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アルティメット エンド  作者: 齋音寺 里
第四章・花咲く渓谷の昔語り
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第二話・炭鉱探検(4)

 広間に足を踏み入れるも、三人は暗い気持ちから抜け出せずにいた。

 どんよりと、個々で感傷(かんしょう)に浸っている。


 それもそうだろう。人の生死についての、重い話を聞かされたのだ。

 広間に着きましたウェーイ! などと、急に気持ちを切り替えられるはずがない。

 ラシーヌは、ここまで三人が感傷的になるとは思っていなかったので、少し申し訳ない気持ちになっていた。

 すると。それを見かねたトロンが、三人に声をかける。



「ったく、辛気(しんき)臭ぇ奴らだな。いつまで暗い気持ち引きずってんだよ?」

「だって……」

「あんな話聞いたら、明るくなんてできねーよ……」

「私も……。いろいろ考えちゃって……」



 トロンの声掛けに、どよどよと言葉を返す三人。

 感受性豊かで、気持ちの優しい三人。

 相手の話に共感し、すぐに感情移入してしまうのだ。

 そんな三人に対して、トロンはがしがしと頭をかいている。



「お前らよ、そんな風に暗い気持ちでいて、故人が喜ぶと思うか? 少なくとも空から見てる、俺らの爺さん婆さんやグラシナの先祖たちは、そんな辛気臭ぇ風には思ってほしくないはずだぜ? 故人も、今を生きる人間も、グラシナの奴らは皆、せっかくここを訪れたなら楽しい気持ちでいてほしいと思ってるんだ。グラシナ生まれ、グラシナ育ちの俺が言うんだ。間違いねぇ。……もちろん、俺だって、そう思うんだからよ……」



 トロンはそう言うと、恥ずかしそうに後ろを向いてしまった。

 三人はその言葉を聞いて、気持ちが救われるのを感じる。

 それと同時に、嬉しい気持ちになった。

 トロンがそんな風に言葉をかけてくれるなんて。

 たまにはいいこと言うじゃない、とラシーヌもトロンを見直した。



「暗くしちゃったアタシが言うのもあれだけど、あんたたち、元気出しなさいよね。なんたって、こんなに美人なグラシナ一の案内人がついてるんだから!」



 そう言うと、ラシーヌはレオンとリオンの背中をバシバシと叩く。

「いてててて!」と、背中を擦る兄弟。

 それを見たフィトがくすくすと笑い出すと、ふたりもつられて笑顔を見せる。

 三人の表情に明るさが戻ると、ラシーヌとトロンも顔を見合わせて微笑んだ。





「さ、ここから昇降機に乗ったら、馬車乗り場までもうすぐだからね」

「昇降機? 馬車乗り場? ナニソレ!? やばばばば! 興味すぎてやばいよ~!」

「リオン、お前興奮しすぎ! お前の頭がやばばばばーだろ!」



 元気を取り戻したリオンは、さっそく未知なるものに興奮したようだ。

 そんな弟のテンションに、犬耳兄もつられて笑う。

 冷静なフリをしていても、レオンの尻尾はブンブン動いている。

 それにフィトだけが気付いて、レオンってば素直じゃないんだから、と微笑ましく思うのであった。




 ラシーヌは昇降機の前にいる人物に声をかける。


「アルベロ! こんにちは!」

「やぁ、ラシーヌじゃないか! ……と、君たちは昨日の!」

「あれっ!? あの時の、お兄さん!?」



 互いに指をさし合う面々。

 アルベロと呼ばれる炭鉱夫姿の男性は、昨日グラシナに来た時、一番最初に声をかけてくれた人だった。



「やあやあ! 偶然だなぁ~!」

「昨日はありがとうございました! 私たちも、びっくりです! まさか、また会えるなんて!」

「いやいや、礼には及ばないよ! でも僕はなんとなく、君たちとはこうしてまた会える気がしていたんだ! 嬉しいよ!」

「なになに? あんたたち、知り合いだったの?」



 にこにこと話すフィトとアルベロを見て、ラシーヌとトロンは目を丸くする。

 そんな二人に、昨日の経緯をアルベロが話す。



「……という訳なんだ! そういえば君たち、まだ耳と尻尾を付けてたんだね!? なんて愉快なボーイたちなんだろう! ブラボー!」



 楽しそうに笑うアルベロを見て、この人こんなキャラだったんだ、と目が点になる三人。

 トロンとラシーヌは、そんなアルベロのテンションはいつもの事のようで、特に気にする様子はない。

 アルベロには屁理屈(へりくつ)をこねくり回して、耳と尻尾の事を話さなくてもよさそうだ。

 そこは大いに助かるのだが。



「これが昇降機よ。これに乗って上まで昇るってわけ」

「うわー! うわー! これ、動くんだ!? すっごいなぁぁ~! かっちょいい~!」



 初めて見る昇降機に、リオンは大興奮だった。

 忍者のような動きで、昇降機をいろんな角度から観察している。


 坑道に造られた堅坑昇降機は、平地と地下へ昇り降りするエレベーター、といった仕組みのようだ。

 昇降機には、ケージと呼ばれるエレベーター状の箱がついている。

 一行の目の前にあるケージは、最大で十人ほどが乗れる大きさだ。

 そんな中。フィトは昇降機で上に昇ることに疑問を抱いていた。



「あれ? 私たち、いまから降りるんじゃないの?」

「あんたたち、どこに行く気なのよ? 地下に行ったら鉱山ルートに着いちゃうわよ?」

「えっ!? どういうこと!?」



 フィトはなぜ昇降機で上に登るのか、理解出来ないようだ。

 ラシーヌにそう言われても、ピンとこない様子。



「君たち、グラシナに来た時に長~い階段を降りてここに来ただろう? そうすると、ここはもう地下なんだよ。グラシナは大地の渓谷に造られた、地下の街だからね。だから、いまから上に戻るために昇るってわけだ!」

「そっかぁ! なるほどね!」



 フィトはアルベロの分かりやすい説明に、ぽん! と手を打った。

 地下に来ることなど、そうあるものではないし、渓谷の上空には青空も見えるのだ。

 平地から長い階段を降りたとはいえ、ここが地下という認識は、この三人に初めからなかったのだろう。

 自分が置かれてる現在地が分からなくなるのも、無理はない。



「さっすが炭鉱のスペシャリスト! アルベロ、素晴らしい説明をありがと!」

「いやいや! そんな大したことは言ってないさ! 炭鉱に携わっているんだから、これくらいは話せて当然だよ!」



 ラシーヌの言葉に、謙遜(けんそん)しつつも嬉しそうな顔をするアルベロ。

 気のせいか、少しはにかんでいるようにも見て取れる。


 厚化粧のせいで年齢は分からないが、ラシーヌはかなりの美人さんだ。

 スタイルも良く、親しみやすい気さくさに加え、面倒見の良い姉御キャラ。

 一緒に街を歩いていても、いろんな所から声がかかる。

 ラシーヌに対して淡い気持ちを抱いている男性も少なくはないだろう。



「さっそくなんだけど、グラシナの正門まで行きたいから、昇降機で平地までお願いできる?」

「お安い御用! そういえば、約束通り君たちを案内することが出来たね! 短い間かもしれないけど、楽しくやろうじゃないか!」



 そう言って、にっこりとアルベロは笑顔を浮かべる。

「さ、気を付けて乗っておくれ」というアルベロの案内で、六人は昇降機に乗り込む。

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