第17章 相応しく、あるために 〜楓サイド〜
やっと、同じ土俵に立てる。
楓は、理沙のいる会社に入ることを目標に、精力的に準備をした。
会社が発行している雑誌はもちろん、ライバル紙も片っ端から読み漁り、ここ数年の潮流、変化を分析し、結局はそれを卒業論文の題材にしたほどだ。
その成果か、モデルとして業界の事情もある程度分かっている事が良かったのか、無事内定をもらった。
ようやく憧れの人に会える。
理沙に会えたのは、1ヶ月の研修を受けて希望していた企画部に配属されてからだ。
企画部とはいっても、理沙は第2企画部で楓は第1企画部。
しかも予算枠を争うライバル関係にあるため、あまり交流がないのが残念だった。
その分、同じ部屋にいなくてもすぐに理沙の情報は楓の耳に入ってくる。
「三崎にしてやられた」
「ようやく三崎に勝った」
だいたい企画会議の後の先輩達の会話は、いつも決まって理沙の話題だ。
まるで第2企画部には理沙しかいないみたいに。
そうか。
企画が通るようになったら会議にも出れるし、話題に上るようになれば意識してもらえるんだ。
楓は、部の誰よりも多く企画書を提出し、部内でも積極的に発言した。
卒業論文を書く際の資料を洗い直して、企画会議に出るまでになったが、そこで理沙の圧倒的な存在感と人気ぶりを目にする。
理沙は男女を問わずモテモテだった。
特に年下社員は一人残らず理沙を憧憬の目で見ているし、理沙もカッコいい歳上女性の鑑のような振る舞いで、メロメロにしている。
さすがに社内恋愛をしているようには見えないけれど、それでも中には本気な人もいるだろう。
撮影のスタジオに入れば、カメラマンやモデルからの受けも良くて、特に歳下の可愛い系に対しては、男子でも女子でも理沙は甘い対応をしている。
三崎さんのタイプは、可愛い系なのか。
自分とは正反対のタイプ。
このままだと理沙に気づいてもらえない。
楓は、会議でわざと理沙を挑発し始めた。
歳下から好意的に見られることに慣れた理沙にとって、屈辱だったのかもしれない。
普段のクールでカッコいい理沙からは思いもよらないほど、楓にはムキになってくる。
なんて可愛いのか。
理沙のことを知れば知るほど、楓は自分が愛したい、甘やかしたいという気持ちが膨らむのを抑えきれなかった。
あなたに頼ってもらえる、相応しい人になってみせます。
楓は、あの撮影の時のように、理沙に腕を回して包み込める人間になろうと心に誓った。




