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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第六章・大樹が護りし古の遺跡
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第一話・ローレル山脈(1)

文字数が大幅ダウンしておりますが、修正などで減っているわけではありません。

小説家になろうにて不具合があったため、何らかの理由で文字数が修正されたようです。

30万文字達成が幻になりましたが(笑)問題なくそのうちまた達成すると思います(笑)

2回も達成を味わえるなんて、ステキィ!!!


……と、冗談はさておき。本編いってみよ!7月もよろしくお願い致します!

 クレーヴェルの村を出て、フィヨルドの青い海原(うなばら)をしばらく進んだ頃――。

 なだらかな丘に広がる果樹園や点在(てんざい)した家々はすっかり見かけなくなり、行きかう釣り舟の姿もなくなっていた。

 人っ子一人いない静かな大自然の中――水面に浮かぶ鳥の群れと、透き通った水の中を泳ぐ魚たちが太陽の光を浴びて生き生きと生息している。

 穏やかな水面をさく水のささやきを聞きながら、一行を乗せた木舟は樹の祭壇へと向かう――。



「あっ! おサカナ!」

「本当だ~! 水が透明だからよく見えるねぇ!」

「それにしても、海の水ってのはすげー綺麗な青色だよなぁ。この水、飲んだらうまそう……」

「おいおい、海水なんだから飲んだらしょっぺーぞ! ここは川に見えても立派な海なんだからな!」



 ヴィンデの言葉を聞いて「そういえば、海の水はしょっぱいんだっけか……」と、レオンはややガッカリした顔を見せた。

 ところが――。よほど海水の味が気になったのか、レオンは水に触れてその手をペロリと舐めた。

 それを見て、好奇心旺盛なリオンはレオンの真似をして「僕もめっちゃ興味!」と、一緒になって塩加減を確かめる。



「「しょっぱ!」」



 そんな兄弟の行動を見て「ガッハッハ! お前ら本当に愉快(ゆかい)だな、おもしれぇ! まるで、初めて海の水のしょっぱさを知った子供みてぇだな! 精霊の番人ってのは、海の味も知らねぇもんなのかぁ?」と、ヴィンデは笑い声を上げた。

 フィトもそんなふたりを見て、楽しそうにくすくすと笑う。

 山々から流れる細い滝と、時折見える虹に大はしゃぎしながら、舟は進んで行く――。




 ***




 フィヨルドの奥に進むにつれ、天候がみるみるうちに崩れてきた。

 ヴィンデの指示で、三人は舟に用意されていた布で小雨をしのぐ――。布は水を弾く特注品らしく、確かに水が染みてくる事はなかった。これなら雨水に濡れる心配もなさそうだ。



「雨水って冷たいんだねぇ~。僕、雨はニガテかも……耳が濡れるの、イヤなんだ……」

「でもリオン、お風呂は大丈夫なんでしょ?」

「お風呂でお湯をかぶるのと、空から降ってきた水で濡れるのじゃ大違いだよぉ~」

「俺もそれ、わかるなぁ。なんつーか、気持ち悪いってゆーかさ……上手く言えないけど、雨はあんまり好きになれそうにねーな……」

「……そっかぁ。ふたりともそういう所は犬っぽい……のかな?」



 そんな話しをしながら、山々に挟まれた長い海面を進んで行くと――。三人の目の前にフィヨルドの行き止まりが現れる――。

 小さな海岸の先には、なだらかな緑の斜面が広がっていた。そこから険しい山々に向かってレールを敷いたように、一本道がずっと奥まで続いている。

 海岸に木舟を止め、三人はやわらかな砂浜の上に降り立つ――。



「……よいしょっと! リオン、手を貸してくれてありがとう!」

「これくらい当然だよ。フィトは大事な女の子だからね」

「えへへ。そんな言われ方すると、なんか照れちゃうよ」



 恥ずかしそうに笑うフィトを見て「ほんとに可愛いなぁ~フィトは!」と、デレっとするリオン。

 仲睦(なかむつ)まじく笑い合う二人を見てレオンは心底イライラしたのか、わざとらしく弟の足を踏みつけて勢いよく砂浜に着地した。



「いったいなぁ!? なにすんだよバカ兄!」

「だらしないしまらない顔してっからだよ。アホ面してんじゃねーっての」

「はぁ~!? 誰がアホ面だよ、誰が! ヤキモチ妬いてんなよな、ヒヨ兄!」



 また取集がつかなくなりそうな犬耳兄弟は放っておき――。フィトは「乗せて来てくれてありがとうございました! あの、ここまでのお代って……」と、ヴィンデに尋ねる。



「あん? 代金なら、もうもらってるからいらねーぞ?」

「へっ?」

「ノエルから先に依頼料を受け取ってんだよ。あー、なんだ……昨日の夜騒ぎになっちまったから、その分のお詫びって言ってたっけな……」

「そうなんですか!?」

()()()()だか()()()()だか、何だかわかんねぇけど……そんな事も言ってたような……? まぁ、そういう事だから払わなくていーぞ!」



 最後の最後までお世話になってしまったなぁ……と、フィトは申し訳ない気持ちになる。

 フィトは少し考えた後、すぐに笑顔を向けて「それじゃあ、ノエルさんにありがとうございましたって伝えておいて下さい!」と、ヴィンデにそう告げた。


 以前のフィトならきっと――そんなの悪いです、お金を返しておいて下さい! などと言っていただろう。

 しかし――それは相手にとって嬉しくない事なのだというのを、フィトは少しずつ理解してきたのだ。

 親切を素直に受け取るという事は、相手も嬉しいのだということ。手を差し伸べて拒否されるのは、とても悲しいものだということ――。

 フィトの中に少しずつ、そういったあたたかい気持ちが刻まれていっているのだろう。ただし、親切にされ慣れていないがゆえに、どうしたらいいのか解らなくなって申し訳ない気持ちばかりが膨らんでしまう方がまだまだ大きいのだが――。

 それでも、フィトの心も少しずつ動き始めているのだ。



「おう、バッチシ伝えとくぜ! ……じゃ、俺も村に戻って漁をおっぱじめるからよ! 迎えの舟が必要だったら、これを使って呼んでくれや!」



 そう言うと、ヴィンデはフィトに小さな銀笛(ぎんぶえ)を手渡した。

 不思議そうに笛を見つめる少女に「これを吹くとよ、鳥が音を聞きつけて俺のもとに飛んでくんだよ。それで迎えのタイミングが分かるって事だ。スゲーだろ!?」と、得意そうにヴィンデは説明する。



「……まぁ、山を越えた先にあるアプリコットスカーナに行くんなら、話は別だけどよ」

「アプリコットスカーナ……?」

「なんだ、知らねぇのか? だだっ広い平原にぽつーんとある村があんだよ。樹の祭壇に行くのは知ってるけどよ、その後は一体どこに向かうんだぁ?」



 言われてみれば、樹の祭壇に行った後の事など考えもしていなかった。これからの事も考えなくちゃだよね……と、物思いにふけりながらフィトは一人頷く。

 とにもかくにも、今は急いで樹の祭壇を目指すのみなのだが――。



「まぁ、ぶらり旅ってのも悪くねぇよな! 三日経っても笛が鳴らなかったら、そういう事だと思う事にするぜ! 熊に食われんなよ!」

「クレーヴェルの人はみんなそう言うんですけど、ローレル山脈ってそんなに熊が出やすいんですか……?」

「いんや、滅多(めった)に出ねぇから心配すんなって! みんな冗談半分で面白おかしく言ってんだよ、ガッハッハ! お嬢ちゃんは素直なんだな~!」



 ヴィンデの言葉を聞いて「よかったぁ……」と、胸をなでおろすフィト。

 そんなフィトの心配をよそに、いまだレオンとリオンは兄弟喧嘩を繰り広げている。まったく、仲がいいんだか悪いんだか――。

 送ってくれたヴィンデに改めてお礼を言うと、三人は手を振ってその姿に背を向けた。

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