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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第三話・月桂樹の眠り姫(1)

 なぞなぞの関門をクリアし、フラワーシャワーに包まれる一行。

 その目の前に――花とともにふわりと、なぞなぞの出題者である樹の精霊――ルルディが姿を現した。


 たくさんの花が咲く編み下ろしたミントグリーンの長い髪に、ゼフィランサスと同様の桃色の瞳――。白くて長い民族柄の衣服の裾をつまみながら、ルルディはぺこりと三人に一礼をした。

 しかし。品の良い美しい姿を見せたのもつかの間――。ルルディは謎のアイドルチックポーズを取り、右目をパチンとしながら『……てへッ☆』と裏ピースサインをかましてみせた。



『……ようこそ、樹の祭壇へ! まずは、なぞなぞの全問正解おめでとうござぁいまっす! アタイが二人目の樹の精霊――ルルディでっす! どーぞヨロシクねん!』



 ルルディの自己紹介をポカンとした顔で見ていた三人――。

 アイドルかぶれな彼女の一連の動作を気にする事なく『……この子がなぞなぞの出題者、ルルディです』と、再度説明と紹介をしてくれるゼフィランサス。

 ルルディのこのノリは、どうやらいつもの事のようだ。ハイテンションキャラはなぞなぞの出題時に限らず、常時あのままとのこと。

 三人とゼフィランサスのやりとりは始終見て聞いていたそうで、事情と素性を調べ尽くした上でなぞなぞ遊びを仕掛けてきたらしい。

 にぱにぱと笑うルルディを加え、一行は樹の祭壇へと続く建造物の入り口へ進んでいく――。




 ***




 短いトンネルのような建造物内部を抜けると――そこには、丸い空間が作り出す光あふれる樹の祭壇が存在していた。

 円を描くように遺跡の建造物に囲まれたその庭園の中央には、巨大な一本の樹が生えていた。桜桃色の精霊石を護るように包み込んだその姿が、悠久の時を感じさせる――。

 そんな中――。精霊石を包む巨木の前で、眠っている少女の姿が見えた。美しい花々に囲まれ、小鳥のさえずりと木漏れ日の中で眠る少女――。

 気持ちよさそうに昼寝をしているだけなのだが、それだけでも絵になるほどに眩しく美しい。三人は一目見て、この少女が樹の大精霊――ダフネであるという事を確信してしまった。



『……あそこにいるのが樹の大精霊――ダフネ様です』

『……またお昼寝しちゃってるよ、うちの姫さんはぁ~』



 ルルディの発言を聞いて「「「姫……?」」」と、首を傾げる三人。

 不思議そうな表情の三人を見て『……うちのダフネ様は、精霊界隈で眠り姫と呼ばれているんです』と、ため息交じりにゼフィランサス。



『……日がな一日、こうして日向ぼっこと(しょう)して眠りこけているのですよ。……まぁ、私たち樹の精霊は樹のマナを生成する為に光合成をする必要があるのですが……いつでもどこでもうとうとされているので、もうあれはナマケモノと同類ですね。むしろ生態系的に真っ当な暮らしをしているナマケモノに失礼でしょうか』

「ダフネ様って、なんか可愛いかも……!」

『……フィトっち、それマジで言ってるの~!? なんかウケる!』

「ねぇ、この精霊さん大丈夫? どんどんキャラが可笑しくなってるんだけど……」

『……問題ありませんよ。それがこの子の素ですから』



 ケタケタと笑うルルディを気に留めることなく、ゼフィランサスは一行を引き連れてダフネのもとへ歩み寄る。

 そして――どこからか花形のメガホンを取り出し『……ダフネ様! 客人です! 起きて下さいッッ!』と、耳が痛くなるくらい大きな声をダフネの耳元で張り上げた。



『……あふぅ……なぁ~に~? おきゃくさん~……?』

『……そうです、お客様ですよ。はるばる冥界からやって来られたそうです』

『……あらそう~。冥界だなんて、ずいぶん遠くから来たのねぇ~……?』



 聞いているこっちまで眠くなってしまいそうなスロートーク。冥界の話しを聞いても取り乱さない辺り、かなりの大物かもしれない。

 ダフネはゆっくりと身体を起こすと、伸びをしながらふらふらと立ち上がった。相変わらず眠気から覚めないようで、目をこしこしとこすっている。


 やっと開いた桃色の瞳には――真紅の花形が入り、とろんとした力ない目からも強力な魔力が漂う。

 光を乱反射し色を変えるウェーブの長い髪は小さな花が咲き乱れ、毛先にいくにつれて髪色が菜の花色から若菜色(わかないろ)へとグラデーションのように変化している。

 草花を思わせるふんわりとした色合いの衣服には、真ん中あたりにおおきな花文様(はなもんよう)が入った腰布がついていた。

 昼寝でずれてしまった花冠をちょいちょいと直し『……初めまして~。私が樹の大精霊ダフネです~』と、にこやかに大精霊は自己紹介をする。



「初めまして、私は人間の……」

『……フィトちゃん、ね~?』



 フィトが名乗ろうとすると、それを遮って名前を口にするダフネ。

 初対面のはずなのになぜ? と、フィトが口をぱくぱくさせていると――。



『……ゼフィランサスに聞いたでしょ~? 私たちはね、()()()()なのよぉ~。離れていても、お互いの見たもの、聞いたものを共有して感じる事ができるの~。うふふ~すごいでしょ~?』

「確かに、それは驚いたな。土の精霊たちにはそんな力はなかったぜ?」

『……私たちは姉妹なのです。先ほどご説明した通り、ひとつの植物のように生命を共にする存在ですから』

「へえぇ~! 精霊にも姉妹なんて概念(がいねん)があるの!?」

『……人間や怪物と違って、互いの存在を血の繋がりで姉妹と位置付けている訳ではありません。我々は生まれながらにして姉妹なのです。樹の精霊は代々そのように存在している生命体なのですよ』



 ゼフィランサスの説明を聞いてふむふむ、と頷くレオンとリオン。頭では概念は理解できるような気もするが、いまいちピンと来ない話である。

 特にフィトは「一緒に産まれて同時に産まれて、ずっと一緒な姉妹……?」と、なんとか頭を整理しようとぐるぐる考えていた。



『……ま~たゼフィランサスは小難しく説明するんだからぁ。ほらほらっ、アタイたちのことよぉーく見てみてよっ! よく似てるっしょ?』



 ルルディにそう言われて、樹の精霊三人をまじまじと見比べると――。



「あっ! 似てるねっ!? 目の色も髪の色も同じだし、とってもよく似てるっ!」

「言われてみれば似てるかもな。むしろ、俺たち兄弟より似てるんじゃね?」

「そうかも! 精霊の概念って、なんか変わってて面白いねぇ~」



 ――と、三人は口々に納得した感想をもらした。

 話が落ち着いた所で『……ここまで来るのに苦労したでしょう~? 立ち話も難ですから、お茶でもしましょうか~』と、ダフネは草花が絡みついた大きな杖を一振り――。

 すると――あら不思議。庭園に素敵なお茶会セットが現れたのだった――。

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