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縦ロールだし悪役令嬢に転生したと思うんですが、なぜか断罪されません!  作者: 夜明星良


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第201話 レオンは「誘導」が得意?

「まあっ!なんて美しいの──!」


 エリスが綺麗な水色の瞳を輝かせながら小さく叫んだ。リリアナとマリーも同じように目を輝かせて、この世界一美しいと言われる湖を眺めている。


 晴れ渡った空には真っ白な雲が気持ちよさそうに浮かび、完全に鏡面となった湖には周囲を取り囲む低い山々とともに綺麗にそれが映って、地上にもうひとつの天空を創り出している。


 この湖の翠色──。やっぱり特別に好きだ。だって、陽の光の中で輝くレオンの瞳の色とそっくりだから。私がレオンのほうを見ると、レオンは優しい笑顔を向けてくれる。


「ひとまず、湖の周辺を散策しよう。リヒター、騎士団員たちはすでに配置についてるな?」


「ええ、ご安心を。今回は副団長のトロイも着任していますから、なんの心配もないでしょう。トロイは真面目で優秀な騎士ですから」


 今日はメンバーがメンバーだけに、安全対策には抜かりない。


「そういえば、リンドバーグ騎士も着任していたな。エリス嬢と仲良くなったんだろ?せっかくなんだから、挨拶くらいさせてあげたらいいんじゃないか?」


「たしかにそうですね。わかりました、時間を見つけて、エリス嬢をリンドバーグのもとにお連れします」


 おおレオン、流石ですね!ごく自然な感じでリヒターとエリスを一緒に行動させるように持っていきました。


 レオン、こういう誘導が本当に得意なんですよね。──もしかして私も、気付かぬうちにレオンに誘導されてることがあるのかな?


「マリー、これが前にお話しした花ですよ。とても愛らしい花でしょう?香りも、とてもいいのです」


「まあ、本当に良い香りですこと!とても甘くて、まるでコットンキャンディのような香りですわ。思わず食べてしまいたくなりますわね」


「マリーによく似ていますね」


「えっ!?なっ──なにを仰いますのやら!わたくしはこんなに小さくて可憐な花には似ても似つきませんわ!お兄様に至ってはわたくしのことをラフレシアのようだなんて仰っていたのですよ。ねえ、お兄様?」


「おいおい、まだ根に持っているのか?あれはお前がまだいわゆる悪役令嬢っぽかった頃の話だろ。流石に今のお前には言わないって。そうだな、今なら・・・アンスリウムくらい?」


「アンスリウム・・・」


 アンスリウム・・・いやいやオスカー様、それめちゃくちゃ反応しづらいですって!!


「マリー、私にとって貴女は、やはりこの花に似ていますよ。貴女は可憐で、それにとても繊細で美しい心をお持ちですし──この花に似た、甘い香りがします」


「ええっ!?」


 顔を真っ赤にして照れているマリーがめちゃくちゃ可愛いな!にしてもクルト様、こういう一面があったのか。夕食はほぼ毎日ご一緒してるわけだけど、普段のクルト様は以前と全く変わらない、レオンを大好きな可愛い弟って感じだ。


 でもマリーといる時のクルト様は、なんていうか──口調もかなり変わるし、なんだか男らしくなる!(あと遺伝なのかレオンの影響なのか、あんな甘ーいセリフもさらっと言っちゃうし!)


 いつまでも小さいと思っていた弟が急に成長して、立派に大人になったみたいな感じがして・・・なんだか妙に感慨深いな。


 それにしても、恋をすると人は変わるというけど、恋をしている相手の前だけこんなに人が変わるものなのかな?私のレオンも、私の前と私の前以外では少し(っていうかすごく?)変わるってみんな言うけど、あれは本当なのだろうか。


 ──いや、レオンはそんなに変わらないよね!だってリヒターを除けば私ほどレオンと一緒にいる人間はいないのだし、その間レオンはずっと誰よりも優しくて、頼りがいがあって、何をやらせても完璧だもん!


「・・・なんかあれですね、自分の妹ががっつり口説かれてるのを見るのは、なんとなく妙な気分になりますね。いや、もちろん相手がクルト様なのでなんの文句もないんですけど──それでも、妙な感覚ですよ」


「それはわかる気がするな。私も、自分の弟が女性を口説いているのを見るのはなんとなく妙な感じだ。いつまでも子どもだと思っていたのに、すっかり男になったのだなという感慨深さすら感じる」


 おおっ、レオン!それ、私も完全に同じことを思ってたんです!


「兄弟のそういうのを間近で見せられるのって、なかなか複雑な心境ですよねえ。私も最近、兄が婚約者の女性とがっつりキスしてる場面にどーんと出くわしちゃって、なんだかものすごく気まずかったですよ」


「はははっ!それは災難だったな、リリアナ嬢!」


「ものすごーく他人事のように仰ってますが、殿下がローザとイチャイチャしてるのをずっと目の前で見せられているクルト様とレーナ様も普段から相当気まずい思いをされてると思いますよ?」


「ぶはっ──!」


 リリアナのもっともすぎるツッコミにオスカー様が吹き出した。私もつられて笑いそうになったが、思えばこれって私の話でもあるわけで・・・。ふっ、思わぬ方向から飛び火したもんですよ。流石のレオンもちょっと恥ずかしそうだな。


「ところでオスカー、結局のところあのふたりってどこまで進展してるの?社交界ではもうクルト様の結婚相手はマリー・キースリング公爵令嬢で確定だろうって話になってるみたいだけど、公爵家のほうにはそういう話が正式に来てたりするわけ?」


「いや、そういうのはまったく・・・っていうか、その辺のことは俺の方が知りたいよ。クルト様が頻繁にマリーを訪ねていらっしゃるのは事実だし、マリーは口では困ってると言いながら結局一度も断らないで、毎度しっかり粧し込んで迎えるしでさ。結局どうなんだよって感じで──」


「どうなんだよって、そんなのわかりきったことじゃない!もうっ、双子のくせに、どうしてそんな簡単なこともわかんないの?女は好きでもない相手のために粧し込んだりしないわよ、ねえローザ!」


「──じゃあ、リリアナもそう?」


「へっ!?」


「今日特別可愛いのも──俺のためだったりする?」


「えっ!?なっ──なによ急に!?で、でもおめかししたのは・・・そりゃまあ、貴方のためだけど・・・」


「うわっ、マジか。めちゃくちゃ嬉しい!」


「ちょっと、オスカー!?人前で抱きつかないでよ!恥ずかしいってばっ!!」


 おうおう、友人たちが目の前でめちゃくちゃイチャついてますよ!見てるとにまにまが止まりませんね!


 このふたりって学園内ではほとんどイチャつかないから、こういうやりとりが見れるのはすごく新鮮だし、なんかすごくいいな♪


「ローザ」


 私の肩を抱いているレオンに呼ばれ、ふっと彼の方を向くと、ちゅっとキスされる。


「私たちもイチャイチャしようか?」


「えっ?」


 と、もう一度優しくキスされる。どうやら、目の前でイチャイチャしてるカップルを見ていて、触発されたらしい。いやいや、向こうはハグしてるだけでしょうが・・・と思いつつ、レオンのキスはやっぱり嬉しいわけで──。


「ごほんごほんっ!!ちょっとそこのバカップル!貴方たちは改めて宣言しなくても、普段からイチャついてるでしょうが!」


「だっ──だから、私たちはバカップルじゃないってば!もうっ!レオンのせいですよ!?」


「はははっ!だが、これこそクインティプルデートの醍醐味だろう?」


「──あの殿下、先ほども仰ってましたけど、そのクインティプルデートってなんです?」


「ああ、これはローザの発案なのだが・・・」


 ここでレオンと私が、リリアナとオスカー様にこのピクニックの真の目的を告げる。


「へえー!それは確かにおもしろいかも!!」


「妙なことを思いつくもんだよなあ、本当に」


「確定カップルである私たち以外の3組は、どれもあともう一押しって感じじゃない!?だから今日のピクニックでいい雰囲気を作り出して、そのあともう一押しを作り出しちゃおうってわけなの!」


「まあたしかにこれだけ素敵な場所で、開放感もあって──そんななかで好意を抱き合ってるもの同士で行動をともにすれば、ある程度の進展は見込めるかもねえ」


「そういうものかな?」


 オスカー様が少し疑わしげな表情を浮かべる。でも私には自信があるのだ!そしてせっかくなんだから、これがより効果的に働くためにふたりにはしっかり協力してもらおうじゃないですか!


「そういうものなんです、オスカー様!ロマンティックな雰囲気のなか、まわりには幸せそうな恋人たち!そうしたら確実に普段よりもそういうことに大胆になれると思うんですよね!だからふたりにお願いです!今日は是非、存分にイチャついてください!」


「「はいっ!?」」


「ふたりが幸せそうな恋人同士であればあるほど、ほかのみんなはそれに触発されることになるの!だからふたりには是非、思いっきりイチャイチャしてほしいんです!別にわざとそういうふりをしてほしいんじゃなくて、普段我慢しているイチャイチャを我慢しなければいいってだけですから、簡単でしょう!?」


「なっ・・・ローザ、そんなことできないわよ!ねえ、オスカー!」


「──わかった」


「は!?」


「別に、へんなことしろってわけじゃないだろ?ただちょっと、いつもよりその・・・ちょっとスキンシップを多めにする程度で・・・いいんだよな?だったら俺は別に──」


「えっ!?ちょっと、オスカー!?」


「ほ、ほら、ローザ嬢たってのお願いだし、な?」


 オスカー様、どうやら普段よっぽど我慢してるんだな。リリアナと堂々とイチャつけるこの好機を逃したくないようだ。なかなか可愛い性格じゃないですか♪


「じゃあ決まりですね!ではふたりとも、存分にイチャついてくださいね!!」


「ローザ、わかってるよね?ふたりにあんなことを頼んだんだから、私たちふたりも今日は存分にイチャつかないとな?」


「へっ!?」


「殿下・・・この期に及んでまだもっとローザとイチャつこうっていうんですか?」


「まだ、だと?これでも私は死ぬほど我慢してるんだぞ?」


「はいはいそうですか。まあ、お好きになさってください」


 すっかり呆れ顔のリリアナとオスカー様を前に、少しも動じずに輝く笑顔を向けてくる我が恋人・・・。


「じゃあローザ、今日はめいっぱいイチャイチャしよう」


 とっても嬉しそうに甘ーいキスをもう一回。・・・なんだろう、今回も気付かぬうちにレオンに誘導されていた気がするのですが?

最後までお読みくださり、どうもありがとうございます!


たしかにレオンは誘導が得意ですが、どんなに上手く誘導したところで、結局ローザに翻弄されるだけなんですけどね。


明日も18時にアップ予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ローザは勿論ですが、リヒターもレオンに誘導されやすい印象がありますꉂ(ˊᗜˋ*) はたしてLukasaが鈍感だからなのか、レオンに甘いからなのか……(*´艸`) 「アンスリウム」、前回も…
[良い点] やっぱりトロイさんとレイチェルさんもいるんですね!! 「もしかして私も、気付かぬうちにレオンに誘導されてることがあるのかな?」 昔からいつも誘導されてますよねw 一切悟らせないレオンの手…
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