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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第五章・美しき村クレーヴェル
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第三話・キャンドルの夜(4)

「ええい黙らんかッ! その証拠とやらを今から見せてやるわぃ!」



 メロ爺はそう言うと、三人が座るテーブルの前に仁王立(におうだ)ちした。

 そして「……ここまで言っても名乗り出んのか」と、三人の事を一瞥(いちべつ)する。



「さぁ、そのフードを取ってみぃ。その頭に何が付いとるのか、しかとこの場にいる人間に見せつけたらどうじゃ!?」



 そう言ってビシィ! と、腹巻から出したリンゴの木枝を三人に突き付けるメロ爺。

 兄弟は同時にため息をつき、言われた通り被っていたフードを取って見せた。


 ふたりについた動物の耳があらわになった瞬間――。

 サングリアの店内に、客たちのどよめきが沸き起こった。

 店の客たちは「嘘だろ!? アレ、本物なのか!?」「でも、モンスターはもっと恐ろしい見た目だって聞いたぞ!?」などと、様々な事を話し出す。


 勝手な事を言われても、兄弟は黙っていた。

 しかし。客たちはついに「あの子は? あの女の子は、獣耳が生えてねーぞ?」「まるっきり、人間の見た目をしたモンスターもいるのか!?」などと、フィトの事を(ささや)き出す。

 すると――。その声を潰すように、レオンは喉の奥から圧のある言葉を発した。



「……この子は人間だ。俺たちと一緒にするんじゃねぇよ」



 レオンの迫力に、騒がしかった店内はたちまち静まり返る。

 しんとなる客たちを見て「……出るぞ」と、レオンはリオンに声をかけて席を立つ。

 リオンは何か言いたそうだったが、不服(ふふく)ながらも兄の言葉に同意を示すように黙って立ち上がる。


 誤解を解こうともせず、黙って去ろうとするふたりの姿を見て、本当にこのままでいいの――? と、フィトはやるせない気持ちになった。

 フィトは何もしないまま、和解する事を諦めたくはなかったのだ。

 それに――人間の勘違いでふたりが追い出されることが、何より納得出来なかった。そんなのは、理不尽極まりない。

 フィトは振り絞るような声で、この場にいる全員に訴えかける。



「どうして……? レオンもリオンも何も悪いことしてないのに、どうして追い出されなきゃいけないの……? そんなの、おかしいよっ!」



 その場にいる全員の視線が、瞬く間に黒髪の少女に集中する。

 思いもしなかった少女の抗議で、呆気(あっけ)に取られているメロ爺。


 しかし――。フィトの言動に一番驚いているのは他でもない、レオンとリオンだろう。

 相手に言葉をぶつけることが出来るのは、自分が傷つくことを覚悟しているから出来る事――。

 フィトは自分が傷つく事よりも、レオンとリオンが()(ぎぬ)を着せられることを黙って見ている事が嫌だったのだ。拒絶される事の悲しみや痛みを、フィトは誰よりも分かっている。


 大事にしたいからこそ、言わない優しさ。

 大事にしたいからこそ、伝える優しさ。


 ふたつの気持ちは、どちらも間違ってなどいない。

 フィトの思いを聞いたレオンの中に、ぶつかっても話し合う事が正しかったのか――? という、迷いが産まれる。

 しかし――。その思いを掻き消すように「あやつらは間違いなくモンスターじゃ! ワシの勘は外れはせん!」と、メロ爺の厳しい言葉が飛んできた。



「……お嬢ちゃん。やはり、お前さんもモンスターなんじゃろう? どうにも、この犬耳男たちとお嬢ちゃんは、お互いをかばい合っているように見える」



 メロ爺がそう発した途端――。

 今まで黙って兄の意向に従っていた、リオンの堪忍袋(かんにんぶくろ)()はブチ切れた。



「……だからさぁ、違うって言ってんだろ? 大体、この子のどこがモンスターなわけ? 同族の見分けもつかないなんて、頭悪すぎもいいとこだよねぇ?」



 メロ爺に向かって、リオンは煮えくり返った怒りをぶちまける。

 リオンの挑発するようなセリフに「たわけがッ! 証拠もないだろうに、信じられるか!」と、メロ爺は怒鳴り返す。



「馬鹿言えよ! 証拠なんかそっちにもないだろ!? これ以上、この子を傷付けるような事を言ってみろ。お前の喉元(のどもと)引きちぎって……」



 リオンが牙を()いて言おうとした言葉を「リオン、やめとけ」と、レオンが制止する。

 怒りが収まらない弟は「でもさぁ……!」と不満をぶつけるも、レオンは黙って首を振った。

 リオンの物騒な発言を聞いて、途端にざわつくサングリアの店内。

 それを聞いたメロ爺は、当然のごとく兄弟を責め立てて追い打ちをかける。



「そら見た事か! 獲物(えもの)を狙う様な殺気と目つき! 恐ろしい(おど)し文句! 貴様らやはりモンスターで間違いないんじゃろうて! いよいよ、頭角(とうかく)を現しおったわぃ!」



 リオンが「このジジイ……!」と舌打ちをした後――。

 静かに怒りを込めながら、レオンは吐き捨てるようなセリフを発した。



「……爺さん、これで満足か? 俺たち見せモンじゃねーからさ。これ以上用がないなら、もう失礼するぜ」



 レオンはそう言うと、弟の肩を叩いてこの場を去ろうとする。

 話すこともせずに分かり合うことを諦めるのは、確かに悔しい。だが、無闇に発言してこれ以上の混乱を招きたくはなかった。

 それに――これ以上、フィトに嫌な思いはさせたくない。

 リオンも仕方なく、ため息をつきながら兄について歩き出す。


 フィトが悲しそうな顔で「ふたりとも、待って……!」と、兄弟を引き留めた時――。

 店を出ようとする兄弟の前に、年老いた者が再び立ちはだかった。

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