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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第二話・樹の守護者(1)

祝☆30万文字突破!いつもありがとうございます!(今度こそ!笑)

 ローレル山脈の頂上――樹の祭壇へと続く(こけ)の生えた広い石段は、蹴上(けあ)げが低い緩やかな造りになっていた。

 しかし――段が低いという事は、そのぶん段数が多くなるのだ。悪く言えば、小刻みに足を運ばねばならない窮屈(きゅうくつ)な道のりなのである。

 木々に囲まれた階段をやっとの思いで上り切った三人は、糸の切れた操り人形のようにその場にどさっと座り込む。



「つ、ついたぁぁぁーっ!」

「はぁ~……やっと着いたねぇ……! 僕、もう一歩も動けないよぉ……」

「つ、疲れた……最後の最後に、これはキツかったよなぁ……。二人とも、よく頑張ったな」



 疲れ切った三人の目の前には――まるで階段を上がってきた者を出迎えるように立派な門がたっていた。古びた遺跡のような建造物のまわりには樹木(じゅもく)が生い茂り、そこからこぼれ落ちた光がいくつもの筋となって降り注ぐ――。

 (ひたい)(にじ)む汗を拭いながら「……この先が樹の祭壇で間違いなさそうだな」と、レオンはつぶやいた。



「……さ、ここからが本番なんだぜ。息が整ったら先に進むぞ」

「わかってるよぉ。はぁ~……しばらく階段は見たくないなぁ……」

「あはは、そうだね! よっこらしょっと……」



 そう言ってフィトが立ち上がろうとした時――、レオンとリオンの犬耳が同時にピクッと動いた。

 何かに気付いたふたりは顔を見合わせると、互いに頷き合う。



「……近くに何かいるな」

「えっ? 何かって、なぁに……?」

「わかんないけど……人間や怪物の気配ではない事は確かだね」



 リオンの言葉を聞いて「人じゃない……? それって、もしかして……」と、フィトが口にすると――。ガサガサと背後の茂みから草木をかき分ける音が聞こえてきて、三人はいっせいにそっちを振り向いた。

 そこにいたのは――手足に鋭い鉤爪(かぎづめ)をもつ巨獣だった。毛むくじゃらな大きな身体に、太く短い肢体。その生き物は三人の姿を見て、のそのそとこちらに近付いて来る――。



「くくくくまさんっ……!? どうしよう、本当に出ちゃった!?」

「フィト、大丈夫。落ち着いて。僕たちが何とかするから安心してね」

「ええ!? だって、相手は熊だよ!?」

「俺たちは怪物だ。熊なんぞに負けねぇから心配すんなって」

「それ……逆に弱いものいじめにならないかなぁ……? それに、住処(すみか)に入って来たのは私たちの方だし……。ねぇ、くまさんとはお話しできないの?」

「う~ん。残念ながら、難しいかなぁ~。熊語は(たしな)んでないからねぇ~」

「そういうこった。なーに、傷付けやしねーよ。ちっと驚かせて森に帰ってもらうだけだ」



 レオンはそう言うと、手に槍を構えて熊の方へ突っ走って行く。

 心配そうにレオンを見守るフィトの肩に手を置き、リオンは余裕を感じさせる笑顔でその様子を見つめた。

 レオンと熊が至近距離になった時――。近付いてきたレオンの気迫に驚いた熊は「グオオオォォォ!」と低い(うな)り声を上げ、威嚇(いかく)を示した。

 しかし――。熊が逃げ出す様子はない。こりゃどうしたもんかと、レオンが槍を握る手に力を込めると――。森のざわめきと共に『……お待ちなさい!』と、どこからか甲高い声が森の中に響き渡った――。


 その声が耳に入ったレオンは、思わず身を引いて熊と距離を取る。警戒しつつ辺りを見回すも、不思議なことに声を発した人物の姿を確認することが出来ない。

 すると――。レオンの前にいた熊はあろうことか、レオンを無視してそのままどこかに歩いて行ってしまった。どうやら熊は、三人に襲い掛かってくるつもりではなかったようだ。

 そして――。熊が行ってしまった視線の先――、先ほどまで影すら確認できなかった声の主がその姿を現した。



「くまさん……行っちゃったね……? それに、いまの声って……」

「僕たちを取って食うわけじゃなかったみたいだねぇ~。ほら、今度はお迎えがお出ましかな?」



 そう言ってリオンが指さす方を見ると――遺跡の門をくぐってレオンの所に歩いてきた女性がフィトの目に映る。「僕たちも行こう」というリオンの声に少女は頷くと、二人はレオンのもとへと駆け寄った。




 ***




 遺跡の門から現れた女性は、緑を基調とした民族柄の衣服をやわく揺らしながらレオンの前に立ちはだかった。

 大きな丸眼鏡に、やなぎ色をした肩までの真ん中分けの髪。その左右に、白い花が女性の神秘的な美しさを際立たせるように飾られている。その端麗な顔立ちは、無表情のままレオンを凝視する――。

 対峙する二人のもとに駆け付けたリオンとフィトは、その様子を後ろから伺う。



「あんたは……」

『……私は、この樹の祭壇を護る者。精霊……と言えば伝わりますか? 怪物さん?』

「その姿を見れば分かるよ。まぁ、互いに姿も見えてるわけだし……()()()()()()()()()()のは分かるだろ?」

『……そうですね。申し遅れました、私は樹の精霊――ゼフィランサスと申します。早い話しをすると、森を荒らしに来たのならお帰り下さいませ。怪物がどうやって地上に渡り、ここに辿り着いたのかは存じませんが……目的次第では追放するまでです』

「……なるほど。魔力察知で俺たちに気付いて出迎えてくれたってことか」

『……迎撃(げいげき)、と言った方が正しいかもしれませんよ? そうならない事を願いますが』



 樹の精霊――ゼフィランサスは尖った耳にかけている丸眼鏡に触れながら、薄く微笑みながら語る。

 土の精霊と違っていきなり襲い掛かってこない辺りはまだ冷静だが、精霊というのはこうも好戦的なのだろうか――? レオンの頭にそんな疑問が浮かぶも、とりあえずここは相手の警戒心を解く事から始めなければ――。そう思い、レオンはフィトに声をかける。



「フィト。()()、見せてやってくれ」

「スーパーペンダントの事だねっ! はいっ! 首に下げてるのがそうだよ!」



 フィトはそう言うと、首にかけていた土の大精霊のペンダント――アーククラウンを手にして見せた。

 しかし――。アーククラウンを見るや否や、ゼフィランサスは眉をひそめて『……どうしてそれが貴方たちの手に?』と、光り輝く薄い羽をあらわにし、桜桃色(さくらももいろ)の魔力のオーラ――――精霊光(せいれいこう)を身に(まと)った。

 それを見た三人は、慌ててゼフィランサスに状況を説明しようとする。時間が惜しく危機迫っている中、こんな所で油を打つわけにはいかない。



「ちょ、ちょっと待て! これはカリストから預かってきたんだっての! あぁーもう、なんでこう精霊ってのは気が短い奴ばっかりなんだよ!」

「てゆーかさぁ。土の精霊たちに言われた通りアーククラウンを出したのに、樹の精霊を激高(げきこう)させるってどゆこと? 話し違うじゃん……」

「あの……ゼフィランサスさん。私たち、危害を加えに来たわけじゃないんです。まずは話を聞いてもらえませんか? それと……ダフネ様は無事ですか?」

『……どういうことです? いきなりそんなに話されても、情報の整理が追い付かないのですが……。わかりました。話を聞きましょう』



 そう言うと、ゼフィランサスは羽と精霊光を消して三人の話に耳を傾けた。




 ***




 土の精霊たちとのやり取り、カリストの状況、樹の祭壇に来た理由――。それらをざっくりと話すと『……やだ、私ったら。早とちりしましたね……すみません』と、すぐにゼフィランサスは頭を下げた。



『……でも、あなたたちも悪いんですよ? 私のお友達の()()()()に乱暴しようとしたんですから』

「ごめんなさい……くまさんが襲ってきたのかと思って……」

『……クーマンはそんな野蛮(やばん)な事はしないので大丈夫ですよ。祭壇の近くになっている木の実を食べに来ただけですから』

「そうなんですね! 後で謝らないと……中に行ったらクーマンに会えるかなぁ?」

『……ええ、会えますよ。中に案内しますので、付いて来て下さい。……あ、ダフネ様は無事ですのでご心配なく。詳しい話しはダフネ様のいる祭壇でしましょう』



 ダフネの無事を聞いて、ひとまず安心する一行。

 それにしても――。ウマーンの次はクーマンかよ……と、心の中でツッコミを入れる犬耳兄弟。相変わらずフィトは安易(あんい)すぎる名前を全く気にせず、すでに馴染んでいるようだ。

 そのネーミングは()()なのか、はたまた()()()()なのか。そんな事を頭に巡らせながら、ダフネを救うために遺跡の門をくぐる――。

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