第三話・月桂樹の眠り姫(3)
今回も2話連続投稿致します!
よろしくお願い致します!
『……きゃわーんっ! おいしそーっ!』
『……すごい。これは全部フィトが作ったのですか?』
ポケットブックから出したフィト特製サンドイッチを前に、目をキラキラさせるルルディとゼフィランサス。
そんな精霊たちの声を聞いて「そうだよ! これはぜ~んぶフィトが作ったんだよ!」と、エッヘンドヤ顔でリオンは言い放つ。
そんな弟の隣で「何でお前がしゃしゃってんだよ」と、レオンはすかさず突っ込んだ。
『……ステキッ! んでんで、これは何が入っちゃってんの!?』
「これはね、ハコベとスモークサーモンのサンドイッチで……こっちがクローバーとタマゴのサンドイッチだよ!」
そう言って、フィトがバスケットからサンドイッチを取り出すと――『……いい香りね~。野草をたくさん使っているのね~』と、今度は別の意味でよだれをたらしたダフネが、それをじっと覗き込む。
『……ダフネ様。いつの間に起きたんですか』
『……腹が減っては、昼寝も出来ないじゃない~?』
『……偉人の言葉を勝手に変えて使わないでください。ルルディが真似しますよ』
『……んなっ!? いくらアタイでも、そんな頭悪そうなこと言わないってば!』
樹の精霊たちがそんな風にやいのやいのしていると――「僕お腹減っちゃったから、食べちゃうよ! フィトのサンドイッチを一番に食べるのは僕だもんね!」と、サンドイッチを手に取りパクリと口に運んだ。
「んん~! 美味しいなぁ! 野草ふわっふわ!」
「てめーリオン、ずりーぞ! 俺も食う!」
兄弟が小競り合いしながらガツガツとサンドイッチを食べるのを見て「おいしいならよかった! 精霊さんたちも、どうぞ食べてくださいね! いっぱいありますから!」と、フィトは笑顔で言う。
『……じゃぁ~』
『……お言葉に甘えて』
『……いっただっきまーっす!』
三人の精霊たちは顔を見合わせてもじもじとそう言うと、美味しそうにサンドイッチを食べ始める。
樹の祭壇は来るまでの道のりがかなり大変なことから、参拝客がとても少ないという事や、いつもは果物や木の実を食べて暮らしているなどを樹の精霊たちは話す。
その為、お供え物やこういった手作りの料理はとても嬉しいのだとか――。はしたなくもサンドイッチを両手に持って嬉しそうに頬張るルルディが教えてくれた。
談笑をしながらの昼食を終え、面々は紅茶を口にしながらくつろぐ――。
『……はわわ~。お腹がいっぱいになったら、なんだか眠くなって来ちゃったわぁ~』
『……ダフネ様は万年眠いじゃないですか。いちいち都合の良い言葉を使わないで下さい』
『……ほんと、ゼフィランサスはお母さんよね~。うふふ~私が一番お姉さんなのに~』
そんな事を話しながら、草花の絨毯で寝転がるダフネ。
精霊たちの会話を聞いて「姉妹って言うだけあって、順番が決まってんのな。ダフネ様の次は誰が上なんだ?」と、レオン。
『……ダフネ様の次は私です。ルルディが末っ子ですね』
「あ、そこは裏切らない順番なんだ」
『……犬弟君ってば、ずいぶんと含みのある言い方してくれるじゃぁーないのっ!』
『……ルルディは一番落ち着きがないですからね』
『……んなぁっ!? 産まれた瞬間は皆一緒だしっ! 目を開けたのが一番遅かっただけだもんっ!』
「へぇぇー! そうやって順番が決まるんだねっ!? おもしろい決め方だねっ!」
『……ちぇ~っ。一番最初に目を開けてたら、今頃は大精霊になってふんぞり返ってたのにぃ!』
そんな会話をして笑いながら、フィトはダフネの隣に一緒になって寝転ぶ。
遺跡の天井は、樹の幹が伸びた際に半壊してしまっているため、突き抜けた青空が見えた。生い茂った木々の間から木漏れ日がキラキラと漏れて、まぶしくもあったかくて心地よい。
「ふわぁ~……私も眠くなって来ちゃったぁ……」
『一緒にお昼寝しましょうか~。この月桂樹の樹の下は、とっても気持ちが良いのよ~』
「この木、月桂樹なんですね! すっごくおっきなりっぱな木!」
『うふふ~、何だか早口言葉みたいねぇ~。……この月桂樹は特別なのよ~。精霊石を護ってくれている事と引き換えに、豊富なマナのおかげでいつまでも枯れる事がないの~。かつては、世界樹とも呼ばれていたわねぇ~』
「世界樹……?」
『そうよぉ。永遠の命を与えられし息吹き続ける巨木――かつては世界の中心だった、世界樹。……今はもう、樹の祭壇を私たちと共に護る役目しか残されてはいないけどねぇ~』
遠い目をして話すダフネに、フィトはそれ以上何かを言おうとはしなかった。よく分からないが――表情を変えずに笑っているダフネから、踏み込んではいけないオーラのような、雰囲気のようなものを感じたのだ。
そんな事を思うフィトの近くで、レオンとリオンはスヤスヤと眠ってしまっている。慣れない登山できっと疲れたのだろう。
それに――いつの間にか、ゼフィランサスとルルディの姿が見当たらない。二人を気にして「ゼフィランサスとルルディは、どこに行っちゃったのかな……?」と、辺りを見回すフィト。
『……あの二人は、見回りに行ってくれてるのよ~。奴ら、という敵となるものが明確になったからねぇ~、警戒してくれているのよ~。ゼフィランサスはもちろん、ルルディもあぁ見えてお仕事には真面目なのよぉ』
「そうなんですね! じゃぁ私も起きてた方がいいよねっ! ダフネ様、ボディーガーディアンしなきゃ!」
『……フィトちゃん、それを言うならボディーガード……じゃないかしら~?』
「あ! そっか、ボディーガードだ! ちょっと間違えちゃった!」
『……フィトちゃんはおちゃめさんね~。う~ん、でも、ボディーガーディアンでも間違ってはいないのかしら~? 番人と守護者が集まってるんだものね~。うふふ~まぁいいわぁ、フィトちゃんも少し、おやすみしなさいな~』
ダフネにそう言われるも、フィトは「むんっ!」と気張って眠ろうとしなかった。
そんな黒髪少女を見てくすりと笑い――『……ふぅ』と、ダフネが息を吹く。すると――ほわほわと甘い香りが漂い、フィトはこてんと眠りの世界へ落ちてしまうのであった――。




