第21話「 コレカラヨロシクネ!」
第1回目の記念すべき部活動!といっても、私含め、ここにいる誰ひとりとして部活動経験がないわけで・・・いざ部活を始めようにも具体的に何をしたらいいかわからない。だが少なくともリリアナとキースリング様は見学者だから、部活動運営は当然、部長と副部長であるレオンと私の役目である。つまり・・・とりあえずなにか喋らないと!
「で・・・ではさっそく、部活をはじめましょう!レオン、開始の挨拶っ!」
「え、そんなのするの!?」
「しっ、知らないですよ!?そもそも『ゲシヒテ』創部はレオンの発案なんですから、なんかこう適当に・・・!」
「ああ・・・まあ、そうか。──ごほん、記念すべき『ゲシヒテ』第1回目の部活動にご参加いただき、感謝する。私とローザがふたりっきりで過ごせるはずの幸せな時間を邪魔されて、私としてはお2人には今すぐ──」
「レオン!ふざけてばかりいないで、真面目にやってください!」
「──ってことで、私の婚約者がお怒りのようなので、さっそく本題に入ろう。この部では、世界各地の物語をさまざまな視点から研究するつもりだ。その手始めに、遠い「ニホン」という国の物語の一大系統である『悪役令嬢モノ』というのを研究する」
「悪役・・・令嬢モノですか・・・?」
「初耳です。いったいそれはなんです?それに『ニホン』なんて国、聞いたことが──」
当然のようにリリアナとキースリング様は困惑の表情を浮かべる。
「あっ、それについては私から説明させていただきますわね!」
私は日本の「乙女ゲーム」の説明からはじめ、そこにしばしば登場する「悪役令嬢」について熱く語る。その特徴、共通性(縦ロール等)、そしてその美学とカタルシス──。結果、その存在のテンプレ化が逆手にとられ、「悪役令嬢」を主役とした「異世界転生モノ」と呼ばれる物語のジャンルが生まれるに至るまで──大好きな「悪役令嬢」について、私はただひたすら語り続けた。(ああ・・・すごく・・・楽しい!!)
ふと我にかえると、キョトン顔のリリアナとキースリング様が、ただじっと私のほうを見ている。あ、やってしまった。テンションが上がりすぎて完全に変人でしたね、私!私のこういう姿にすっかり慣れきっているレオンは別だが、オタク免疫ゼロの見学者たちをさっそくドン引きさせてしまったようだ。おい、このあとどうするんだ私!?これじゃ、見学者の勧誘どころでは・・・!
「・・・と、いうのが『悪役令嬢モノ』ですわ。ほほほほほほ!」
レオンがまた横で吹き出す。ええ、わかってます。いくら急にお上品なご令嬢を装ったって、いまさら取り繕いようもないですよね・・・。
「というわけで、私たちはこの『悪役令嬢モノ』という、我々の多くにとって未知のものであるジャンルに挑戦するわけだ。見学者諸君も、そんなもの読んだことないだろう?というわけで、せっかく見学に来ていただいたのに残念だが、これで・・・」
「「悪役令嬢モノ、いいっ!!」」
「「へっ!?」」
「とっても興味深いです!この国にも貴族社会の恋愛事、とくに、政略結婚と自由恋愛に焦点を当てた恋愛小説はすごく人気ですが──それを何!?『異世界』!?『転生』!?突然、『悪役令嬢』として生きることを運命づけられた主人公が、『運命』に挑む!!?めちゃくちゃかっこいいじゃないっ!!そんな自由な発想ができるなんて、そしてそれがひとつの文学ジャンルにまでなるなんて、『ニホン』って、本当にすごい国だわ!ねえローザ、『悪役令嬢モノ』、私も読んでみたい!『乙女ゲーム』もしてみたいわ!そのシリーズ、どこで買えるの!?」
「うん、これは絶対に流行る!『ニホン』なんて国は聞いたことないから、うちもまだ取引したことがないはずですが・・・しかし、まだ有名でないなら、今からでも専売契約を──!」
ちょっ!?ダメ!絶対無理だからっ!!だってここ、「異世界」なので!!!(というかこの場合、日本が異世界なのか?)
「あ・・・あの!ごめんなさい、このシリーズはその辺じゃ買えないし、『ニホン』とは交易もできないの!」
「「えっ!なぜ!?」」
「あ・・・えーとね?その『ニホン』って国は『鎖国』っていうのをしていて、外国との交易はしないの。『ニホン』独自の文化を守るためなんですって!こんな特別な文化を持っている国なんだし、下手に交易なんて始めたら、せっかくの文化がダメになってしまうかも!ね、レオン!?」
「へ!?あ──ああ、そうなんだ。実は前に『ニホン』からの使者がたった一度だけ我が国を訪れてね。そのとき、私たち2人は偶然その使者と親しくなっていろいろ教えてもらったんだが──私たちはその使者が話してくれた話を耳で聞いただけなんだ。だから、本やゲームそのものはない。
いずれにせよ『ニホン』というのは小国であり、また非常に遠方にある。第一、彼らが『サコク』という政策を取りながら自国の文化を守ろうとしているのに、我が国の勝手な都合で干渉などするのは、大国として誉められたものではない。我が国としては彼らの意思を最大限に尊重することにし、これ以上の国交も、現時点では考えていないんだ」
レオンも必死で私の嘘に合わせてくれている。挙句、もうこれ以上聞かないでくれオーラ満開の美しすぎる王太子スマイルを浮かべている。(レオンは困るとだいたいこれだ。)
それにしても、いくらレオンとはいえ一国の王太子殿下にこんな訳のわからない嘘を吐かせてしまうなんて、なんか申し訳ないな・・・。
しかしこんな苦しい嘘、いくらレオンの王太子スマイルつきでも通用するはずが──
「「なら仕方ないか!」」
──えっ!?
「殿下の仰る通りですね。せっかくの商機ではありますが、他国の政策に干渉してまですることではないでしょう」
「そうですね。異文化はなにより尊重すべきものだわ」
お2人とも、ものわかり良すぎやしませんか──!?それとも、やはりレオンの王太子スマイルって、なんか絶対的な力が働くのでしょうか・・・?
「それより、さっきローザはまるで本を丸暗記しているみたいに話してくれたじゃない?私、それを聞けたら十分かも。ローザって、すごく話し上手だよね!だから、もしローザさえよければ、貴方の覚えているお話について、もっと話してくれない!?」
な、なんと──!そんな嬉しいことを言ってくださいますか、リリアナ~!!もちろんですよ!いくらでも話します!っていうか、それがしたかったんです!!
「ええ、ええ!もちろんよ!おもしろくって各エピソードもキャラ情報も必死で暗記したから、みんなすっかり覚えているの!だからいくらでも話してあげるっ!じゃあリリアナは・・・『ゲシヒテ』に入部してくれるの?」
「殿下にお許しさえいただければ・・・」
「きゃーーー!!レオン、聞いた!?リリアナが入ってくれるって!!」
「え、あ、ちょ、まっ・・・!」
「キースリング様は!?」
「お許しいただけるなら是非」
「きゃーーーー!!!レオンっ!私たちの部活に部員が2人も入るんですよ!?もう最高っ!」
歓喜のあまり、私はレオンにぎゅーーーっと抱きついた。今なら、私からキスの嵐を贈りたいくらいだ!
・・・だが、なぜか無反応で微動だにしないレオンに、「はあ。またこやつは人見知りを発揮して2人を威圧してるのか?」と思って見上げたその顔は──驚くほど真っ赤だ。
「・・・?レオン、どうしたの?顔、赤いけど──」
「──へっ!?あ、いや!な──なんでもないがっ!!デワ2人トモ、コレカラヨロシクネ!」
おおー!やけに素直に受け入れてくれたな!?絶対に一回は渋ると思ったのに。なんだかんだ言って、やっぱりレオンも部員欲しかったんだな♪
・・・とはいえレオン、やっぱり様子おかしくない?ちょっとカタコトだし、未だに身体が硬直してる──
「レオン・・・?」
「へっ!?」
「レオン、大丈夫?様子がなんか変だけど・・・?」
「ア、ゼンゼンダイジョウブデス」←ローザを抱きしめるのには慣れているが、ローザから抱きつかれるのには慣れていない
「──?」
──今日のレオンはいつも以上に変だな。でも焦ってる顔は・・・すごく可愛いかも?
最後までお読みくださりどうもありがとうございます!
レオンハルトは鈍感ローザのせいでヤンデレ拗らせていますが、本質的には純情系です。
明日も18時にアップ予定です。




