第10話 ヒロイン探し、協力してください!
「キスされて、嫌だと思った?気持ち悪い!とか生理的に無理っ!!とか」
「レオンにそんなこと思わないよ。私は正直レオンに何されても嫌じゃないもん。ただ、すごく驚いただけ。だって、私のなかではキスは恋人同士でするものであって、兄妹で冗談でするようなものって認識じゃなかったから・・・」
気持ち悪いとか、そんなことを彼に思うはずない。レオンは最高にかっこいいし、こんなに見慣れていても不意にうっとり見惚れちゃうくらい、素敵な男性だ。それに性格だってすごく優しい。そんな人にキスされたら、勘違いする可能性こそあれど、嫌悪感なんて・・・。
ときどき思う。もし自分がうっかり彼に恋をしていたら、やばかっただろうなと。顔を見るだけでもおかしくなっちゃって、平常心で一緒に過ごせないんだろうなあと。まあ私は妹立ち位置だから、ぜーんぜん平気だけどね!
「・・・でも、彼もそんな認識ではキスしないんじゃない?」
「へっ?どういうこと?」
「貴方たちは婚約者同士なのよ?兄から妹へみたいなそんな特殊な親愛の情からじゃなくて、彼が貴方のことを一人の女性として好きだからキスしたって、なんでそういう自然な発想にはならないわけ!?」
「そりゃあ、私のことは好いてくれてると思うわよ?私もレオンのこと、誰にも負けないくらい大好きだし!でも、さっきも言ったけどその好きは本当に家族とか兄妹みたいな・・・」
「殿下が、貴方を恋愛的な意味で好きじゃないって、どうしてそう思うのよ?」
「だって、ありえないもの!」
「ねえ、ローザって本当の兄弟っている?」
「え?いないけど」
「──あのね、兄と弟をもつ友人として教えといてあげるけど、冗談でも兄弟からそんなふうにキスされたら、嫌悪感しかないからね?ってか、私なら即コロス」
「・・・リリアナ?」
「それに、そもそも兄弟と四六時中一緒にいるとか、本っ当に耐えられないから!!うちで食事のときくらいしか顔を合わせなくても無性にムカつくくらいなもんよ!兄弟なんてっ!!」
それは、リリアナの家が特殊なのでは・・・?とは言えない。
「少なくともね、昨日と今日の貴方たち2人のやりとりを見ていて、あれを兄妹の戯れと思う人はいないわよ!?どこからどう見ても、バカップル!」
バ・・・!?
「ちょ──ちょっと、それ本当なの!?それじゃあ困るのよ!」
「どうして困るの?貴方たちはすでに婚約者同士なんだから、なんの問題もないじゃない!風紀的な意味で先生に目をつけられる可能性はゼロじゃないけど、未来の国王と王妃にそんな野暮なことわざわざ言わないと思うけど?王と王妃が仲睦まじいと、それだけで国の安定につながるんだから」
いやいや大袈裟な・・・っていうか、本当にバカップルってなに!?やっぱりレオンが変なことばっかりするから、誤解されちゃったんじゃないの!?(今朝は私もへんなパフォーマンスしちゃったけども!)
はあ・・・。私がしたいのは、ヒロイン探しなのに。レオンに本当に相応しいヒロインを見つけて、私がうまくかき回しつつ、レオンには幸せになってもらわなきゃいけないの!それなのに、どうしてこう、上手くいかないんだろう。
「そんなに否定するってことは、もしかしてローザ、ほかに好きな人でもいるの?」
「え?そんなのいないけど」
「じゃあ、なんで殿下じゃだめなの!?」
「だめとかだめじゃないとか、そういうんじゃないんだってば。私は、レオンがいつか本当に愛する人に出会って、ちゃんと恋愛をして、誰よりも幸せになってくれることを心から願ってるの。だから、惰性で私とばっかり一緒にいるんじゃだめなのよ!──あっ、そうだ!リリアナも協力してくれない?レオンは人見知りだから、ある程度のお膳立てが必要だと思うのよね・・・」
さすがに、自分が悪役令嬢を演じて恋の炎を燃え上がらせるガソリンになるつもりだとは言えないけど、リリアナは信頼できそうだし、私よりはるかに情報通っぽいから、助けになってもらえたら絶対助かると思うんだよね!
「まさか、昨日貴方がクラスでいちばんかわいい子だれか聞いてきたのって、それと関係ある?」
「あ、バレちゃった?ふふっ!運命の出会いって、意外と近くにあるかもしれないじゃない!」
「ローザ、貴方ってめちゃくちゃズレてるわよね?」
「・・・ズレてる?」
「うん。たぶん、貴方のしようとしていることは逆効果よ?貴方が頑張れば頑張るほど、貴方自身が苦労することになるわ、絶対」
「多少の苦労は、覚悟の上よ!ねっ!だから、私に協力してくれない!?」
「私、殿下に恨まれたくない・・・」
「恨まれないわよ!むしろ、レオンにめちゃくちゃ感謝されることになるわ!」
「まあそうかもね・・・(貴方の暴走を私が止めてあげれば、)殿下にも感謝されるかも。──いいわ、協力してあげる!」
「わあ!どうもありがとう!リリアナ、貴方が協力してくれるなら、とっても心強いわ!」
「いいってことよ!(まあ、貴方の思ってる協力とは、ちょっと違うけど──我が国の王室安定の為だから許してね、ローザ)」
学園生活最初のティータイムは、今後の頼もしい味方を得るという素晴らしい成果をあげて、無事終了した。
最後までお読みくださりどうもありがとうございます!
リリアナは頼りになる友人です。
明日も18時にアップ予定です。




