第11話 好きなタイプを教えてください!
さて私たちがカフェを出ると、レオンの専属護衛騎士であるリヒターが待ち伏せていた。
「あら、リヒターじゃない!・・・レオンのそばにいなくていいの?」
「ずいぶん長い間お喋りなさっていたのですね、ローザ様」
「はあ。じゃあレオンがまた貴方を待たせていたわけね・・・」
「では、こちらは殿下の騎士の方?」
「レオンハルト王太子殿下の専属護衛騎士、ルーカス・リヒターでございます」
青い髪に濃い青色の目が印象的なイケメンソードマスターのルーカス・リヒター33歳は、レオンが心から信頼している人間のひとりだ。
彼はレオンがまだ幼い頃からずっと専属の騎士をしており、16歳であるレオンとは歳が倍以上離れているけど、彼が完全に自然体でいられる、本当に数少ない相手なのだ。なお、仕事一筋すぎて未だ独身。キャラデザとカラーリング的に、ヒロインの攻略対象感があるよね?年上好み向けか?
「リヒターはね、レオンの男の親友なの。今はこんなふうにかしこまってるけど、レオンとふたりの時はタメ口なんだから。あ、ちなみに女の親友は私よ!(これは譲れないわ!)」
「そういうローザ様も、ようやくレオン呼びですね。殿下が鬱陶しいほど、自慢していましたよ。ようやく貴方にレオン呼びを認めさせたと」
「あ、それは王太子命令だとか言って、脅迫されたのよ!?出会ったばかりのくせに、リリアナのことは呼び捨てなのかって、難癖つけられて!」
「(えっ──私の知らないうちに、殿下からもう敵意を向けられてるわけ!?)」
「まあまあ、許して差し上げてください。あいつ──いえ、殿下は、ずいぶんと前から貴方に『レオン』と呼んでもらえる日が来ることを待ち望んでいたんですよ?(あのガキ、『レオン呼びはローザに自分の想いがきちんと通じてから』とか偉そうにほざいていたくせに、学園生活が始まってさっそく焦りやがったか)」
「ねえつまり──殿下は自分の専属護衛騎士をいつも貴方の護衛においてっちゃうの?」
「必要ないって私は言ってるんだけどね。自分がそばにいないときは心配なんだって。ぜったい過保護だよね!?」
「過保護っていうか・・・いえ、いいわ。じゃ、私は行くわね。ローザ、また明日ね!リヒターさんもごきげんよう」
「リリアナ、また明日ね!」
いいなー、気楽に話せる女友達がいるって、すごくいいっ!やっぱり同性同士でしか話せないことって、あるもんね!
──そういえば、リヒターはレオンと同性だから、私には話してくれないような話もリヒターとはするんだろうか?例えば・・・好きな女性のタイプとか?
あっ!なんでもっとはやく気づかなかったんだろ!これ、ヒロイン探しにめちゃくちゃ有益な情報だよね!?灯台下暗しとは、よく言ったものだわ!
リヒターに護衛されながら、王族用の馬車に乗せられる。やはり、このまま王宮に連れて行かれるようだ。まあ、そうでしょうね。あのまま明日までレオンが私を放っておいてくれるはずがない。
「殿下がしょぼくれていましたよ」
「ひとりで帰るの、そんなに嫌なのかしら」
「殿下はただ、ローザ様と一緒にいたいだけですけどね」
「リヒターが私たちと同い年だったらよかったのにね。そしたらレオンも学園で友達がいなくて寂しい思いをしなくて済んだのに」
「ぶっ──!」
「──?何がおかしいの?」
「いえ、ローザ様には敵いませんね」
言い方がちょっと失礼だったかしら?正直、レオンがこの国の王太子だってこと、すぐ忘れちゃうのよね・・・。リヒターの前だからいいけど、王族への侮辱は状況によっては不敬罪に問われちゃうから、言葉には気をつけないとね。それがたとえ、深い愛ある侮辱だとしても!
と、ここでリヒターに聞くことがあったのを思い出した。
「ねえリヒター、ちょっと聞きたいんだけど」
「なんでしょうか、ローザ様」
「レオンの好きな女性のタイプって、知ってる?」
「ゴホッ──ゲハッ!!」
「え、なに、大丈夫!?」
何も飲み食いしていないのに盛大にむせるリヒター。まだそんな歳でもないくせに、大丈夫かこの人・・・?
「え、ええ、大丈夫です。失礼致しました。ただ、少し驚いたもので。ローザ様がまさか、そんなことを私にお尋ねになるとは思わず──」
「そうなの?でも、こういうことって本人に直接聞きづらいじゃない?まして、私たち一応は異性だし」
「(──ん?一応・・・?)」
「でもリヒターになら、レオンも同性にしか話せないようなことをちゃーんと話してるんでしょ!?」
「──ええ、まあ(あいつの話題は100%貴方のことですけどね)」
「それをね、こっそり教えて欲しいのよ!」
「・・・あの、理由を伺っても?」
私はリヒターに簡潔に説明した。つまり、彼はちゃんと恋愛をすべきなのだと。せっかくあんなに素敵なのに、私という婚約者がいるせいで、自由な恋愛ができないのはあまりに可哀想だと。そして私は彼のことを心の底から大切に思っているからこそ、彼が真実の愛に出会って誰よりも幸せになることを願っているのだと。
まあ、前世がどうとか悪役令嬢のくだりは割愛したけどね。さすがにあそこまでぶっちゃけた話はレオンにしか話せないから。
「ですがローザ様、もしそうなったら、貴方はこの婚約をどうなさるおつもりなのです?」
「そりゃもちろん、婚約破棄に同意してあげるわよ?だって、レオンの幸せが私の幸せだもの!」
「んん?・・・ひとつ確認ですが、あ、もちろん誰にも言いませんから、正直にお答えくださいね?あの、ローザ様は今、殿下のほかに意中の方がいらっしゃるのですか?」
「──へっ!?なんで?」
「なんでって、殿下との婚約破棄を望まれているということは、ほかに婚約なさりたい方がいらっしゃるのではないかと」
あー、たしかにそう思われてしまうか。でもそんな相手、いるわけないじゃないか!そもそもの出会いがないことは度外視しても、いつもそばにレオンというチートなハイスペ王太子がいて、甘やかしてくるんですよ?ほかの男なんて、すべて霞んで見えますって・・・。
「あのねリヒター、私は別に、レオンとの婚約を破棄したいからこんなこと言ってるんじゃないの。レオンのことが大好きだからこそ、物語のヒロインのような素晴らしい人に出会って、ちゃんとした恋をして、真実の愛で結ばれて、最高の幸せを手に入れてほしいの!わかった?」
「では、どうしてそのお相手が、ローザ様ご自身ではいけないのですか」
「私!?私じゃだめよ!だって私、まったくヒロインぽくないじゃないっ!」
「は??」
「つまり私は悪役れ・・・とにかくね!もっとかわいくって、優しくって、明るくって元気でね、誰もが好きになっちゃうような女の子じゃなきゃ、レオンには相応しくないのよ!」
最後までお読みくださりどうもありがとうございます!
最愛のローザの護衛をしばしばリヒターに任せていることから、レオンハルトのリヒターへの信頼がどれほどのものかがわかります。
明日も18時にアップ予定です。




