第13章 突然の連絡
なんて無様なんだろう。
情熱的で、身体の芯まで蕩けそうだった楓のキスを思い出して、理沙は身悶えする。
すぐに拒めなかった。
これまで多くの子達とキスやそれ以上の事もしてきたのに。
初めてだった。
理沙の全てを奪うような激しくて甘い、麻薬のようなキス。
相手がいるくせに、あんなキスをしてくるなんて。
気持ちがなくても出来るということ?
軽い女に見られた?
楓の瞳に宿った、心から理沙を求めるような熱っぽさを本物だと思いたかった。
これ以上嫌いになんてなりたくないのに。
どうして。
理沙は悔しさと、裏切られたような悲しみで、頬を涙で濡らした。
楓なんて、二度と顔も見たくない。
塞ぎ込んでいると、突如携帯の着信音が響き渡る。
誰とも話したい気分ではなかったけれど、着信音が鳴り止まないので、理沙はノロノロと携帯の置いてあるカバンに手を伸ばした。
携帯の画面を見ると、高校時代の親友、恵那からだった。
ここ最近プロジェクトで忙しく会えていなかったから、ほぼ2ヶ月ぶりだ。
「もしもし」
「あ、理沙?久しぶりだね。今、大丈夫?」
「うん」
泣いていたのを悟られないように、短く返す。
「理沙、どうした?」
「何でもないよ」
「何でもない事ない。理沙が泣いてるなんて珍しいもん」
恵那は、普段はポワンとしてるのに、ここぞという時には昔から鋭かった。
「はあ。やっぱ恵那には隠せないね」
「今家だよね。これからそっち行くから」
「え?もう遅いからいいよ」
「だーめ。そんな状態の理沙一人にしておけない。今から行くから」
「ダメだって。私、あいつに殺されたくないし」
「奏のこと?奏なら今出張中でいないし、そんな心狭くないよ。とにかく待ってて」
そう言うと理沙の返事を待たずに、恵那は電話を切った。
はあ。
ああ見えて意外と頑固なのも変わらないなあ。
でも、ああいう友達思いの彼女だから好きになったんだ。
理沙の、初めてで唯一の本気の恋の相手。
楓のせいで落ち込んでいた気分に、すっと一筋の光が差し込んだ。




