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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第五章・美しき村クレーヴェル
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第三話・キャンドルの夜(3)

「……さて。この本をご覧下さい。この四角い枠の書かれた真っ白なページには、種も仕掛けもございません。……そして、この銀貨。何の変哲(へんてつ)もない、ただの銀貨です。……この銀貨を、こうして本にこすると……ほ~ら不思議! 銀貨が本に入っちゃいましたぁ~!」



 リオンがそう言って銀貨の入ったポケットブックを見せると――。

 それを見ていた人々から「すげぇ!」「どうやったんだ、いまの!?」と、どよめきと拍手が巻き起こった。


 ()()()()()()()()()使()()()()()()()――という、いわゆる詐欺(さぎ)のような内容。

 だが、それを知らない人間達は大層驚いて喜んだ様子。かなり大ウケしている。

 リオンはしてやったと兄にドヤ顔を向けると、ヘラヘラと笑って観客にお辞儀(じぎ)をした。

 思わぬ余興(よきょう)を見れて満足した客たちは、また酒を飲んでガヤガヤとし始める。



「リオンにーちゃん、スッゲーな! あれ、どうやってんの!?」

「それは企業秘密だから、教えられないねぇ~」

「なんだよケチ! ちぇーっ。つまんないの!」



 そう言ってむくれるウォールに、ふふんと笑うリオン。

 勝ち誇った顔をする弟を見て、大人気ねーなぁ……と、レオンは苦笑いを浮かべる。

 ひとまずリオンのおかげで一件落着したので、先ほどのくすぐりの恨みは置いといてやる事にしたらしい。


 一方フィトは、未だにマジックが理解できていない様子。

 ポケットブックがどうしてどうなって、あれは魔法だけどマジックで……? と、一人もんもんと考えていた。これでは、夜が更けても種明かしに辿り着かなそうだ。

 こりゃー後で説明してやらねーとな、とレオンは可愛いフィトを見てふっと笑うのであった。




 ***




 食事も終わって一段落した頃。

 そろそろロルブーに戻るか、とレオンが思っていた矢先――。

 騒がしい音を立てて、サングリアの扉が勢いよく開け放たれた。


 開け放たれた入り口から、ずかずかと店の中に入って来た人物。

 それは――見覚えのありすぎる、茶色い腹巻をつけたハゲ頭の爺さんだった。



「メロ爺さん、一体どうしたんです? ずいぶんと騒々(そうぞう)しいから、みんなびっくりしてますよ?」



 ウォールの母親が険しい顔をする老人に駆け寄り、声をかける。

 再びインパクトのある登場をしたメロ爺に、何やら嫌な予感をキャッチした犬耳兄弟。

 このジイさんに関わるとロクな事にならないと、兄弟は思っていたのだ。

 メロ爺はウォールの母親の言葉を無視して、サングリアの店内を突き刺すような視線で見渡す。


 そして、三人が目に入った途端――。

 メロ爺の目はさらに()り上がり、(まゆ)をピクリと動かした。

 兄弟とフィトをじっと見つめる年老いた者。その眼光からは、長い時を生きてきた人間が持つ威厳(いげん)というものを感じさせた。

 ふざけた印象から一転して、厳しい一面を垣間(かいま)見せるメロ爺。

 ふたりの嫌な予感は見事に当たり、そこからメロ爺はとんでもない事を口にした。



「……どうやらこの村に、再びモンスターが来よったようじゃ。誰の事を言っているのかは、自分たちがよぉく分かっておろう?」



 静寂(せいじゃく)を破り、メロ爺が言葉を発すると――。

 店内にいる全ての人間の視線が、一気に三人に注がれた。


 兄弟とフィトは、いきなりモンスター扱いをされた事に言葉を失くす。

 察しの良いレオンとリオンは、さっきの白詰草のやり取りを見られたな……、と瞬時に理解したようだ。

 自分たちの犬耳を見てこいつらはモンスターだと、メロ爺は思い込んだのだろう。

 あれを見ただけでモンスターだと決めつけて騒ぎ立てるなんて……と、弟のリオンは半ば呆れながら思った。


 実際のモンスターの見た目は知らないが、モンスターとは、自分たちのように耳や尻尾が生えただけの人間に近しい見た目だったのだろうか。

 もともと人間だったという事は、その可能性も十分あり得る。

 モンスターと怪物――。どこか似ているような(ふし)はあるが、怪物は怪物だ。間違いなく自分たちはモンスターではない、と兄弟は断固として思う。それは、紛れもない事実だと。


 一方、自分たちがモンスター扱いされている事に悲しくなるフィト。

 兄弟と同様、白詰草の一件をメロ爺に見られてしまった事を少女も悟ったのだろう。

 フィトは先ほど、子供たちの前でふたりの見た目をバラしてしまった事を酷く後悔していた。

 自分があんな事をしなければ、今ごろ皆が穏やかに過ごせていただろう、と。

 こんな騒動まで起こしてしまって、レオンとリオン、それに巻き込んだ人々に申し訳が立たない。


 それに――レオンとリオンの事を地上に招いてしまったのは、自分のせいなのだ。

 怪物のふたりが冥界から地上に飛ばされた原因は、未だにわからない。ただ、自分とふたりが関りを持たなければ、こんな事にはならなかったかもしれない。

 なんとかしなくちゃ……! と、小さな手を握りしめ、フィトはきゅっと唇を強く結んだ。


 そんな時――。

 メロ爺の言葉を聞くも、そんな事はとても信じられないといった客たちが声を上げ始める。



「おいおいメロ爺、何の冗談だよ? モンスターは、ゼウス様と精霊様の力で土に(かえ)ったんだろ?」

「そうだそうだ! そんな恐ろしい事を軽々しく言うんじゃねぇよ!」



 客たちの反論する声を聞いて「ぐぬぬぬぬ……!」と、真っ赤になるメロ爺。

 店がそんな風にざわつく中――。ウォールは何を思っているのか、じっと兄弟の事を見つめていた。

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