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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第二話・樹の守護者(4)

『ではでは――第二問! 花束に出来ない花って、なぁ~に?』



 二問目のなぞなぞを聞いて、またしても考え込む三人。

 そんな面々を見て楽しそうにゼフィランサスはくすりと微笑む――。



「花束に出来ない……」

「花……?」



 レオンとリオンは顔を見合わせ、首を傾げる。全くもって分からない様子。

 しゃーねぇから、最近覚えた花の名前でも答えてみるか……と、レオンは『答えは――プルメリア!』と、発言する。

 しかし――。虚しくも『……ブブー!』という音が鳴り響く。



「かーっ! やっぱテキトーに答えてもダメかぁ」

「兄さん、そりゃそうでしょ。当てずっぽうもいいとこだよ」

「数打ち作戦なんだから答えねぇよかマシだろ」

「まぁ、そうだけどさ……何事も見極めが大事だよ」

「それ、師匠の言葉じゃねーか」

「たはは、受け売りってやつ~」



 そんな風に犬耳兄弟が雑談している中――「花束に出来ないって、どういうこと……? どういう意味……?」と、悩んでいるフィトが独り言をぽつぽつとこぼす。



「集められないって事は、触れないって事か?」

「触ったら痛いとか……毒があるとか?」



 フィトのつぶやきを聞いて、一緒に考え始めるレオンとリオン。

 答えに結び付きそうにない方向に考え出す面々を見かねて、傍観(ぼうかん)していたゼフィランサスは閉ざしていた口を開く――。



『……皆様。そもそも、()()()()()()()……というものを御分りですか?』

「「「なぞなぞの……定義?」」」

『……はい。なぞなぞはなぞなぞであって、クイズではないのです』



 意味深なゼフィランサスの言葉に「えっと……それは、どういうことですか?」と、難しい顔で聞き返すフィト。



『……クイズというのは、事実に即した知識を問うもの。簡単に言えば、実際に存在している事実に対して、それが何かという問いに答えるという――知識力テストのようなものなのです。……それに対して、なぞなぞというのは頭の柔らかさを試すもの。結論を言うと、実際には有り得ない事柄を言葉巧みに使って頭を捻らせるような問いかけをする――それがなぞなぞです』



 そこまで言うと『……これはあくまでヒントではなく、なぞなぞに関するアドバイスに過ぎません。なぞなぞの最大の特徴は、問題の中に答えが隠されている……という事ですね』と、ゼフィランサスは話を終える。

 樹の上から話を聞いていたルルディは『……うーん! ヒントは与えないスタンスなんだけどなぁ! アドバイスってんなら、まぁいいか!』と独り言をこぼし、仕方なくその様子を見守る。



「なるほどねぇ。知識を試す系の問題じゃないから、さっき僕たちが考えてた答えの方向には正解はないって事だね」

「ああ。問題の中に答えが隠れてるんだもんな。問題をよく読み解けば答えが出るってわけだ」

「もっかいイチから考えよ! ……花束に出来ない花でしょう? それって、束ねられないってこと?」

「なぞなぞは言葉遊びでしょ? 束ねられないって事は、散らばるとか……ばらける……?」

「ばらける……バラバラ……?」



 そこまで口にすると、三人は顔を見合ってはっとする。そして――「「「答えは――バラ!」」」と、声を合わせて答えを叫んだ。

 程なくして『……ピンポンピンポーン!』と、正解音が遺跡に鳴り響く――。三人は正解したことに大はしゃぎだ。満面の笑みで全員浮足立っている――。



「やったね! 正解だよーっ!」

「正解を答えられるってのは、やっぱ嬉しいモンだな!」

「だね! 僕たちもバラくらいは知ってるもんね~!」

『……ゴホン! 正解おめでとうございます! 答えは――薔薇バラ! 大正解でっす! ……でもでも、まだ終わってはいませんよーっ! 最後のなぞなぞを出します! 準備はいいですかぁ!?』



 テンション高々な三人にそう声をかけるルルディ。

 一行は顔を見合わせると「ああ! いつでも来い!」「どんな問題でも解いてみせるさ!」「みんなで力を合わせれば、大丈夫っ!」と、声をそろえて答える。

 三人の意気込みを聞いて『……そう来なくっちゃ!』と、ルルディもウキウキしながら息を吸い込んだ――。



『……それでは――第三問! 答えが九になる花って、な~んだ!』



 最終問第というだけに、何やら複雑そうな問いかけに聞こえる。

 黙り込んで考えるフィトがふいに「きゅうこん……は花じゃないかぁ」などと口走り、あごに手を当てた。



「答えが九になるって言ってるくらいだから、数字に関する名前なんだろーな」

「数字に関連したお花ってたくさんあるけど、それを全部答えてたらキリがなさそうだよね。私も全部のお花の名前を知ってるわけじゃないからなぁ……」

「九って字が入る名前の花はないの?」

「えっとね……九蓋草(くがいそう)!」

『……ブブー!』

「じゃあ……九輪草(くりんそう)!」

『……ブブー!』



 連続で答えるも当たらず「もう九ってつくお花は、他にないよぉ」と、フィトは頭を抱える。



「そもそも、答えが九になる……ってことだから、名前に数字のつく花を言った所で正解には結びつかなそうじゃねーか?」

「うう~ん、そうだねぇ。じゃぁさ……なんかこう、計算とかしちゃったりして……」



 リオンが何気なく言った言葉を聞いて「そうか! それだ! 答えが九って事は、計算したら九が出てくるんだよ!」と、レオンは閃いたように声を大きくして言う。



「計算したら、九になる……?」

「ああ、そうだ。足し算、引き算、掛け算、割り算――。その中でも手っ取り早く、尚且(なおか)つ簡単に、答えに直結するような語呂(ごろ)になるもの――。こういう事だと思うんだけど……でも、そんな名前の花ってあんのか……?」

「なんだろうねぇ……いちたすいちは、たんぼのた~的な軽い答えだと思うんだけどねぇ……」



 何かが出そうな所で、またも行き詰ってしまう。

 名前が出て来ないレオンとリオンにとって、悔しいがこの先はもうフィト頼みなのだ。他に何かヒントはないのかと、全員が頭をフル回転させて考えたその時――。



「さざんが……く」



 フィトがそう、ぽつりとこぼした言葉。少女は自分で口にした言葉で、答えを確信した。

 ハンマーで頭を叩かれたような、知らない何かが見えるような、頭の中でブワッと世界が開けるような感覚――。ついに、解けた――。

 フィトは激しく脈打つ鼓動を抑えながら、その一言を答える――。



「答えは――さざんか!」



 フィトの答えを聞いて、ひとしきりの沈黙――。

 それが破られて耳に入って来た音は――『……ピンポンピンポーン!』という、軽快な正解の音だった――。



「い……やったああああああッ! フィト、よくやった!」

「フィト~! フィトぉ~! ほんっとにすごいよぉ! よく答えられたねえぇ!」

「はふぅ……! 正解出来てよかったぁ……!」



 喜びに踊る三人が大騒ぎしていると『……おめでとうございまぁぁす! 答えは――山茶花さざんかでしたっ! 見事! 全問正解でぇぃーっす!』と、歓喜の声と共にまるで優勝パレードのような音楽が辺りに流れ出した。

 空からは花が降り注ぎ、サルやリスなどの動物たちがまわりで小躍りしている。なぞなぞに正解しただけで森の仲間たち総出で、こんなにも盛大に祝ってもらえるとは――樹の精霊パワーおそるべし。


 浮かれた気持ちを抑えてフィトは照れくさそうに――「私がすごいわけじゃないよ。レオンとリオンがたくさん考えて答えのヒントをくれたから答えられたんだよ。ふたりのおかげ、ありがとう!」と、とびきりの笑顔でふたりにこう話す。

 こんな時まで謙虚(けんきょ)な少女に感心しながら、美しい色とりどりのフラワーシャワーにしばらく包まれていたいと、兄弟はそう思うのであった――。

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