアナ様」


 リリアナ・シューアー侯爵令嬢はクラスメイトだ。ただし、自己紹介はしたものの、まだほとんど話せていない。というか、入学してもう3日目なのに、ほとんど誰とも話せていないのだ。これもまた、レオンハルト様がずっと私にくっついているために、周りが怖がって近づいてこないせいだ。


 でも今日のこの授業は、待ちに待った男女別授業!つまり、ようやく普通にまわりの子たちと喋れるのである!私はこのときをずっと待っていた。だいたいヒロインと悪役令嬢というのは同じクラスのはず。つまり、ヒロインがいるとしたらこのクラスの確率が高いのだ!さあ、ヒロインはいったい誰なの!?


「ローザ様、先ほど廊下にいらしたのは、王太子殿下ですわよね?次の授業は男女別ですのに、なぜこの教室にいらっしゃったの?」


 リリアナ様が不思議そうに私に尋ねる。でも、なんと答えよう?


「ええっと・・・」


 彼が過保護で、私の身を案じてわざわざ送ってくれた、なんて言ったら、たぶんまたあらぬ誤解を生む。だから、ここは適当にごまかすのが、吉!


「ちょっと、教室を間違えちゃったみたいで・・・」


「へえー、王太子殿下って、意外とおっちょこちょいでいらっしゃるのね!お噂では、なんでも完璧にこなされる天才というお話だったのに、あれは嘘だったのね」


 おっと!私が適当についた嘘のせいで、レオンハルト様のせっかくの評判が下がるのは困る。ヒロイン探しもあるんだし、ここはしっかりフォローしておかないとねっ!


「いいえ、その噂は事実よ!レオンハルト様は本っ当になんでもできるの!ザ・完璧人間!だけど、クールで近寄り難い方というのは嘘ね。──っていうか、最初だけ!ちょっと人見知りなのよ。でも、本当はとーっても気さくで優しい方なんだから!」


「あら、ローザ様は本当に王太子殿下のことを慕っているのね!政略結婚で本当はお辛いのではないかと思ってたけど、要らぬ心配だったわね」


 ──!?リリアナ様、それ誤解っ!いや、慕ってはいるけど、そういう方向じゃない──!


「ちっ、違うの!そうじゃなくて──!」


「いいの、いいの!私、人の惚気話を聞くの、大好きよ?だから好きなだけのろけてちょうだい!ああ、ローザ様とは良いお友達になれそうだわ。ね、ローザって呼んでもいい?そして私のこともリリアナって呼んでよ!」


「えっ!?ええ、もちろんよ!よろしくリリアナ!」


 わーい!さっそくお友達ができたー!


 ・・・じゃなくて!!さっそく思いきり誤解されてしまったんじゃない!?

最後までお読みくださりどうもありがとうございます!


基本、空回りするローザです。


明日も17時にアップ予定です。

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