出会い
私の名前は、点P。
今日も何処かで動き続けている。誰になんと言われようとも動き続けるのだ。
よく耳にする言葉はいつも同じだ。
「なんでいちいち動くんだよー」
「お前は、止まっとけよ」
「またお前かよ」
私はこの言葉を聞くたびに、傷つくのだ。
しかし、今日は違った。
私にとっても救世主とも言える男が現れたのだ。その名も、佐藤ソウタだ。
彼との出会いは、突然やってきた。
「オレ今日の数学のテスト満点だぜ」
「やっぱすごいよな~ソウタは」
「何言ってるんだよ、リョウタもあれくらいできるって」
ソウタと話しているのは、同学年の橋巻リョウタだ。勉強は、ソウタに劣っているが食欲と性欲は誰にも負けていない。
「何よりオレの得意分野の[点P]の問題が出たからな」
「あれは難しすぎたよ、今度オレに教えてくれよ」
「いいぜ!じゃあまた明日な」
2人はお互い別れを告げ、帰宅した。
家に帰って直ぐに机に向かい、今日のテストと答案を取り出した。
「おーーーい!おーーーい!聞こえないのか~」
「ん?」
「ここだよーここ、ここ」
声のする場所を必死に探す。
「何で気づかないんだよ」
頭の中は、一瞬にして真っ白になった。自分のテストに描かれている[点P]が自分に向かって話しかけている被現実的な光景を受け止めることが出来なかったのだ。
「お前がさっきからオレに話しかけていたのか?」
声は震えていた。
「そうだよ、やっと見つけたんだよ・・・お前みたいなヤツを・・・」
急にテストが濡れだした。とっさに近くに置いてあったポケットティッシュを取り出し、水気を無くした。
「お前、泣いているのか?なんかあったのか?」
意味がわからない。なぜ、オレはいまテストの中の問と話しているのか。真っ白になった頭の中は幼稚園児がクレヨンで描く絵画のようにぐちゃぐちゃになっていた。
「今まで差別されてきた。ボクを得意だと言ってくれる人は君が初めてだよ。」
数時間前の出来事を一瞬にして思い出した。リョウタと話をしている時にオレはバッグを持っていた。その中にはもちろんテストと満点の答案用紙が入っていた。
鏡を見ると青ざめた表情の自分が写っていた。